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平均な兄、天才な妹  作者: 夜桜
絶望の予告編
34/40

34「……飛躍しすぎじゃありませんか?」







深くにあった意識が浮上するのを感じ目を開ける。

ぼやけた視界の中でももう辺りが暗くなっているのがわかり反射的に夜だと理解する。

慌てて起き上がり自室を出てリビングに向かう。


「ーーー!!」

「ーーー」

「ーーーー!」

「ー、ーー」


「(?)」

リビングから騒がしい音が聞こえ思わず足を止めてしまう。

そのままそろり、そろりと音を立てずに摺り足で移動。

ちょっとだけ忍者気分!

昔よく留衣とこんなことをしてたっけ。

少し童心に戻っていた私だけど……



「いい加減に子離れしてください」

いつもより不機嫌な留佳先輩の声と、


「留佳くんこそ娘に執着するのをやめてくれないかな?」

どこか黒さを含むお父さんの声に、



一瞬で現実に戻された。

足を止め廊下で息を潜めながら耳だけに集中する。

先に耳に届いたのは留佳先輩のため息。

どこか疲れぎみのよう。

「何故、音葉に会わせてくれないのですか?」

「だって怒らしたの君でしょ?

あの子今にも泣きそうな表情で殺気だたっていたよ」

どんな表情!?と自分のことなのに思わずツッコみそうになり慌てて自分の口を手で塞ぐ。

我ながら器用な表情だと思いながら。

「第一あの子に何も説明していない君に非があるよね?

出し渋ること?」

「……簡単に言えることではないでしょう」

「うん、言ったら僕は君を社会的に抹殺しそうだ」

にこやかに言うようなことですか!!?と頭の中でツッコんでおく。

あの人私のお父さんだよね?

あんなに腹黒い人だった??

いやいや、そんな事よりも留佳先輩は私に何かを言おうとしてた?

社会的に抹殺されてもおかしいことを?

二人の会話を聞いて頭が混乱し始めている。

そんな私にお父さんは止めの一言。

「でも、ま……





海外に行くってことは言えるよね?」






……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

たっぷり四拍置いてから私の頭に出てきたのはそんな言葉。

色々言いたいことはあるけどさすがに精神的に限界だったのか私はその場に崩れるように座り込む。

当たり前だけどその音は静かな廊下に響き二人にも聞こえたのか二人ともこちらを見て目を丸くしている。

私がいるとは思わなかったのか留佳先輩は驚きを顕にしてお父さんは気間ずそうに視線を反らす。

無音の沈黙。

それを破ったのは留佳先輩だった。

彼は私の手首を握りお父さんの方を見る。

「……時間を下さい」

「……」

「真也さんには音葉の傍に居続けれません」

「……痛いとこついてくれるね」

「事実です」

そう言って留佳先輩は私を立たせてそのまま腕を引っ張り家から外へと向かう。

その手は冷たいのに心は温かくなる体温だった。




留佳先輩に連れられやって来たのは近くの公園のベンチ。

留佳先輩に促され私はベンチに座った彼の隣に腰をおろす。

辺りは真っ暗で静か。

少しその状況に恐怖を抱きながら私はチラリと隣を見る。

「……真也さんが言っていたことは本当だ」

唐突に前ふりもなく話されたのはおそらく先程の続き。

留佳先輩は私を見るのではなく夜空を見上げながら話している。

「来年度にはアメリカに留学予定だ」

「……医者になるのでは?」

「向こうの方で受ける」

さらりと答えられ一瞬目を丸くするがすぐに彼も妹ほどではないが頭がいいことを思い出す。

おそらく留佳先輩のこと。

留学のことは早い段階から決まっていたに違いない。

お父さんが知っていたのはおそらく総一さんか沙耶さんに聞いたからだ。

……そして妹である留衣は知っているはず。

「……なんで……言ってくれなかったのですか……?」

「……」

「私だけですよね……?

他の人達は知って……?」

「……ああ」

どこか強ばった留佳先輩の肯定に私は“何故か”目の前が真っ暗になる。

悲しいと言うよりは苦しい気持ちが胸の中をしめる。

思わず私は留佳先輩から視線をそらしてしまう。

「……私だけが……考えていたの…?」

「俺の方が考えていたさ!!」

「!?」

私の呟きが聞こえていたのも驚いたが普段無口で淡々と話す留佳先輩が怒鳴ったことにもっと驚いてしまう。

少し怖いと思いながら後ずさるけど留佳先輩は気づくことなく苛立ち半分で話す。

「“私だけ”だと?

ふざけるな!音葉よりも俺の方が音葉のことをかんがえていたし、何度アメリカ行きを話そうと思ったことか!

だけと言えば自分が抑えられなくなるしお前ごと向こうに連れていきかねないし……!!」

「抑えれなくなる……?」

「ああ、そうだ!!

誘拐された時だってどれだけ心配……いや、失うのを恐れたか

!!

なのに本人はのほほんとしているし……!」

「な!?

それは関係無いじゃないの!!」

「はあ!?」

「大体!留佳先輩は肝心なこと何一つ言ってくれないよね!!

いつも本音は隠すし!!」

「俺は本音を隠していない!!」

「嘘つき!!

今だって何でアメリカ行きを隠していたのか話してくれないじゃない!!」

力任せに怒鳴ると同時になんで言い争っているのか分からずそれに対する虚しさが込み上げてくる。

涙腺が弛むのを感じて思わず俯く。

「嘘つき……何も言わないくせに……」

「……だったら言ってやる」

なんて傲慢な言葉!

それに苛ついて思わず留佳先輩を睨む。

……けど、苛つく私とは違い留佳先輩は優しげに微笑んでいる。








「好きだ」

珍しい留佳先輩の微笑みと無口な彼からは信じられないぐらい優しい声音で私は驚きのあまり思考回路が停止。

固まる私とは逆に妙にすっきりとした表情の留佳先輩。

「一応言っておくが幼なじみとしてではなく男女関係の“好きだ”」

「……私に……どうしろと……?」

「結婚してくれ」

かなりの問題発言に私の脳ミソは考えることを放棄したようだ。

度重なる驚きの事実を前にしたら人の脳は許容量を超えて停止することを学んだよ。

とりあえず一言だけは言っておかないと!

「……飛躍しすぎじゃありませんか?」

「勿論恋人から始めるが最終的にはどんな手を使ってでも嫁にする」

「…………」

「独占欲は強い方だ」

そう言う彼は今まで見たことのない傲慢で自信家な悪い笑みを浮かべている。

さとった、逃げられないと……。






関係が決定的に変わったと言うよりは、

強制的に後々の人生が決定したと今なら言える。




そして、後の悲劇の“始まり”がやってくる。



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