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アーク・ノヴァ――天球の音楽――  作者: 道詠
鹿砦の罠
3/19

鹿砦の罠

 意識すれば、そこに居た。それだけの事実が――彼らには解らない。何時から居たのか、此処は何処なのか、何故此処に居るのか、どのように此処を訪れたのか、すっぽりとすべてが抜け落ちている。

 記憶の引き出しを開けようとして、彼らは思い思いに惑う貌を見せた。大理石の床や壁、豪奢のホテルや屋敷の中を思わせるその世界は、彼らの住む世界とは悉くかけ離れている。

「すげー……いい匂い。すっげーゴウカだ……」

 唐木香の焚かれた芳香な匂いに鼻をひくつかせているのは、彼女の見知った顔、山鳩緑だ。見渡せば、大半は見知らぬ人であったが1人は山鳩の様な見知った顔も居た。

 その中の1人が真っ先に大きな両開きの扉へ向かい、手を伸ばす。だが、少しして戻って来た。

 扉に近付いて見直してみると、扉は金属製で内鍵のようなものはついていないようだ。

「開かないのかい?」

「……手前ら、何処のどいつだ?」

「ソレはこっちのセリフだ」

「山鳩、突っかかるのは止そうよ」

「あぁん? オレが知るか。っち、何なんだ、ココは……?」

 青年は頭を掻きむしりながら唸るように独り言を吐いた。話し声は聞こえないものの、他の者達も各々戸惑いを顔に表している。

「取り敢えず、自己紹介をしませんか。名前に年齢、職業程度は把握しておくべきだと存じますが」

「ボクも同感だよ。このままだと不便だよね」

「言いだしっぺが言うべき、だと思うぜ、ます」

「……ハッ。ノンキに自分らの紹介してるヒマがあったらココがドコか探るべきだろうが」

 鳩羽たちが居る場所は見たところ、大広間エントランスホールのようだ。映画で見るような螺旋階段が広間の右脇にぐるりと伸びている。

 広間の左手にはエレベーターの搭乗口が見え、広間中央の奥には先へ続く木製の両開きの扉があった。

「好きにすればいいんじゃないですか。こっちは自己紹介しとくつもりですけど」

「フン。オイ! 誰か見回ろうってヤツはいねーのか!」

 誰も答えようとしなかったので、青年は聞かせるように舌打ちをして廊下の方へ出て行った。

「あーあ、いっちゃった。あんなに怒りんぼでだいじょうぶかなぁ?」

「まぁまぁ、いいじゃないの。急にこんなとこ来たら誰だって混乱しちゃうでしょ。それより、あたしは早く煙草が吸いたいんだけど」

「うっわ、やめてくれよ、未成年の前で!」

「本題に戻ろう。喧嘩はよくないよ」

「僕の名前は田中始、高校1年生です。次の方どうぞ」

「それじゃあ、お次はボクかな。ボクはアレックス・マクファーレン。短い間になると思うけど、よろしくたのむよ」

 茶味がかった金髪に彫りの深い顔立ち、オリーブの眸と鳶色の眸から鍵鼻に下唇が厚めの唇。新雪のような肌によく手入れされた爪、すらっとした手足の長い体型。見掛けだけで判断すれば、成人してから数年が経ち社会人として落ち着いてきた年頃のように見える。

「日本語ウマいなー、あ、っすね」

「うん。ヘタな日本人より日本語上手そう」

「辛いなら、敬語はなくていいよ」

「あざっす! マジ助かった!」

「ボクの父が大の日本好きでね、その縁で幼いころから日本の避暑地に滞在することが多かったんだ。

ボクも日本は大好きだから、自分なりに勉強しているよ。でも、文法から入ったクチじゃないからボクも敬語はニガテなんだ、すまないね」

 恰好と言えば臙脂色のジャケットを羽織り、下は同色のスラックスを履いて中はワインレッドのベストを身に着けている。

 ベージュのワイシャツに黄土色のアスコットタイをシルバーのリングで留め、スワロフスキーのチェーン付シルバーラベルピンを飾り付け、ロザリオを模した金のカフリンクスにベージュのハンカチーフ、抹茶色のピンドットハイソックスに飴色に輝く内羽根式ウィングチップの革靴を履いていた。

 オリーブ色の左目には、縁周りにアラベスク装飾が施された金色のチェーン付モノクルをかけている。

 手に持っている真鍮の鈍い輝きを放つ懐中時計は携帯用らしく小型だ。竜頭にはピジョンブラッドの美しさを誇る宝石が嵌め込まれ、深い暗がりと艶めかしい光を醸す。

「此処に来るまでの記憶の中で心当たりは? どんな些細な事でも構いません、変わった事はありましたか?」

「ボクは……残念ながら、仮眠室で休憩をとっていたぐらいで、特に思い当たる節はないな」

「僕は前後の記憶が無いな。何をしていたのか、思い出せない」

「俺はあるぞ! 俺的には今まで食おうと思った日に食えてたヤキソバパンもカツサンドも売り切れて食えなかったのが一番だが、他にも色々あるぜ! 例えば妹の夜泣きが珍しくヒドかったり――」

