37「そのあとどうしたと思う?」
「母は強しとは本当だな……」
そう言って優しく微笑む留佳先輩……いや、留佳さんは父親の顔つきだということは私だけの秘密。
これは留衣が消えてしまう6ヶ月前の話。
高校卒業後、一般企業に就職しようたした私を待ち構えていたのはアメリカの大学に通う留佳さんの強引な渡米だった。
……色々ツッコみたかったよ?
でも、余裕なさげな留佳さんを見ると思わず押し黙ってしまった。
渡米した先でお父さんからのエアメールが大量にやってきて一部屋が埋まったのは頭が痛いことかもしれない。
後で知ったけどお父さんとこの渡米には一枚噛んでいたようだ。
の割には早く帰ってこい内容が多いのは矛盾していない?
渡米して就職先のアメリカ支部で働くことになった……けど、20歳で退職“させられた”。
理由は『寿退職』。
……そう、まだ20歳だというのに強引な留佳さんの策略により結婚をしたのだ!
若すぎるっていう抵抗も無視されたのは今でも忘れはしない……。
そのあとどうしたと思う?
まだ学生な留佳さんの「世界中を見て回るか」という一言により様々な国に留学しに行ったの!
留佳さんが卒業する年までね。
本気で疲れたよ……。
医者免許を取った留佳さんだけど卒業後は日本の一般企業に就職。
いままでのハードスケジュールは何!?と、思うぐらい平凡な生活を日々送っている。
そして、最近身体の怠さに気付き月ものも遅れていたので病院に行くと……。
「おめでとうございます
妊娠4ヶ月ですね」
「……は?」
「随分元気な赤ちゃんですよ」
「……」
満面の笑みの女医さんに現実離れしたことを言われ放心状態に。
勿論留佳さんにも言ったよ。
いつもは無表情な彼が優しげに微笑んだのを見てようやく現実感がしたのは仕方がないことかもしれない。
妊娠が発覚してから近所に住む沙耶さんは日中はいつも私の側に居てくれる。
申し訳なさで胸がいっぱいだけど沙耶さんは満面の笑みを浮かべている。
「孫は半ば諦めていた分よけいに嬉しいわ!」
「……(まだ子供達が20代なのに諦めていたんだ)」
少し沙耶さんに同情してしまったのは私の心の中にしまっておこう。
沙耶さん以上に熱心なのは私のお父さん 柊真也だ。
少し離れた場所でお祖父ちゃん達と暮らしているお父さんは毎週土曜日だけ朝からやって来る。
「早苗さんに似た女の子がいいな
留佳くんに似た子供だったら殺意を抱きそうだし……」
「子供に殺意を抱くな!!」
少し腹黒なお父さんだけどこの後、音樹が産まれる前年に亡くなってしまうのはもう少し先の未来。
新編であり最終編です。




