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リゾバイ  作者: 旭珠光哲
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クールと情熱のあいだに

夏に行きたいドライブ・ツーリングコースと云えば?

ニッコウキスゲと富士山の両方が見れる高原と云えば?

動力を使わない飛行機、グライダーの聖地と云えば?

エアコンの商品名にもなっている所と云えば?


そこは、長野県諏訪市の北部に位置する百名山のひとつにも数えられる「霧ヶ峰高原」

と言っても、ピンとこない方が多いと思いますが、長野県7市町村をつなぐビーナスラインは八ヶ岳山麓、蓼科高原、白樺湖、車山高原、霧ヶ峰高原、八島湿原、美ヶ原高原の76kmを平均標高1400m、最高地点の美ヶ原高原は1920mと暑い夏の避暑を楽しむにはうってつけの高原道路の観光地である。その中間地点に位置する霧ヶ峰高原に、有料道路時代に料金所が設置されていた事から交差点名として残っている「霧ヶ峰インター」にドライブイン的な観光施設が存在している。

そこの広い駐車場から富士山、八ヶ岳、南アルプス連峰が一望でき、梅雨の時季にはレンゲツツジ、7月半ば過ぎからニッコウキスゲが眺められる。

地味だが、風光明媚でガイドブックにも登場する有名店に蘭世は勤務して4シーズン目になっている。

店舗の裏手に従業員寮が存在し、出勤に必要な所要時間は10秒。雨が降っていたら、傘をさすかダッシュで突破するか時々悩む…程度の距離。夜、時折やってくる鹿の鳴き声がうるさいが空気と水がキレイで、寮の部屋で扇風機さえ使わない涼しさ。勤務先も居心地良いので、春から秋ここで勤務して、冬季閉店になるとスキー場に行って春にまた帰ってくるを繰り返し、4シーズン目に入っていた。


夏が過ぎ、9月入ると冬のオファーがスキー場の勤務先から今年も届く。

「蘭ちゃん、冬は今年も白馬行くの?」

蘭世と一緒にドライブインのお土産売店で働く一実が、内職作業のプチプチのシートを必要サイズに切り分けながら、いつも通り世間話を展開していく。

「一実さんは、車山ですよね。」

「冬は逃げようがないからね~。今さら、諏訪の街に降りて独り暮らしするのも…めんどくさいよね。」

一実の実家は車で15分程度の車山高原の麓に広がるペンションを経営している。夏場は、週末程度が忙しい位だが、冬はスキー場目的の常連客が増えるので、ヒマが無くなるのだ。

「他のスキー場も探してはいるんですけどね…、白馬ほど生活しやすい所は見つからなくて。結局、同じ所に行くんですよね。」

「私は、同じ所でいいわ。ちっちゃい時から滑ってて、解ってるし。」

蘭世の実家は神奈川県の中央部のベッドタウンにある。高校を卒業してから一時何もしていない時期があったが、ちょっと都会を逃げ出すように観光地に行き着いた。最初に行ったのは、静岡県の伊豆高原にあるドライブインで干物とお土産の売店だった。ほぼ夏休みの間だけの2ヶ月に満たない期間だったが、楽しい日々になっていた事には間違いない。

その後、新潟県の越後湯沢、長野県の軽井沢、長野県志賀高原を経て、ここ霧ヶ峰にたどり着いている。

「蘭ちゃん、これ言うの早いけど…、来年も居てね。」

「どーですかねぇ。」

「また帰って来るくせに。」

二人とも、ニヤニヤしながら応えていた。


霧ヶ峰はすでに秋の風に換わっている。10月の下旬には、初雪が降るだろうが冬はまだまだ先だ…。

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