「彼は山鳩緑です。私はハトです。私も授業受けてた覚えしかありません」

「オイィィッ!? オメーはいつからハトぽっぽになったんだよ~!」

「中1か中2のころから。ハイ次の人」

『…………』

「みなさん、シャイなんだな。それじゃあ右回りで順に自己紹介いこうか?」

「えっ……あ、その……」

 右回り、と言われて少年が顔を上げる。声は比較的高いが、声変わりを終えた年頃のものだ。

 光の反射によっては黄味がかった色を放つ白銀の長髪にエメラルドグリーンの眸を持つ彼は、すっかり縮こまっていた。

 無造作に伸ばされた長髪は前髪も例外ではなく、面皰のない珠玉の肌が前髪の間から覗く。細長い指に肌理細やかな肌をした手は女性的だ。

 白磁の眉が困惑したように下がり、薄い桜桃色の唇が引き結ばれた。黒縁眼鏡をかけた1人だけ部屋着の彼は、恥じらうように頬を春色に染めている。

 部屋着と言っても兎耳のついたフードつきモノクロパーカーで左半分と右半分に白と黒が分けられている物だが、両腕から袖口にかけての両袖部分には黒白ボーダーの切り替えが入っている。

 ズボンはマス目の大きい青と黒のガンクラブチェックでこれまた暖かそうな生地だ。室内用のスリッパも防寒用のモコモコとした黒地にピンクの猫がパターン化された物で、他の面々と比べても大分防寒に力を入れていた。

 自信なさげな表情は1羽の兎が心許なく座り込んでいる様を思わせる。手首付近の両腕には緑色の血管が透けて見えていた。

「ッ――!? ま、まってくれ! こ、こいつは駄目だ」

「どういう意味ですか?」

「とにかく駄目ったら駄目なんだ! あんたらが何者かワカンネーし……」

「だったら、ぼくらにも名乗る義務はないと思うのです」

「それは不公平だ。僕達は曲がりなりにも自分を明かしたんです、名前や年齢、職業を言うくらいで困る事があるって言うんですか?」

「俺は名乗った。こいつは俺の幼馴染だ、ソレで十分だろ」

「で、でも、ハトさんって方だって本名じゃなさそうですしぃ、ここはみんなあだ名を作って呼び合えばいいんじゃぁ……?」

「ハイハーイ、オレはオシロサマネ~。コレからヨロシクー」

「あからさまに偽名じゃねーか!」

「それってハンドルネームかペンネーム?」

「インヤ、イマ考えたヨ?」

 萌黄色に染めた髪はムラが出来ており、目は同色のカラーコンタクトを入れている。

 加えて片目には中央に赤い蝶の刻印が刻まれた黒い眼帯をつけ、右の目許から頬にかけて青い雫を流しているようなメイクが目を惹いた。

 その雫を蕾と見立てたように雫の周りにはバンクシアローズが咲き誇り、そこから鎖骨にかけてまでは七芒星の棘や十字架を思わせる枝葉と言った文様が刻まれている。これもメイクだろう。

