32「おかえり、音葉」
ながーーーーーーーーーーい、調書が終わり警察署から出ると一瞬、留佳先輩と留衣を目視。
そして瞬きをしたときには暖かい何かに包まれていた。
あまりにも瞬間的なことで誰か理解するまで時間がかかったけど分かる。
震える声音で彼を呼ぶ。
「留佳……先輩……?」
「ああ……おかえり、音葉」
抱き締められたままだから分からないけど抱擁をさらに力強くなり私はその暖かさに身を委ねたまま意識をとばす。
そう言えばあまり休めていなかったと頭の片隅で思いながら。
腕の中でぐったりとしている音葉。
一瞬だけ驚いたが規則正しい呼吸音が聞こえるところによるとどうやら寝ているだけのようだ。
仕方がない。
誘拐された上に監禁され、普通に暮らしていた音葉には精神に負担がかかるだろう。
……思い出しただけでも如月真夏を殴りたくなる。
「音葉寝てるの?」
「……ああ」
後ろから留衣がやって来て俺の腕の中で寝ている音葉に視線を向ける。
久しぶりにあえた親友に留衣は苦しさと嬉しさが入り交じった表情で見ている。
「……結局、こうなるのね」
「留衣?」
「……」
何やら小さく呟いた留衣。
よく聞こえなくて聞き返すと彼女は苦笑するだけ。
「早く音葉を連れて帰ろ!」
「?あ、ああ」
俺に一声かけると留衣はその場から早足で立ち去る。
音葉と俺を置いて。
少し違和感を覚えるがこんなところで音葉を置いておくのには暑すぎると思い立ち横抱きにして父さんが運転する車のもとへ向かう。
これにて“如月編”終了です。
次回は予告しておりましたとおり「天才な姉、万能な弟」の本当の始まりです。




