表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/60

第九話 布団の中

 クローゼットから普段着用のローブを取り出し、急いで着替える。

 身体についた血は、タオルに聖水を付けて落とす。

 脱いだものはがさつに廊下へ放っておいた。


「アンヴィー、着替えたよ」

 布団にのそのそと入り込むと、いきなり横からギュッと抱きしめてきた。


「ディマあったかーい!」

「は!? なっ……えぇ……」


 いざ一緒に寝ると罪悪感が生まれる。

 彼女は僕のことをどう思っているのだろうか。 

 助けてくれた救世主……とか? どうやら彼女は「死」を理解して無さそうだし。

 もう、父親には会えないんだけどな……。



「ねぇねぇ、ディマのパパってどんな人ー?」

「知らないな」

「ママはー?」

「……さぁ、知らないね」


 言いたくないわけではなく、本当に知らないのだ。見たこともない。

 アルジェントのやつは僕以外皆知っているっぽいが、一切教えてくれない。ただ、父親がアルジェントで、母親がオーロの人間であることしか分からない。


「じゃあ、ディマってどうやって生まれたの?」

「さぁ、どうやって生まれたんだろうな」

「えー! 分からないの?」

「親すら分からないんだからな……。昔は湖の伝説(・・・・)になぞらえられていたけど」

「でんせつ? でんせつって?」

「話すと長いからね……今度絵本を読んであげよう」


「えーよんでよんでー」っと文句を言いながら僕の上にのしかかってくる。

 可愛い……あったけぇ……助けて良かったなぁ。お互いに最悪の時まで刻一刻と進めているというのに、こんなにも呑気とは。


「まぁまぁ、それはお楽しみにとっておいて、今度は僕から質問しよう」

「なぁに?」

「君のパパは……あんな人だって分かったけど、ママはどんな人かな?」


 この子の母親が分かれば、どの派閥・・か判別できる。……何となく察しはついているが。

 オーロはなかなか複雑な環境であり、大きく分けて二つの派閥がある。

 一つは、有害な「オスクリタ派」。もう一つは害悪な「アルナシオン派」。もちろん、これらに属さないやつもいる。

 僕らにとってはどっちもどっちだが、百歩譲って穏便なオスクリタ派の方が……まだいい。アルナシオン派は何をしでかすか分からないから怖いのなんの。いわゆる、過激派ってやつだ。


「ママ? ママは……」

「パパとどっちが優しい?」

「……パパの方がいつもやさしいよ」


 少しまごまごとどもりながらそう言った。

「そっか……。ママは優しくしてくれないの?」

「……うん、怒ってばっか。怒っているとき以外見たことない」

「あらら、それは酷いね」

「なにもまほうが使えないからって、いつもたたかれるの。いらない子だって、いつもいわれるの……」


  次第に声が弱々しくなり、ぐずぐずと泣き出してしまう。

「あっ……ごめんね。悪気はなかったんだ」

 背筋を撫でながら彼女をなだめてみる。

 だが余計に泣き出してしまい、手が付けられなくなってしまった。

 なんか、僕が虐待しているみたいに思われたら嫌だな。皆寝てるから大丈夫だと思うけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