 寒がりなのか首元には紫のマフラー、上着は渋めの濃い茶革のジャケットを羽織り、中は赤いチェックのシャツを着ている。

 黒革のベルトにベージュのチノパン、メインの茶に赤いレースステイを取り入れたスエードブーツを履いていた。

「ほ、ほらぁ! なにも自己紹介し合うことはないと思います~」

「それは本名名乗った僕達がバカみたいじゃないか」

「オメーが勝手に名乗ったんだろーが」

「まあまあ、ボクはどっちでもいいよ。知られて困る事なんてないし。あれ? でも、みなさんは知られたら困る事があるのかな?」

「そういうワケじゃなくて、何処かもわからない、お互いのこともわからない、そんなときに個人情報を漏らすのは心理的に嫌なんです」

「住所やアドレスならともかく、何が不満なんだ? 何か隠したい事でもあるのか?」

「見ず知らずの奴等だぜ、この異常事態で易々と明かせるか」

「山鳩。君はどうしてそこまで彼を庇い立てする? 彼が何なのだと言うんだ?」

「ほ、本名を言うなら、ハトさんからおねがいしますぅ……」

「別にいいですけど、それならちゃんと言ってくださいね」

「俺は言ったからこいつはいーじゃん」

「よくない」

「なんかイヤですよねぇ、ひとりだけ特別扱いみたいなのはぁ……」

「あ、ああのっ、そそそののっ……」

「う、うーん、名前ひとつでここまで言い合いみたいになるんだったら、先にここを調べちゃいましょうよーぼくはケンカしたくないですー」

「確かにここで仲間割れをしても仕方がない。分かりました、好きにして下さい。ただし、自分の名前や年齢も言えないような人は信用出来ないと僕は考えていますから」

「おっ、簡潔明瞭な物言い! ステキだね~、オレ気に入ったよハジメクンのこと」

「うわ、何だこの人怖ぇ……」

「山鳩、私の後ろに隠れない」

「こえーじゃん、だって……」

「その子庇うなら、私の前に立ちなよ。この3列、なんだかカルガモの親子みたいじゃん」

「可愛いねぇ~。そうそう、そのコなんだけどサ、テグスちゃんにけってーネ」

「は? てぐす? 釣糸の? ナメんなよ!」

「あんたの喧嘩の売り所が分からん。大事なのはその子の意志でしょうが。どうする?」

「オメー、テグスにはもうちょっと愛想よくだな……」

「私はこんな所でそんな余裕ない。さっさとここを調べるべきなのは賛成だし」

「ねえねえ、テグスでいいよねぇ?」

「え、は、はぃ……」

「じゃ、よろしくテグス……」

「テグスクン、気に入ってくれて何よりだよ~。他はストックないからジブンで考えてねぇ?」

「マイペースだなぁ……ま、いいや。ぼくは鶸柚菜種ヒワユナタネっていいます。高2です。なんでこうなってるか分からないけど、とりあえずよろしくおねがいしま~す」

 菜種はノースリーブのライムグリーン撥水用ジップパーカーにクリーム色のハイネックセーターを着ている。

 ボトムズは黒地に白いアラベスクパターンのサルエルパンツを履き、シルバープレート付ベルトが付いた光沢の無い黒のレザーブーツを履いていた。

「他にも女いてよかったな」

「ホッとしました。これで満足?」

「なぐんぞ」

「ギブアップ!」

 引き攣り顔の彼女はホールドアップした。菜種は、人差し指を唇に添えてぼけーっとその光景を眺めていた。

「知り合いがいるひとはいいなぁ、ぼくはだれも知らないや」

 シャンデリアの下で鮮やかな黄色を放つ金髪は肩甲骨にあたるほどの長さで、くすみがかった虹彩の色は暗いアンバーの眸だが、光の下だと明るく華やいでいる。

 アーモンド形のぱっちりとした釣り目はいわゆる、猫目で彼の気ままさを表わすかのような態度が容姿に合っていた。

 頭部にはシニヨンのように綿毛のようなふわふわとした白い毛の塊が2つほど留められており、髪型は結んだ髪が肩まで届かない長さのピッグテールだ。その結んだ髪束は菜箸ぐらいに細かった。

 声は鳩羽よりも高く手足は長めで、身長は160後半辺りと中々の長身だ。腰は細かったがくびれは無く、撫で肩で子供らしい体付きだ。

 小さく厚い唇から零れる音は小鳥のさえずりのように人を魅了させ、神秘的な薫の匂い立つオーラは独特のものを放っている。

 鳩羽は菜種の頭にある柔らかくふわふわしたものをふれたそうな眼差しで一点の曇りなくじーっと見つめていた。

「ぼくに何か用?」

 かるく膝を曲げ、首筋に手を当て小首をかしげるポーズはモデルのようだが、菜種にはこの上なく似合っていた。

「頭のフワフワさわらせて」

「ヤダー」

「なんでー?」

「手付きキモイ」

「……ゴメン」

「いいよー。隣の人も後ろの子もよろしくね~?」

「あの、そろそろいいですか……?」

「すみません。どうぞ」

「いえっ! お、おれは茶雀璃寛リカンと申しますっ。大学2年生です、おねがいします……」

 前髪にメッシュを入れたように元のライトブラウンの地毛が残っており、赤茶色に染めた髪は波打っていてロングポニーテールに結ばれている。

 虹彩と瞳孔の区別が付かない真っ黒く大きな垂れ目は笑うとえくぼが出た。唇の右下、顎近くには黒い黒子がついている。

 首は長めで細く肩は撫で肩で猫背、手足は長い。身長は180センチを超えているだろう。両耳には幾つものピアス穴が開いてあった。

 血色はあまり良くなく不健康な白さや目許の薄らした隈、若干こけた頬がもともとの顔から滲み出る温厚さを打ち消している。

 恰好はミントグリーンと白のボーダーTシャツにスカイブルーのカーディガンを羽織り、タータンチェックのドレスゴードン柄マフラーを首に巻き、真っ白いベルボトムにライトブラウンのショートブーツを履いている。

「ふわあ~。やっと紹介終わった? 参るねェ、オジサン、立ったまま寝ちゃってたよ」

「悠長なおっさんだねです。1人だけダンディで浮いてますよ~」

「立ったまま寝るのはスゲーな。俺も見習おう」

「山鳩、自重」

 身長は170センチ程度だろうか、手足は太めで胸板は厚く広い。筋肉質と言うより肉付きの良い体型は相応の年齢を感じさせるが、ビール腹と言う程ではない。だが、出た腹や反った背を見るに些か胸を張り過ぎた姿勢のようだ。

