六
翌日、俺はギルド会館で仕事を探して二つほど引き受けた。港から工房へ鉄鉱石を運ぶ仕事と、老人が住んでいる家へ向かいまき割りをする仕事だ。報酬は二つ合わせて銀貨8枚だ。仕事も9時から始めて4時過ぎに終わった。まあ初日としては稼いだほうだろう。
ギルド会館のカウンターで報告を終え報酬を受け取ると偶然ノゾミに会った。
「やあ。」
「おや、お久しぶりですね。あれミムは?」
「ミムは宿で休んでいるよ。マコトは?」
「自分、ギルドに登録しまして・・・それで今日の仕事の報告を終えたところなんですよ。」
「へー。ねえ。この後暇?
「え・・・ええ。まああいてますよ。」
「ならさ、ご飯食べない?奢るからさ!」
「いいですよ。」
「本当?じゃ、ちょっと待っていて。あたしも報告済ますからさ。」
そう言ってカウンターへと彼女は向かうと、何やら騒がしい。
「おいお前!」
「はい?」
冒険者ですって感じの人に声をかけられた。
「お前あのクローズの知り合いか?」
「クローズ?」
「知らないのか!クローズといえばこの界隈では有名なチームなんだぞ?二人とも最年少、最短でAランクに登りつめたっていうんだぞ!」
「いえ・・・私最近になってギルドメンバーになったものですから・・・」
そうか。あの二人はそんなに有名なのか。全然知らんかった。
「いえ・・・知り合いというか・・・まあはい・・・そうですが・・・」
「まじか!なあ一体どういう・・・」
いやお兄さん。そんな興奮しながら私の肩を掴まないでください。困るってか怖い。マジで怖い。
そう困っていると
「お待たせ。どうした?」
ノゾミが戻ってきた。
「いえ・・・あの・・・」
「ノゾミさん!俺あなたのファンなんです!握手してください!」
「ごめん。そういうのお断りしてるんで。マコト。行くよ。」
「あ、はい。」
俺は「なんだアイツ」とか「彼氏!?そんな」とか言う人々の間を抜けるノゾミに引っ張られながらギルド会館を出た。
しばらく歩くと俺とノゾミは街の中心街から離れた宿に来た。
ノゾミが宿のフロントの人に食事は部屋に持ってきてくれ、それから一人前追加でお酒も適当に持ってきてくれといった。
「あの?ノゾミ?食事は・・・?」
「ごめんね。うちら都市部の食堂だと騒ぎになっちゃうからさ。」
そういって俺を部屋へと引っ張る。
部屋に入る。さすがAランク。俺が泊まっている所より全然豪華だ。台所もついている。
「今お茶も入れるね。そこに座って。」
ノゾミは台所でヤカンに水を入れお湯を沸かしているようだ。
「ああ。あれ?ミムは?」
「ミムは隣の部屋で寝ているよ。それよりさ・・・教えてくれる?」
「一昨日のあの白い魔道具について。」
うーむ。どう説明しようか。悩む
一分程考えた俺は正直に話した。
話す前にミムも来た。
「ふーん。やっぱり異世界人か・・・」
「信じてくれるのか?」
「ええ。だってそうじゃないと説明つかないもの。」
よかった。納得してくれるようだった。
「それでこれからどうするの?ギルドメンバーになったということは冒険者にでもなるの?」
「いや、ギルドメンバーになったのは単に身分証が欲しかったからだ。俺は戦うのは出来ないし正直苦手だ。だから能力をつかって運送屋でもやろうかなと思っている。」
「運送屋ね・・・・ねえ、護衛ってどうするの?」
そうか。ここは異世界。一歩街を出たら魔物や盗賊だらけだ。だから護衛が必要か。
「ん?まーギルドに依頼出せばいいかなと。」
無難そうな答えをいう。
「なるほどね。ねぇ私達をさ。組まない?」
「「え?」」
いやなんでミムも驚いてるんだよ。
「いやね。助けてもらったお礼もまだしていないし。」
お構いなしで話すノゾミ。
「いや、それはもう済んだことだし。」
なんだ?おい。
「あんたがよくてもね・・・彼女がねぇ・・・」
ミムさんなんで貴女は顔を赤らめているんですか?熱ですか?
