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第十五話 対面

 一秒一秒が恐ろしいほど長く感じる。

 あぁ、胃が痛い。尋問された上に拷問も受けるなんてもう嫌だよ。

 アンヴィも何かを察したのか僕のローブの中に潜り込んできた。


「……そんなに怖い人じゃないから大丈夫だよ。アンヴィには優しくしてくれるさ」

「ディマにはやさしくしてくれないの?」

「まぁ……そこまで仲良くないから」

「じゃあ、その人とともだち(・・・・)にならないとね!」

 

 ……友達、か。そんな存在がいればよかったのに。

 統率者ドゥクトルと友達になる気は全くないけどな。冗談でもない。

 そういった仲になるくらいなら死んだ方がマシだ。いや、僕より統率者が死ぬべきだろう。あんな老いぼれに生きる意味などあるかどうかも怪しい。

 統率者のことを散々に言っているがこれが事実だ。少なくとも、僕とメルクリオにとっては。



 その思考を止めるかのようにトントントン、とドアをノックする音が響く。

 渋々開けると、先ほどの二人が緊張した様子で立っていた。

 アンヴィは二人をまじまじと見ている。


「……初めまして、お嬢さん」

 先に口を開いたのは統率者であった。

 少し屈んでアンヴィと同じ目線になって微笑んで見せる。

「はじめまして、おじさん! この緑の髪の人は?」

「あっ、あぁ初めまして。僕はジャーダっていうんだ」

 少女の惹きつける目に狼狽しながらも、軽く会釈しその場を切り抜ける。急いで頬を隠していたが、ほんのりと赤らめているのはすぐに分かった。

 アンヴィの目には不思議な力があるのは出逢った時から分かっていたけれど、この力は本当に侮れない。

 言うなれば「魔性の眼」だ。その目に見つめられたら思考が蒸発する。可愛すぎて……。


「さて、私も紹介しないとな。私はアルジェントの統率者、ロッチアと申す。気軽に呼びたまえ」

 しわがれた右手を目の前に差し出される。

 アンヴィは白磁器のように滑らかで美しい両手で、その手を包み込むように握手を交わした。

 その後、アンヴィはなぜか不思議そうな顔で僕の方を見る。


「どうして統率者様が二人いるの? それとも、老けちゃったの?」


 思わず吹き出しそうになったが、彼女からしてみればその質問が浮かんでくるのは当然のことだろう。

「えー、オスクリタが老けたわけではないからね。君にとっての統率者はオスクリタだと思うけど、僕たちにとってはロッチア……様なんだよ」

「ふーん、統率者様っていっぱいいるんだね!」

「……そうなるかな」


 ふむふむ、とアンヴィは納得したようだ。

 そのまま振り返り、統率者に向かって自己紹介し始めた。

「わたし、アンヴィ! いま4才なの。オーロの血族なんだよー」

 彼女は左手の甲を自慢気に見せつける。

「Nemo contra Deum nisi Deus ipse」と二重円の間に書き記されており、内側の円の中には大きな五芒星があり、それぞれの先端に対応する属性が描かれている。

「神のほかに彼に逆らえるものはなし」……まさにオーロにふさわしい文言である。


 統率者は敵対する者に対しても嫌な顔一つせずに話を続ける。

「ほう、オーロなのかい。楽しい?」

「楽しいよ! けど……」

 次の言葉が出ないのか、自分の紋章を見つめながら俯いた様子でまごまごとしている。


「……アンヴィ、何言っても大丈夫だよ。誰も怒ったりしないからね」

 さりげなく髪の毛を撫でてあげると、緊張が和らいだのか口を開き始めた。



「わたしね、まほうが使えないの。いくられんしゅうしても、ぜんぜんできないからパパとママにいつもおこられるの……」

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