 不精髭に見せかけた髭は手入れが行き届いており、毛量が少なくふんわりとした髪は少し長めだが旨い具合にマッチしてダンディな風貌を助長させている。

 ハンサムな顔立ちと大きな唇からは快活さや大らかさを感じさせ、見掛けは何とも煙草の似合いそうな男性だった。

 出で立ちはと言えば、袖周りに赤や茶の線が入ったグレーの八分丈ラガーシャツに黒のスウェットパンツ、素足にダークブラウンのデッキシューズと室内着に近いカジュアルなスタイルだ。

「オッサンの名前は、海松若菜ミルワカナだ。何歳だったか忘れちまったけど、まァヨロシク!」

「まだ若いのにボケてるよこのひと~」

「若菜ちゃんってカワイイ名前ダネェ」

「あたしは香や透世代なのよ、若い子達は藪に手ェ突っ込んで蛇出すからおじさん優しく教えたげるけどねェ」

「いみわかんねえ」

「小野妹子を思い出せ」

「なんでだ!?」

「クカカ、イモコはちいっとばかし古すぎるねェ。じゃ、最後はそこの少年。最年少だろうけどガンバって。オジサンも1人出てったアイツは気になるのよ」

「オッサン、タバコは止せよ。コッチはカラダ弱いヤツがいんだぜ」

「けほっ、ごほっ、ごほっ……ご、ごめんなさい、げほげほっ」

「山鳩、ケンカ腰はよくない。お願いします、海松さん」

 鳩羽が煙草の煙に咽込みながらも謝ろうとするテグスの背中をぽんぽんと摩りながら、海松に向かって軽く頭を下げた。

「すまないねェ、ちょっくら外出てくるよ」

「集団行動、したほうがいいんじゃあ……?」

「オジサンも落ち着きたいのよ、こういう時は煙草吸うのが一番だからね。拘束されてるんじゃないんだし、好きに行動しといておくれね」

 そう言って海松はえっちらほっちらと螺旋階段を上り、2階の方へと消えていった。後姿を見送った鳩羽は溜息を吐く。

「はあ……めんどくさい事になってきたなぁ、このフリーダムっぷり」

「ウフフフ、楽しいじゃないか」

「ゆーちょーなおっさんだね」

「アイツ、ちっとは悪びれたカオしろっつーの」

 テグスは涙目になりながら、しきりに鼻を啜ったり鼻頭を掴んで引っ張ったりして弄っていた。

 それを見た鳩羽がカーディガンのポケットからティッシュを取り出してテグスに差し出すと、テグスは恐縮した態度で受け取る。

「まあいいさ。もう1人、単独行動をしている者が居る。今更、1人や2人増えたところでな」

「田中、なんでおめーが仕切りを?」

「不満があるなら君に任せるが?」

「やっ、べ、べつにねーけどさ……」

「それよりぃ、最後に残った方の自己紹介がまだですよぉ……?」

「そうだったな。では、どうぞ」

「……初めまして、俺の名はカルマ・カルドゥエーリスと申します。若輩者ですが皆様方の足手纏いにならないよう尽力させて頂くので以後お見知り置きを」

 アッシュグレイの硬く細やかな髪に張りと艶のある透き通るような肌は太陽光を柔らかく反射し、サングラス越しではわからない爽やかなブルーアイズは海底洞窟の澄んだ青を想わせる。

 彫りの深い顔立ちに残るあどけなさはまだ、少年が成長期を迎える前だと言う証だ。右耳には黒いピアスが大小2つついていた。

 前髪はオールバックのようにほとんど上げ、右端にだけ下ろしている。整髪剤で丁寧にセットされた髪型は異性の目を惹く事だろう。

「カ、カッテェーなぁ~。もっと砕けていいんだぜ?」

「それでは、1度仕切り直しをさせてもらいましょう」

 黒地の中折れハットは孔雀の羽根飾り一枚にワインレッドのテープが巻かれている。テープには鮮やかな朱色が地で毬文様の小さな木製帯留めが付いていた。

 ダークブラウンのサングラスをかけ、螺鈿細工に蒔絵が施されたスライド式ルーペネックレスを首からぶら提げており、右手首にはマット仕上げのクロコダイルレザーが用いられた玉符柄の紺ベルトにシルバーバックルの自動巻腕時計を嵌めていた。

 ライトグレーのドゥエボットーニボタンダウンシャツにカフリンクス、胸ポケットには斑の少ない琥珀がかった鼈甲の簪を挿しているが、獅子の頭が飾られている。

 両裾の端から後ろにぐるりとワーレントラスの形をした真鍮がかった鈍い金字の文様カリグラフィーが入ったワインレッドのベストに同色で無地のハーフパンツ、紺のハイソックスに黒味がかった紺のUチップ外羽根式の革靴。

