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一日目「暇人の何が悪い」

春真っ盛り、シーズンは4月を迎え、今は新入生や新入社員が大変な時期。


まあ、俺には関係ないけどな。だって俺、喫茶店のマスターだし。


東京の某区のあまり人気が少ない場所に俺の店は立っている。三階建ての一軒家を改装した為、一階の店内はそんなに広くない。二階にリビングと風呂とトイレ、三階に寝室と客室がある程度だ。もう一度言うが、そんなに広くない。


ちなみに店名は【いやしの】。名の通り、癒しを求める客を相手にしている。俺にとって腐ってるように見えるこの現代社会において、精神的に疲れた人が一人でも多く癒してもらえれば上々と思っている。


自慢じゃないが、コーヒーとナポリタンの腕は一流だと思ってるぞ


しかし、毎日のことだが客は少ない。一日に十人来れば多い方だ。多くこられても困るがな。忙しいのは勘弁。


今日も今日とて客は一人も来ていない。暇つぶしにコーヒーの研究をしつつタバコで一服。ふ~、平和だ



「なーにが平和だ、このズボラ人間。少しは真面目に働いて社会に貢献しろ。後、俺を何故客に含めないのだ!」


「うっさい。暇で静かなのがいいんじゃないか。後、お前を客と認めたことは一度もないぞ悪友」


「本当に堕落しているな、このダメ人間。何故この数年、この店が赤字で潰れないのか本当に謎だ」


「んなもん、営業以外で稼いでるからに決まってるだろ。競馬とパチンコで」


「賭け事で稼ぐな!このドアホが!」



この喧しい男は霧雨真也。中学、高校、大学と腐れ縁の悪友。唯一の理解者ではあるが、喧しい。頭は硬いし、メガネだし、口うるさいし、メガネだし、生徒会長だったし、メガネだし、イケメンだし、メガ「メガネメガネうるさいわ!」黙れ、メガネが本体の癖に。



「全く、貴様は本当に変わらん。始めて出会った中学の時からずっとな」


「俺は変わんねーよ。変わりたくもねぇ」



平々凡々が一番。これ、俺の座右の銘ね。



「んで、今日は何しに来たんだよ真也。お前が俺の店でコーヒー飲む以外にすることねーんだからとっとと帰れ」


「本当に口が悪いな貴様はっ・・・・・・。ゴホン、実は悪友の貴様に頼みがあってな」


「は?頼みだ?完璧超人のお前がか?」



学生時代は常に成績トップ、運動神経抜群でスポーツも大得意。有名企業に就職し、まさにリア充街道まっしぐらなコイツが、自堕落ダメ人間の俺に頼みだ?


ねーよ



「冗談はメガネだけにしとけ」


「だから貴様は何度、俺のメガネを貶せば気が済む!話が進まんだろう!」


「悪い悪い。で?」


「うむ。実は、会社の上司に合コンに誘われてな」


「あ、把握」



そういやこいつ、堅物な上に初心だった。学生時代も女が大の苦手で話しかけるのも一苦労だったな。つか、今も治ってなかったのかよ



「大体わかった。堅物で初心なお前は、俺にサポートして欲しいと」


「いや、それもあるが違う。まあ実際、俺も社会の歯車だから上司の頼みを断れん。いや、俺も良い歳だから出会いが欲しいとは思っているぞ?しかし、どうしても女性の前に出ると上がってしまってな・・・・・・」


「相変わらずなのか」


「まあな。だが、それはお置いておいて・・・・・・うむ、やはり美味い」



真也は一旦落ち着くためにコーヒーを一口飲んだ。俺が入れたコーヒーはちょいと特殊で、リラックス効果があるからな。こういう時には役に立つ。



「元々、人数が一人足りないと言われ、宛を探してくれとも言われたのだ。で、俺の知り合いで疎遠になっていなかった貴様に頼んでいるのだ」


「数合わせね。まあ、暇だしいいぞ」



俺も真也ももう25。そろそろ身を固めるにしろ、何にしろ、出会いは欲しい。


将来、爺さんになってからの孤独死は勘弁だな。



「では、詳しい日時とかは後日連絡する」


「相手の女性は?」


「俺も詳しくは聞かされていない。上司が当日の楽しみとかほざいていたからな。・・・・・何時か、下克上してみせる」



ホント、向上心の塊だな真也


さて合コンかぁ。ま、適当でいいよな。俺は俺らしく、いつも通り変わらんのだからな。

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