「という訳でさ。頼むよ。アンタ地理もこの世界の情報も明るくないだろ。なあ?」
うーむ。たしかにこの世界は元の世界より危険そうだ。現地ガイドみたいのがいないと不安だし。それにこの二人はかなり腕っ節いいようだし。悪い人ではなさそうだ。
「いいけど、給金とかの保証はできんぞ。いいのか?」
「ああ、構わないさ。貯金もかなりあるし。」
「ミムはいいのか?」
ミムはさっきから顔を下を向いたままだ。
「はい・・・よろしくお願いします・・・」
「なら決まりだね。よろしく。」
俺とノゾミは握手する。こうし俺、ミム、ノゾミのチームができた。
◆◆◆◆◆◆
「じゃぁまた明日。食事ごたそうさん。お休み。」
「ええお休み。」
「お休みなさい。」
マコトと食事を終え彼は部屋を出た。
「よかったね。彼に一歩近づけたじゃないの!」
「・・・・うん。」
「あれ~どうしたのか?嬉しいんじゃないの?」
「・・・うん。」
「は~。じゃあたし、アプローチしようかな」
「うん・・・あ!それはだめ!」
「ははは。ジョークだよ。しかしねー。ミムに好きな奴ができるとはねー。」
ミムは彼が好きになったらしい。所謂、一目惚れってやつらしい。
これはどうやるやら・・・。あんなに人見知りが激しいミムがねぇ・・・。人間わからないものだね。まぁいっちょ恋のキューピット、引き受けますか。ふふふ・・・・
◆◆◆◆◆◆◆
翌日からまた仕事・・・ではなく今日は俺の装備の買い出し、今後について話し合い、ノゾミに魔法をミムに剣とかを教えてもらうことになった。
装備は街の武器屋で適当に見繕ってもらった。近火20枚ほどが吹っ飛んだが命を守るものとしては高くない買いものだろう。
今後の活動については・・・
1.クローズは解散、俺とミムとノゾミの新チームを発足。
2.仕事はギルドに募集を出して様子をみる。
という感じで俺は最低限の依頼ノルマをこなしつつ、ミムとノゾミから必要最低限の武術を習う。まあ護身術を習う感じだ。
と言う感じになった。
さて現在俺は午前中に二つ仕事を終えて街の外にある平原に来ている。街中は魔法の使用が制限されているが外は無制限だ。
さていよいよ異世界モノの定番、魔法や剣の訓練だ。正直楽しみだ。
数時間後
俺は大の字になりながら空を見上げている。
「・・・空が青い・・・」
俺はばてたのだ。人生で初めて魔法を使った。例えば火の玉を放出するとか、風を操って的を割るとかは上手くできることは出来たのだ。問題はエネルギー効率の悪さ。神様のおかげでこの世界の人より断然多いからいいんじゃないかなと思うかもしれないが、実際には魔力を急激に消費して行っているのでとても疲れやすい。ノゾミには
「あんだけ魔力使って息があがる程度だから、アンタチートじみているよ。」
と言われてしまった。そっか、こっちの人は俺くらい魔力がある事自体チートなのね。
少し休憩して今度は剣術の訓練をした。
実は俺は高校時代、剣道部だった。とはいっても県大会をいつも予選敗退する学校の部活だった。それでも一生懸命やっていた。だから剣術については最初自信があった。
ミムと模擬選をした結果、見事に惨敗。
「まぁ・・・マコトは他にいいところあるし・・・何かあったら私が絶対守るから!」
と言われた。
いや女の子に守られるって・・・なんかな・・・・。
そんなかんやで初日は終了した。
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