 左手には、グリップが白磁に象眼の透かし彫りされた飛天の黒い漆塗りのステッキを手に持っている。ステッキ部分には蒔絵や螺鈿などの細工が施されていた。

 全体的に気品のある落ち着いた色と生地、文様を使いながらも使っている小物は華々しく美麗だ。

「カルマ・カルドゥエーリス、10歳です」

 ステッキをくるりと回し、帽子を外して優雅に一礼してみせた少年に周囲の目が一斉に集まる。ほうっと見惚れたように感嘆する者も中には居た。

「カルマって罪って意味じゃねーか!」

「凪って意味ですよ」

「カルマって業じゃなかった?」

「罪と何が違うんだよ?」

「自業自得と言うのはだな、本来良い意味も含めている言葉なんだ。自得の得の字が見えるだろう?」

「みえねー!」

「今書いてやるから待ってろ」

「山鳩には生業の説明より言いくるめの方がズバッと解るか、田中君さすが。閑話休題。漫才はおいとこう。

時間がかかったけど全員分の自己紹介は終わったし、さっきの人を捜すついでに歩き回ってみないか?」

「さんせ~。ハト、だっけ? きみ、けっこうおちついてるよね~。なんで?」

「なんで、って言われても……慌てたってどうしようもないし」

「まあね。よかったよ、甲高い声でヒステリック起こされても困るから」

「そういうアナタこそ、可愛らしい顔と声してナカナカ言うじゃないか。頼もしい限りだよ」

「うふふ、そう? てれちゃうな~」

「ああ、敬語って使ったほうがいい?」

「いーよ、べつにガッコーや職場じゃないんだし。この手の状況下でギスギスしたって疑心暗鬼がお釣りにくるだけだしね、仲良くしようよ」

「冴えてるね、鶸柚くん。大賛成だ」

「私語は個人の自由だと存じますが、歩きながらに致しましょう」

「最年少くんにいわれたらうなずくしかないね。いこうよ、みんな」

 くしゃりと笑いかけた菜種は、コンパスの様な手足を動かして先導する。次に田中、鳩羽、山鳩、テグス、茶雀、カルマ、アレックスの順で歩いて行った。


「それにしても、カルマはずいぶんと大人びた話し方だね。もっと砕けた話し方でいいんだよ?」

「話したいようにすれば?」

「ボクはみんなと仲良くしたいからだよ」

「仲良くしてからじゃなきゃ喋りにくいって人もいるでしょ。自然に身を任せればいいじゃん」

「そうかな。でも、そうだね、急ぐコトはないか」

「こんな見知らぬところ、早く出たいですよぅ……」

「アハハ、それもそうだ。すぐ帰れるといいんだけどな」

「ずいぶん他人事だね?」

「まだ素直に受け容れられないのかもしれない。鶸柚たちはスゴイなあ」

「ま、若いからね~。柔軟性があるんですよ、ぼくらは!」

「柔軟すぎても軸がブレますし、やっぱりしっかりと地に足がついた大人の人が居てくれるとありがたいですね」

「なにそれおべっか? コドモらしくないなぁ、きみ」

「ごめんなさい」

「いいよ、イジめる気で言ったんじゃないんだし。カルマって呼んでいいよね?」

 カルマが肯定的な相槌を打つと、菜種はニッコリとカルマに笑いかけて握手を求める。

「ね、これからよろしく~」

 カルマが握手に応じると、菜種は親しげな態度で握り返し、元の順列に戻って行く。たんっとジャンプするように先頭へ割り込んだ菜種に田中は大人しく前を譲った。

 広間らしき所を抜け、廊下に出る。クリーム色の壁には炎に見せかけたライトが照らす燭台が等間隔に飾られており、赤い絨毯が敷かれた廊下は一本道だ。

「年功序列や礼儀って気になる人いる? 私は年下の方だからタメでも気にしないけど、やっぱりなるべくなら少しでも仲良くなっときたいんだ。

だから砕けた話し方で良いって人は、今のうちに教えておいてほしいのだけれど」

「ハイハーイ、オレはタメ派~。敬愛の念を持ってオシロサマと呼んでくれたまえ!」

「堅苦しいとメンドクサイし、ぼくは気にしないな。なんなら名前で呼んでいいよ?」

「お、おれも、敬語は慣れてるけど、されるのは申し訳ないです……」

「俺は断然タメ! でなきゃしゃべれねぇ! テグスも同じだってよ!」

「体育会系ってそーゆーの厳しいイメージあったんだけどな……」

「僕は多数決の採択に従うまでだ」

「俺は一番年下なので、恐縮してしまいます」

 会話を交えながらも一先ず奥まで進んでみると、開けた空間に出た。手前には2つに別れた赤と青の暖簾がかかっている光景が見え、暖簾の『男』と『女』の文字や脇に置かれた自動販売機から、浴場だと判る。

