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底辺と呼ばれた魔術師が、最強のロリっ娘魔術師を育てることになりました。  作者: 南郷 兼史


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第十四話 戸惑い

更新遅くて申し訳ない……。

 扉が閉まる音と共に広がる静寂。

 そして、皆一斉に僕の方を見る。


「大変だ……!」


 ジャーダが真っ先に統率者ドゥクトルの後を追って風の速さで出て行った。

 コイツ……ほんと都合が悪くなったらすぐ逃げ出すよな。


「ディマ! 何ぼーっとしてやがる……早く統率者様を追えッ!」


 グランディがこう怒ってしまうのも納得できる。

 統率者に歩かせるなど、あってはならないことだからだ。



 急いで食堂から出ると、少し離れたところに彼らがいるのが見えた。

 ジャーダがよく分からない取り繕い方をしているが、その焦りはこちらにも伝わってくる。

 

「統率者様、彼は人を選ぶ難儀な方です。今行けば……」

「何、大丈夫だろう。彼女の前でそんな悪態をつくとは思えない」


 メルクリオは僕以外のアルジェントのやつとは滅多に話さない。たとえ統率者だとしても。

 理由は聞くにも聞けない。まぁ、聞いたところではぐらかされるだけだ。


「……後ろにいるのだろうディマ。先に彼女の気持ちを確かめてきておくれ。私のような老人がいきなり現れても怖がってしまうからな」

「っ!? 統率者様をそのように思う者はこの天地に存在いたしません」

「ほっほっほ、ディマがそんなことを言うとは」


 統率者が後ろを振り向き、こちらを凝視する。

「そんな嘘をついても無駄だ」と言いたいのだろう。

 実際、僕はそこまで統率者を尊敬していない。おそらくこの血族で誰よりも、だ。

 何せ、僕の生い立ちを教えてくれないからな。何故混血であるか、親は誰なのか。そして何よりも、僕を殺さなかった理由を。

 


 統率者に目で「先に行け」と指図される。

 特にジャーダは何もしてくれず、にゃははーと笑っているだけだ。状況が状況だから仕方ないと思うが、少しは何か言ってほしかったな……。


「……承知致しました」


 目を逸らし、足早に彼らを抜いてメルクリオの部屋へと向かう。

 ……あぁ、最悪だ。メルクリオが余計に機嫌を悪くするのは目に見えている。

 


 ノックもせずに部屋へと入り込むと、アンヴィはメルクリオと一緒におままごとのようなことをしていた。

 アンヴィは楽しそうにしているが、メルクリオは若干引き気味に相手をしている。


「あーっ! ディマだ―!」


 僕を見ると真っ先に太ももの辺りに抱きついてきた。

 ……色々とアウトな位置だが、本人は気にしてなさそうだ。


「ねぇねぇ、ごはんはー?」

「あー、それがね……うん。もうちょっと待っててくれるかな」

「なんでなんでー?」

「えーっと……その……偉い人がアンヴィに会いたいって言ってるから……かな?」


 間違ってはいない。だが、理由として不十分すぎる回答になってしまった。

 もちろん、メルクリオがその言葉に反応する。


「統率者様を呼んだのか!?」

「よ、呼んだわけじゃなくて……本意的に」


 メルクリオは大きくため息をつき天を仰ぐ。

 全く、こっちも同じ気持ちだよ。


「……ほんと、敵だか味方だか分からないやつだな。お前が対処しろよ」

「そのつもりでいたけどね」

 メルクリオは呆れ顔で煙管キセルとシャグを取ると、ベランダへ逃げるように出て行った。


 状況が呑み込めずきょとんとしているアンヴィを持ち上げる。

「いいかいアンヴィ。偉い人とお話したら一緒にご飯食べようか」

「今たべたいの」

「じゃあ、量多くしてあげるから……ね? ちょっとだけ我慢してくれる?」


 少し不機嫌そうだが、小さくうなずいてくれた。

 あとは来るのを待つのみ。何とかなればいいが……。

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