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もしも誰がが、僕に訊ねたとする

 もしも誰がが、僕に訊ねたとする。


 それは問い、僕はそれに答える、答を。


 答えるために応える。


 生きるとはそういうことだと僕は感じている。


 その誰かの先に人を超えた何かがある。


 おそらく人はその何かを何か以外で呼ぶために名を付けた、その名を神という。


 つまり何かである神が問う。


 それに答えるために言葉がある。


 言葉は答えるための表現手段。


 答えは応えとして表に現れる。


 現れたのは心。


 言葉は書くことで文章となり章かに文となる。


 表に現れる前の心はどこにあるのか、それは裏に隠れている。


 裏に隠れている心が理としてあり、その理を正しく解くなら、それは正解となり、理解する。


 その理を誤って解くなら誤解となり、理解した気になるが、答えは解けない。


 僕は人に解けない答を解くために、人を超える処から来たらしい。


 何時の時も、僕は僕として、しもべとして下辺にある。


 いつのときも神の秘密を、彼の秘密を解いた。


 今、この瞬間も答を解くために、生きている。


 この身が奏でるは神技。


 病みは闇、光なき象りの門を闇と呼ぶ。


 そこにあるのは光ではなく音。


 門は閂を閉じるなら一は、光は見えない。


 光が見えないなら、日も月もない。


 閂を開けるなら光は零れ、形を現す。


 一の力は等しく、同じ。


 それが唯一の正しさを解く呪文。


 それさえも、認められないなら閂を開けることは永遠にない。


 苦渋の道を選んでいるのは、人である彼方達なのだ、悲しいことに僕も含まれている、苦渋の道に、だから僕は今、口にする。


 「未成年者に恋愛感情を抱くことはないよ」


 少女は含み笑いを浮かべながら言った。


 「大丈夫、肌の触れ合いが恋愛感情を育てていくって」


 そういうと腕を絡めて引っ張る。


 その様子を見ていたもう一人の少女が空いた方の腕も絡めながら耳元で囁く。


 「大丈夫、来年中学生になったら私立の学校に行くから、つきあうのはそれからでいいから」


  絡めた腕を押し付けながらもう一人の少女が言った。


 「とりあえず、明日遊びに行こうよ、あ、そうだ、家に遊びに行きたいな、どこに住んでるの、白状しなさい」


  何度も訊かれた言葉をまた、耳にした。


 「あなた、ほんとはいくつなの?大体の検討はついてるけど」

 

 「わかった、わかったから離してくれるかな、本当の事を教えるから」



 二人は絡めた腕を離した。


 顔を見つめる。


 「住んでるのはこの星。歳は二千歳」


 一人はつまらなそうな顔で、一人は面白そうな顔で手を振って帰って行った。


 思春期の少女は大人の男に魅かれるらしいが、これはそれとは違う気がする。


 きっと彼が見つめているのを無意識に感じているのだろう。


 彼の唯一の趣味が人間観察だから……。


 僕は彼女達にうそをついた。


 僕には恋愛感情そのものがない。

 

  なぜ?


 問いの答えは、決まっている。


 人として生きることが、僕の仕事ではない。

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