 暖簾を手で退けて覗いてみると、脱衣所が見えた。眼前の光景に菜種が嫌そうな表情をし、茶雀の血色が若干良くなる。

 自動販売機の置かれた反対側、左手には男女のトイレが備え付けられていた。自販機の隣にはサウナも設けられており、中央には背もたれのないソファが鎮座している。右手前の壁側にはマッサージチェアーが接していた。

「おっ、みーつけた。おーい! オッサン合流しに来たよ~」

「一服終わったんだ、おじさん」

「おにーさん、3分の遅刻ですよ」

「ゴメンよ、レディ。お詫びに愛の花束をプレゼンツ」

「……どっから持って来たんですか?」

「廊下に飾ってあった花瓶から1本拝借させてもらったぜ」

 海松は顎の髭を摩りながら、1輪の薔薇を差し出す。鳩羽は引き気味の表情で、勧誘は間に合ってますと両手を差し出して断った。

「オウ……どうだい、レディ、美しい薔薇でも……」

「ばっちいから棄てよう」

「和ませようとしたオッサンなりの努力なのよ! 努力!」

「じゃあパワハラで訴えますね」

「ハト、それすっごくナイスアイディア」

「ソレだけはヤメテェエー!」

「……ここまで年下相手にふざけられる大人と言うのも、偉大だな」

「そーか?」

「ろくに知りもしない分野で知ったかぶりを決め込まれるよりは、遥かに良い」

「そうかい。そういう人には気を付けないとダメだよ、田中」

「分かってます」

「アレックス、ハジメを怒らせんなって」

「ん? そうか、怒ったんだね、すまなかったよ。なにかボクの発言が気に障ったのかい?」

「……はぁ。別に何でも」

「ムズカシー年頃なのよ、あれくらいは。アレックスもあったろ?」

「アハハ、ああいうのは特になかったな。だけど、繊細な時期はあった。周囲との接し方に悩んだ時期もあったよ」

「アンタみてえなイケメンハンサムでもあるんだな~。や、俺はただのイケメンだからねーけどな!」

「うん、山鳩は幸せそうだね」

「まあな!」

「ソレで本心だなんて、オモシロイよねぇ?」

「……オッチャンやだこの天然さんがた」

 ニッコリと笑っているアレックスと自信満々に肯定した山鳩。その2人を見てツッコミ欠乏症に陥った海松は、ぞくぞくとした寒気を覚えるのだった。

「そうだ。さっき、敬語についてどうするかって話をしてたんですけど……」

「あたしはどーせ威厳ないし、どっちでもいいな。ただし小学生じゃないんだから名前ネタでからかうなよお子さんたち!」

「若菜ちゃんって呼べばいいんだろー?」

「オイコラロープの安全な結び方教えてやったのはダレかなァー? オッチャン優しかったろー?」

「へへ、すんません!」

「……頭が痛い」

 両腕を組んだ田中は集団から少し離れた所で壁に凭れ掛かり、額に手を当てて参った顔をする。

 その後、海松とも合流した彼らは2手に分かれて廊下の両側を見ていく事にした。鳩羽は右手側の捜索、山鳩とテグス、海松と計4人のメンバーだ。

 手前から右が厨房でそこから食堂と貯蔵庫へ繋がっている。貯蔵庫へ行くには厨房の扉を通る必要があるようだ。

 貯蔵庫の中に入り、照明を点けてみるが、中は整頓されている。幾つかの戸棚に倉庫が置いてあり、大量の缶詰類に換えのタオルや洗剤などの生活用品が仕舞われている様子だ。

 防災グッズも完備しており、ペットボトルの水や乾パンなどもセットで置かれている。中くらいの倉庫は鍵がかかっていて開けられなかったが、専用の鍵があれば開けられそうだ。

 鉄色の厨房内は綺麗に片付けられていて、色味の無い空間に仕上がっている。パン作りの機械からオーブン、冷蔵庫に至るまで全て業務用の大きさだ。鳩羽は中華鍋を持ち上げようとして諦めた。

