月の下の彼女
全ての人に感謝の意。
彼女は決まって月のよく見える夜に川辺に行く。
日常生活でのストレス・・・。自分自身の否定・・・。そんな感情を彼女は消し去るために。
しかし、そんな毎日を過ごしているうちに彼女はふと気がつく。こんなことをやっていても、ただ逃げているだけなのではないか?もっと何か別な大事なことがあるのではないか?月の下で癒される生活をしていた彼女は、疑念を抱き始めていた。
その日もまた、彼女は夜の散歩を楽しんでいた。まだ、何か自分の生きがいを見出すことが出来なかったからだ。他にしたいことがあればしたいんだけどな・・・山へでも行こうか?それとも海?・・・ううん、だめ。どっちも私には遠すぎる・・・。
その日、月の無い夜に出かけた彼女は自分の人生のことを考えていた・・・。
考えに夢中になっていたせいか、彼女はすぐ背後に迫っていた男に気がつかなかった。男は彼女を襲い金品を奪おうと向かってきた。
彼女は肩を掴まれてから、ようやく気がついた。大声を出そうとしたが、口は男に手で抑えられ声を出せない。
自分の人生はここで終わってしまうのか?彼女は思う。色々と悩んで、自分なりに歩んできたのにこんなことで終わってしまうなんて・・・。
その時、彼女の足元に溜まっていた水たまりが彼女の目に月を映し出した。彼女は思った。こんなことではダメだ!私にはまだやりたいこと、やらなければならないことがたくさんあるんだ!
彼女は必死に抵抗した。手を噛み、蹴りを入れ懸命に抵抗した。すると、男は彼女の抵抗に焦ったのかその場から逃げていってしまった。彼女は、まだ事態がうまく飲み込めずしばらくその場に立ち尽くしていた。
数分が過ぎた頃、彼女は空を見上げる。
そこには、いつもの綺麗な月は無かった。
しかし、あの時の水たまりに映っていた月は彼女が今まで見てきた中で一番綺麗な月だった。
それには、意味などなかったのかもしれない。しかし、彼女の心の中にはいつまでもあの月が輝いている。
彼女は明日も月の下を歩き続ける。自分の心に芽生えた自分だけの特別な感情を忘れないために。
綺麗な作品を書きたくて書きました。短めに書いたので読みやすいと思っていただければ幸いです。読んでくれた方は、ありがとうございました。