39「音葉さん……?」
微かな微睡みの中、私は優しく微笑みながら私を見守る留佳さんを見た気がした。
そして昔からの癖なのか私の頭を優しく撫でている。
これは息子 音樹と留衣の娘 梢ちゃんの結婚式。
絶望が終わった事を知らせる大切な儀式の話。
春の陽気に包まれる今日、私は苦笑せずにはいられない。
「音葉さん……?」
小首を傾げながら不思議そうにしているのは今日私の義娘になる最上梢ちゃん。
綺麗と言われた彼女の母親 留衣とは違いとても可愛らしい可憐な少女。
だけど今日ばかりは彼女は世界で一番美しく綺麗な花嫁だと思う。
音樹のだらしない表情が目に浮かぶ。
「にしても……梢ちゃんが音樹とね……」
世の中は分からないものだと思いながら頷く。
あらゆる意味で中の中な息子とあらゆる意味で完璧な義娘。
……不釣り合いね。
盛大にため息をついてからちらりと後ろを振り返る。
180㎝超えの長身の青年が男泣きをしている。
端正な顔を歪ませてみっともなく泣く姿ははっきり言ってみっともない。
(大事なので二回言いました)
「あ、姉貴!
すっげぇ綺麗だ!!」
「ふふ、ありがとう 桐」
「…だけど、良かったのか?
姉貴なら子育てしながらでも大学は卒業出来るだろ?」
桐くんの言葉に心臓が嫌な音をたてる。
そう、梢ちゃんは本来大学2回生で彼女の驚異的な頭脳なら大学おろか大学院まで首席で卒業できる。
だけど馬鹿息子が彼女に新たな命を与えてしまい梢ちゃんは退学を選んだ。
……そのときに父親に似たのだと思ったのはここだけの話。
勿論、シスコンな桐くんは音樹に殴りかかる勢いで怒鳴ったが梢ちゃんが止めた。
彼女が退学を決意した時のことはいまでも忘れられないし私にも責任があるように思う。
改めて桐くんに聞かれた梢ちゃんはきょとんとしてからくすりと笑う。
「確かに出来るよ」
「だったら……「でもね?」
「子育ては中途半端にしたくないの
音樹くんとの子供なんだから私のもてるかぎりの愛情で育てて上げたいの」
「姉貴……」
「別に大学に通いたいわけじゃないしね」
そう言っておどける梢ちゃん。
だけど表情は母親の自覚が芽生えているのか凄く優しい。
「……(留衣、貴女の子供は貴女とは違う道に進むみたいよ?)」