 厨房の食料を確認してみたが、この人数でも三日は保つであろう生鮮食品が大型の冷蔵庫に詰まっており、戸棚の中の食器や調理器具などは新品のような輝きを誇っていた。

「ん? どーしたんだよ、フライパンや鍋なんか取り出して」

「傷一つない。焦げ跡もない。本当に新品みたいだよね」

「スゲー屋敷っぽいし、下働きがピカピカに洗ったんだろ! 十円玉だってレモン汁かけたら新品同様にできるしな!」

「…………」

「まぁ、このくらい明るいのも必要よ? おじょうちゃん」

「ハハッ……だといいですね」

 食堂の最奥には暖炉が備え付けられており、部屋の空間もテーブルも縦長に伸びていた。

 床には真紅の絨毯が敷かれ、真ん中には白いテーブルクロスの敷かれたダイニングテーブルが置いてある。

 テーブル中央には青磁の花瓶が飾られており、華やかな白い花が活けられていた。艶やかな木製の椅子の数はざっと見て今居る人数以上はあるだろう。

 食堂の両側の壁には豪奢な額縁に彩られた1枚の絵画がそれぞれ飾られており、絵画の下には作品名が載っている。

 左手側の物だけがレプリカと表記されており、2枚の絵画が同じ絵に見える事から、鳩羽は本物とレプリカを飾っているのではないかと推理した。

 他にも鳩羽には真っ白なテーブルクロスや磨かれた燭台や活き活きとした花瓶の花、(他のフロアもそうだったが)床に溜まり易い髪の毛や埃の落ちていない清潔さが気にかかったものの、口に出す事はせず、チームを組んだ者達と探索を続ける。


