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平均な兄、天才な妹  作者: 夜桜
日常編
9/40

9「欲したらどうする?」





人生の分岐点は数多く存在すると私は思う。

小さなものから大きいものまで多種多様にある。

だけど私達は人生の分岐点に立ったことに気づくなんてほとんどなく、過ぎ去ってから「もしかしてあれが?」と気づくのが当たり前だと思う。

でも、私は確信できる。


今まさに人生の分岐点に立っていると。







留衣の要望通りクレープを食べた私達はそれを期に片っ端から食べていった。

あの美少女はいくら食べても太らないという素晴らしき妬む才能があったりする。

一人でたこ焼きを6個食べる留衣だけど私は留佳先輩と半分ずつわけあっているのが現状。

「熱いですね」

「出来たてだからな

火傷するなよ」

「そこまで子供じゃありませんよ!」

私がムキになって反論すると留佳先輩は苦笑している。

完全に楽しんでるね、この方は!

……そして何故か留衣が羨ましそうにこちらを見ているのが気になる。

「……」

「留衣?」

「……別に」

「?」

何故か拗ねたように顔を背け口一杯にたこ焼きを含んでいる。

思わず留佳先輩を見ると彼も私を見て静かに首をふるだけ。

どうやら留佳先輩でも妹の不可解な行動は分からないらしい。

だったら私にも分からないなと即断してから残ったたこ焼きを一つパクリと食べる。

少しだけ冷めていた。



「……私生徒会の用事があるから」

そう言って留衣は何故か不服そうな表情をする。

さっきから見せる不満げな表情にさすがに私も何かあると思うと気付く。

私が口を開く前に

「どうした?」

と、留佳先輩が口を開く。

すると何故かますます不機嫌になる留衣。

そんな留衣に驚いたように目を見開く留佳先輩。

……はっきり言うと全くわけわからない。

というより留衣がここまで留佳先輩に不機嫌になる姿は初めて見た気がする。

基本的にこの兄妹は仲が良く喧嘩なんて一方的にどちらかが相手に突っかかるだけ。

「留衣?」

「……何も、馬鹿兄貴には関係無いよ」

「関係なくない

……今日のお前おかしいぞ?

何があったんだ?」

「……じゃあ、言わせてもらうけど!」

そう言って留衣はこちらをクルリと体を回転させてから挑むように留佳先輩を睨む。

本当に珍しい光景だな~と、和やかに兄妹喧嘩を見ていると、

「なんで兄さんが音葉とずっと居るの!?」

何故か私の名前が出てきて私は目を見開く。

まさか、私が留佳先輩とずっと一緒にいたから怒っているの?

あれ?留衣って実はブラコン??

と、的外れも大概にしろと言わんばかりのことを考えていた。

すると私の右隣からため息が聞こえてくる。

留佳先輩だ。

「偶然だろ?」

「じゃあ!なんで音葉と食べ物半分個してるの!?

あれぐらいなら兄さん一人で食べれるでしょ!?」

「え?そうなの??」

思わず私は驚きながら留佳先輩を見ると彼は無表情だった。

一切変化しないポーカーフェイスに高校生の私はそれ以上言えなかった。


もし10年後の私がここにいたらこう言うだろう。

「図星?変な遠慮相変わらずするのね!」と。

だけど何度も言うけど私と留佳先輩は幼馴染みだが殆ど関わりがない。

つまり、彼のポーカーフェイスの裏なんてわかるはずもないので押し黙ってしまうのは当たり前。

黙る私とは対称的に留衣は段々怒りのあまり熱くなっている。

「大体兄さんって昔から音葉には優しかったよね?

妹の私には何も分けてくれないのに音葉には分けるなんてこと多々あったしね!」

「だったら?」

「……兄さんの考えていることは分からないけど!」

そう言って留衣は私の腕を掴む。

「“覚悟”も無いのに音葉に近づかないで!」

「!まて、留衣!

お前……!」

初めて見た留佳先輩は驚いた表情に私はかなり失礼ながらも彼が人間であることを実感していた。

それとともに私は留衣に引っ張られながらその場をあとにしていた。




着いたのは生徒会室ではなく自分達の教室。

この学校は一年生は模擬店はしなくてもよく二年生からする決まりになっている。

だから一年の校舎だけは人気がない。

響くのは私の荒い息切れと留衣の軽い息切れの音だけ。

「ふぅ……何とかまけたかな?

音葉、大丈夫?」

「な、何とか……

でもいきなりどうしたの?

留佳先輩じゃないけど今日の留衣おかしいよ?」

だいぶ息が整ってきたのに調子に乗って早口で言うとまた息切れを起こしてしまう。

もう!なんでこんなに体力ないのかな!?

「……兄さんが嫌いになりそう」

ぼそりと呟かれた言葉に私は思わず目を見開く。

西木兄妹は仲がよい。

それはだれが見てもわかることで15年近く幼馴染みをしている私が兄弟が欲しいと思うぐらい仲がいい。

でも、今の留衣は今にも泣き出しそうな辛い表情をしている。

「……兄さんって私と違って愛想良くないから友達なんて長々出来ないの

音葉は知っているでしょ?」

「まぁね」

「逆に私は愛想がいいから友達がイッパイできるの

……良くも悪くも」

留衣は自嘲気味に笑う。

だけど私は笑えない。

留衣は良くも悪くも目立つ人物で結構顔が広い。

逆に留佳先輩は普通な人なので目立たず顔は狭い。

この場合大抵の人は留衣を羨ましいと言うが留衣はそのせいで何度も嫌な目を見ている。

簡単な例は美少女だから男に好かれるけど女からは妬まれるが一番分かりやすい。

さらに頭がよく要領もいいから何でも押し付けられてしまうもあるかもしれない。

一度だけそれなりに仲のよかった女友達に裏切られた時に留衣は「音葉以外に心を開くなんて無理だわ」と、泣き笑いしながら言っていた。

「……兄さんの友達って兄さんをよく理解してくれる人達ばっかで私は兄さんが羨ましいと思った

でも、私には音葉がいるからいいやって思っていたの」

そう言って留衣は真剣な表情でこちらを見る。








人は人生の分岐点に“今”立っていることには普通気付くことなく“後”で「もしかしてあれが?」と気づくのが大概だ。

けど“この時”の私は思ったのだ。

「ねぇ、音葉

もしだよ?

兄さんが音葉を欲したらどうする?」

“今”人生の分岐点に立っていると。




まだまだ先の未来に繋がるこの分岐点。

後に私は息子にこう語る。



「あのときは迷ったけど今はあの答えは正しいと胸を張って言えるわ」



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