二日目「合コンで学生時代の後輩に再開とかマジありえねー」
俺が入れるコーヒーには幾つものこだわりがある。
豆の種類は当たり前。豆の挽き方、お湯の温度、機材の種類、ドリップのやり方。
それにより、味と香りとコクがまるっきり違ってくるのだ。
ホットにはホットの、アイスにはアイスの、ミルク入りや砂糖入りのコーヒーの入れ方にもこだわり、飲む人によって変えている。
最近のコンビニのコーヒーもバカには出来ないが、やはり俺は自分で入れるほうが好きだ。と言うか、一応プロだしな。
早速、自分で入れたホットコーヒーを香りを楽しみつつ口に含む。うん、美味い。さて、と。気分を変えたところでもう一度あのメガネに問おう。
「んで、なんで昨日の今日が合コンなんだよ。ありえねーだろ、馬鹿か?馬鹿なのか?準備期間ってのがあるだろう普通は」
「俺に言われても困る。俺だって文句の一つ言いたいさ。だが、立場上言えないんだよ」
「・・・・・・社畜って大変だな」
「・・・・・・ああ」
最近の真也は目が死んでるぜ。人のこと言えないが。
「はぁ、貴様のコーヒーを飲んで少しは冷静になった。助かる」
「お前、本当にその上司に苦労させられてんだな」
「まあな。貴様のような個人営業が羨ましいよ。重圧がないし」
実際、楽だな。客は少ないし、穏やかだし。
「取り敢えず、今日の夕方に迎えに行くぞ」
「オーライ、準備しておく」
真也はコーヒーを飲みきった後、お金を払って帰った。
その後夕方になり、俺は真也と共に合コンの会場である居酒屋に向かった。
会場には二人の男性と四人の女性が待っていた。
「ん?おお君が霧雨君が言っていたマスターか!ハッハッハ、よく来た!褒めて使わすぞ!」
「あ、ああ」
「私は霧島君の上司の小金井英夫だ!よろしく頼むぞ!ハッハッハ!」
・・・・・・ああ。よく分った。この男が真也が言っていた上司か。
典型的な俺様だ。間違いない。言い方がどこぞの慢心王に似てるしな。
「つか真也、なんで俺の呼び名がマスターなんだよ」
「一応本名を伝えたぞ。だが、それでアレなんだ」
「・・・・・マジで苦労してんのな」
「わかってくれるか」
もう一人の男はと言うと
「俺は飯田順って言うんだ。君ら、マジでカワイーね。ねえねえ、メアド交換しね?」
早速ナンパしていた。ああ、こいつも分かりやすいな。
「アイツは俺の同期だ。全く、相変わらず女好きな奴だ。同じダメ人間でも貴様の方がマシだ」
やかましいぞメガネ。
なんか、さっきの二人で気分が萎えたから帰りたいし、もう合コンはどうでもいい気がした。取り敢えず、今日来た相手の女性だけ確認して適当に過ごそう。
さて、相手の女性だが・・・・・うん、どこにでもいるようなOLか。
「アレ?ひょっとして先輩ですか?」
・・・・・・あ、あっれー?オッカシーナ。見覚えのある女がOLに混じってた気がしたぞ?
真也クーン、まさか君・・・・・・ハメた?
「む?なんと、まさか君がいるとはな。久しいな、桐生音々君。高校卒業以来か」
え?真也も知らない?あ、そういえばこいつも当日まで秘密って言われてたんだっけ
でもさ、なんでよりにもよって・・・・・
「あ、霧雨先輩も!お久しぶりです、先輩達!」
高校時代の後輩がここにいるんだよ!?