――彼女はただただ。(前)
二話目を更新しました!!
興味を持って読んでくれている人もたくさんいるので、嬉しいです!
それではお楽しみください!
「それじゃ、後はお願いしますね」
生きてる間に言っておきたい言葉、第八位にランクインしている言葉を吐いて、カッコよく保健室を出ようとした矢先、
「行かないで」
生きてる間に言われてみたい言葉、第二十七位にランクインしている言葉で止められた。
「え?」
ちなみに、言ってみたい言葉第一位は、「ここは俺に任せて、先に行け」
言われてみたい言葉第一位は、「好きです」だ。
「ごめんね、先生これからちょっと、学校を出なくちゃ悪くて、絹織さんの事を見ていられないのよ」
「え、じゃあどうすれば」
「氷崎君が先生の代わりに――」
「嫌です」
「そこを何とか・・・ね?」
年配女性のえろいお姉さんチックな頼み方ほど、見せられて不快な気持ちになることはあるのだろうか。でも、確かに絹織 文音の事も少し不安が残っている気持ちもある。
「わかりました・・・ここに残ります」
「わぁ、ありがとう―――担任の先生にはちゃんと伝えとくから絹織さんの看病よろしくね!」
はい、と俺が返事をする前に、準備をあらかじめしてたのか、素早い動きで身支度を済ませ、先生は保健室を出ていった。
先生のいない保健室に一人取り残された、いや、二人取り残された保健室は異様に静かになった。
一度やると決めてことに対しては全力で取り組む。これが俺のモットー、だから絹織 文音の看病を全力でやる。と、決めたものの看病といっても何をしたら良いのか分からない。擦り傷程度の手当てなら俺にも出来るのだが、貧血で倒れた相手にどの様な手当てをしたら良いのか、―――濡れタオルをおでこに乗せるのは違う、アロマを焚くのも当然違う。人工呼吸・・・は絶対に違うと思う。悩みに悩んだ末、絹織 文音が寝ているベッドの横に椅子を置き、腰掛けることにした。
目の前では、いつも鳥のようにピーピーうるさい絹織 文音が穏やかな表情でいた。まるで、眠り姫、一生開くことのない瞼、人形のようだった。
「ほんと、喋らなかったら可愛いんだな」
ついつい、声を零してしまうほど、その光景は美しかった。
高校入学と同時に知り合った俺ら、中学の頃はその存在しか知らなかった。どんな人なんだろうか。絹織 文音に対してその頃はこれくらいの思いしかなかった。
だが、初めて出会ったのにも関わらず、絹織 文音は俺に対して長年の付き合いかのように、一度会っているかのように、
「さえない顔ね」
これが第一声、初めましてだった。
その頃から、親同士仲が悪いのは知っていた。が、ここまでのものだとは思っていなかった。
第一印象、最悪な女――――――絹織 文音。そこから、一年間一緒に登校し(なぜか重なる)、一年間茶化され、一年間お互いにいがみ合った。一夜と朱音はリア充名家、俺と絹織 文音は犬猿名家、定着したこの呼び名は今となっては何の抵抗もない。逆に清々しかった。
その呼び名は一夜と朱音の関係が繋がっているように、俺と絹織 文音との繋がりでもあったからだ。
「ほんとに、寝てんのか」
優しく水を撫でるように触れた、絹織 文音の頬は何とも言えない感触だった。頬に触れただけで、絹織 文音のすべてに触れたような気がして、怖くなって俺は手を戻した。
――――確かに寝ているのは確認できた。
俺は椅子に深く腰掛け、胸ポケットにしまっていたスマホを取り出し、時間を潰した。
その間に、スマホのカメラ機能で目の前の眠り姫を撮ったことは誰にも言えない秘密となった。
一応、言わせてほしい。変な目的で使うわけではない――――ただただ、美しかったから。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
順調にこちらは更新していくことが出来るのですが、
『読まれる日常と、読む非日常』の方が、執筆間に合っておりません・・・
気長に待っていただけると幸いです! すいません・・
でも、こちらは変わらず更新していくことが出来るので
完結までお付き合いいただけたらと思っております!
また、感想・評価・ブクマの登録の程もよろしくお願いします!