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青い空、白い雲、黒い……。

 青い空だ、感じるままに色を音に変えるなら、僕の心はそう象る。

 何が感情を生み出すのか、そんなことばかり考えて、いやこの場合は思考の方が都合が良い、あおがアオに戻るなら、アオは色として青にも、碧にもなれる。あおいやアオイなら蒼いにも言葉としてなれる。

 そんなことを思考する嗜好が僕にはある。これに志向させたのはあの時の罪重ね、零した涙の数だけ理解の扉は開いた。


 あれは言葉では真実を語ってくれない。

 なら言葉をコトバにまで戻す必要がある。

 僕は出来事から理解した、分解すれば、解くことが分かる。分を解いてわからないなら、秒を解けば、ビョウをトケバ、アヤマリがトケル……。


 大きく白い雲がゆっくりと流れていく。

 曲がりくねる道に先頭の子達の姿は見えなくなった。


 学年主任の先生に見られることはない。

 気がかりなのは少し先にいる担任の女教師だけど、まだ若い女教師は背の高い美形の男子生徒と楽しそうに談笑しながら歩いていて、後ろを気にしている様子はない。


 名も知らぬ美少女は僕を見下ろしながら話し出すきっかけを探しているように、時たま僕の頭辺りを見つめ、ついて来ている。


 「翼を見たんだよね、彼の翼」

  はっとした顔をして長身の少女は頷いた。


 「何色だった?」


 長身の少女は視線を上げ、恐る恐るという表現がふさわしい、どこか少女には不似合いな態度で唇の形をわずかに変える。


 色づいた唇は音もなく黒という響きを象る動きをした。


 「見えてるのかな、今も」

 尋ねると視線を上げ、実況しているように言葉にした。


 「動いてる。歩いてる。私を見つめてる、赤い瞳が……」


 言葉を耳にした時、心から言葉が出ていた。

「遥かなる昔、誰かに教えられたのだけど、彼の翼は鴉の濡れ羽色という色らしい」


 口にしながら、考えていた。

 何時、誰に教えられたのか、それとも今、彼が伝えたのか……。


 リアクションをしない少女が気になり意識を外の現実に戻すと、少女は俯くように下を向き、視線を落として歩いていた。

 赤い頰を見る限り、怖くて俯いている様には見えない、姿が見えているだけの彼に、姿だけで、早熟な少女は恋をしたのだろう。

 確かに恋に、理解も誤解も正解も要らない。


 恋はするものではなく落ちるものとは、古から残された言葉だけど、古の女賢者も恋に落ちたのかな、彼に見つめられて……。

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