 およそ10分後、退屈そうに廊下で待っている彼らの姿を目の当たりにした鳩羽たちは、急いで彼らの下へ駆け寄った。それから情報交換のやりとりを始める。

「暖炉か。最悪、脱出の手段としてとれるかな。なあ、茶雀?」

「はい、でも、煙突の中ってどうやって登るんですか……?」

「こっちは応接間みたいだったよ。それと、地下に続く階段や医務室、コインランドリーが並んだ部屋があった。

ちゃちゃっと行ってみたけど、地下室はワインセラーとボイラー室、あとは開かずの間的な謎の部屋があったよ」

 菜種は手前の部屋を医務室だと指差し、2番目の部屋を応接間だと言う。よくよく見てみると、扉についた金色のプレートにはそう書かれてあった。

「なあ、なんかすっげー圧迫感感じるんだけど、だれか心当たりねーか?」

「それは、あれだろうね……ムリもないよ」

「当たり前すぎて逆に気付きませんよね……」

「えっ? なになに? もしかして、分かってないの俺だけか?」

「りっくん、おなじ、だから……」

「よかったー仲間いた!」

「喜んでいいのか、そこ? じゃあハト君、君が彼に教えてやれ」

「私? まあ、いいんだけど……」


【加湿器やエアコンとかがないよね】

【驚くべき事に窓がなかったよ】

【御遺体がないよね、てっきりバトロワ始まってると思ったのに】

【やっぱり誘拐犯がいないね、どこに隠れてるんだろう?】


「【やっぱり誘拐犯がいないね、どこに隠れてるんだろう?】」

『………………』

「あれっ? 私、ヘンな発言でもした?」

「……誘拐犯が食堂だの応接間だのに居ると思ってたんだ?」

「…………。アハハー、それもそうだよね」

 しらじらしく笑う鳩羽に全員の視線が注目する。鳩羽はコホンと咳払いをし、もう一度発言をし直す。眸に宿る光が空を駆け昇る一条の龍のように伸びた。


「――窓がなかった、だろう?」


『………………』

 誰も彼もが黙り込み、沈黙が続く。あれっと鳩羽が周囲を見渡すと、アレックスがぽんっと肩に手を置いてにこっと笑いかけてくる。

「やはり、そこは見過ごせない点だな……建築基準法に違反している」

「ソコ!? 今は違くねーか……?」

「応接間には天井に暖房設備がついてて、空気清浄機も置かれてたんだ。そっちはどうだった?」

「食堂に暖炉はあったけど、厨房や貯蔵庫には何もなかったねえ」

「なあ、ヒワユ、これって何だ?」

「消毒用のアルコールが入った霧吹き。修学旅行か何かで見なかった?」

「へぇー。食堂の前にあんだな。だってよ、テグス」

「なんだ、知りたかったら聞いてくればいいのに。分かることだったら教えてあげるよ」

「あっ、あああっ、りっ、りがっ」

「あーもういいからっ」

「がっ…………」

 どもったテグスは少しして黙り込んで、顔を俯かせる。菜種は困った顔で山鳩を見た。

「ワリィな。緊張しいなんだ、こいつ」

「きみってお母さんみたいだね」

「なんだとてめー! 俺はお兄さんだ!!」

「……ふーん。じゃ、山鳩御兄さんと呼んであげましょう」

「いやいいって……」

「へえ? 単なるイチジョークだったけど、その手のマジなリアクション見るとホントに呼んであげたくなっちゃうね~」

「オイィ!? 俺は弄られキャラじゃねーぞ、断じてっ!」

「これからなればいいんだと思うよ? ね、ハト」

「是非、親愛の念を込めて緑兄さんと呼んでやって」

「あははー、他人を兄呼びって義兄弟の契り結んだみたい」

「兄貴ならいいぜ! ヘンなシュミには見えねーし!」

「ふーん、意外と外聞気にするタイプなんだ?」

「……君達! こちらが真剣に話し合ってる中、どうしてそう気が抜けているんだ! 本格的に検討しなければならない問題なんだぞ!」

「よくわからないけどさ……嫌な予感がすんだよね、ぼく的に」

「私も分からないんだけど、緊迫した状況の中、仲良くしておく事って悪い事?」

「時と場合があるだろう!」

「落ち着いて、田中。大丈夫、ずっと気を張ってるのも疲れるし、気分を緩和させるのは好い筈だよ」

「本当にそうだと言えるような事態か? ……よくこんな状況でへらへら笑っていられるものだ」

「すまんかった。上の階へ行こうか。これからはマジメにするよ」

「どうだかな……」

 鳩羽が代表して頭を下げ、彼の調子に合わせる。全員は上の階を目指して行った。


「……ウザいなぁ、ああいうの」

「? なにがだよ?」

「あーゆうリーダーぶってるの。ムカつかない?」

「だな!」

「……りっくんのばか」

「アイツリーダーってより参謀キャラじゃん? あの上から目線ムカつくよな~」

「声デカイし。ぜったい、本人に聞こえてるよ」

「マジで? まあいいじゃん、聞こえてんなら」

「ワケわかんないんだけど……?」

「聞こえてたら陰口になんねーじゃん」

「なるわボケ」

「なんだよハト!」

「寧ろ地味に言い返し辛い距離から集団で悪口とか一番タチ悪いと思うんですが?」

「そうかー? わかった、だまる」

「つか、纏めようとしてくれる人が居ない中、よくやってくれてるよ。束ねる気もないのに口だけ一丁前なのはどうなんだ?」

「へー、ハトはああいうの好きなんだ」

「その手の子供じみた返しはウンザリしてる」

「ええっ? おいおい、仲良くしようぜ」

「だったら最初からそんなの話題にするな。舐めてるのか?」

「オッサン煙草吸いたくなってきたー」

「ガマンしてくれよ、海松」

「だって、ねぇ……まだ一緒に行動してそう経ってないのにケンカおっぱじめるんだもの。聞いてて良くなるようなものじゃないでしょ?」

「海松が諌めればいいじゃないか」

「おーし、あたしの華麗なる鎮圧術を見とけ。おい、あんちゃんとじょうちゃんら、カッカしてないで深呼吸。カルシウム不足なら売店にあったコーヒー牛乳でもグイッといくかい?」

『は?』

「……ニッコリ笑おうぜ? オッチャンは大事にするものよ?」

「こういう時、無神経なオジサンが一番イヤだ」

「すごくわかる」

「意見が揃いましたね! 海松さんすごいです」

 茶雀のきらきらと輝く両目に海松は目を逸らし、額から流れ出る汗をハンカチで拭きながら答える。アレックスはニコニコ笑っていた。

「はっはっは、あっしの手にかかりゃあこんなもんよ」

「これでみんな一致団結だな」

「……どことなくずれてるんだな、このパーティ」

「すっごく言えてる」

 鳩羽のぼやきを耳にした菜種は鳩羽と顔を見合わせ、軽い溜息を吐く。奇妙な連帯感が2人を包んでいく中、階段を上り終えた彼らはエントランスホールの扉に手をかけた。

 扉を開けると、だだっ広い廊下が広がる。1階とは違い、大理石が剥き出しの床は迂闊に転んだら怪我をしてしまいそうだ。

「うわー、転んだらアウトだなこりゃ」

「じーさんかよ、海松さん?」

「骨粗しょう症にはまだ早いんですう!」

「うん、キモイ」

「お爺ちゃんには優しくしてあげて」

「ぐっはああ! まだ若いから! あたしまだまだイケるクチだから! ブイブイ言わせてるのォ!」

「どうせソープ一本だろ、オッサン」

「女子高生が言うもんじゃないよ」

 菜種の毒々しい発言に海松が頬を引き攣らせる。田中は聞こえなかった事にした。

「ウチの友だちは生々しいよ。男と女のぶっちゃけ話は同じようなものだ……本当にな」

「俺は清純派アピールしてっからヘーキだ!」

「黙れよ童貞」

「先輩一筋と言え!」

「へー、好きなコいるんだ? せんぱいって?」

「そりゃあ……とっても美人でクール、始まりは運命的でサイコーな……」

「うん、やっぱいいや」

「これからがハジマリだろ!? いいから聞いてけよ~」

 鮮やかな笑顔で鳩羽は「どんまい」と菜種に笑いかけ、菜種の肩に腕を回して酔っ払いのノリで語り出す山鳩にセクハラだと焦り騒ぐ海松、嫌そうに腕をどかしてくる菜種、と道中は賑やかだった。

 さて、2階には十数人分の個室と酒場付の娯楽室やトイレ、音楽室にバルコニーなどがあったのだが、そこで彼らは衝撃の光景を目の当たりにする。


ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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