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平均な兄、天才な妹  作者: 夜桜
如月編
31/40

31「ええ、元凶たちです」





私の知っている限りお父さんが怒ったことなんてほとんどみたことはない。

だけど怒るのを通りすぎてお母さんにナンパしてきた男にキレたのはみたことある。

満面の笑みと共に行われるのは相手の逃げ道を防ぎながら徹底的に叩き潰す。

……精神的にね。








私を助けるついでに如月家を潰しにきたというお父さんは頼りになるを通りすぎて恐ろしい。

満面の笑みのお父さんの後ろからひょっこりと出てきた大柄なスーツな男の人。

「彼らが?」

「ええ、元凶たちです」

「わかりました」

お父さんと男性は二人で納得したように頷く。

男性はお父さんの前に立ち胸元から1枚の紙を出す。

その紙を見た八千代さまは目を丸くしわなわなと震える。

そしてお父さんを睨み付ける。

「貴様!我々を裏切るのか!!?」

「裏切るね……

最初に僕を見捨てたのはそちらです

それだけなら僕だってここまでしませんよ」

そう言ってお父さんは心底この状況を楽しんでいるのか満面の笑みを浮かべている。

駄目だ、まともな人がいないよ!!

てか紙に何が書いてあるの!?

そんな私の心の叫びが届いたのかは知らないけどお父さんがにこやかにそして和やかに答える。

「ただの逮捕状だよ」

「何が“ただの”なの!?

一体私がいない間に何があったの!?」

「むしろ音葉が居なくなったからこうなったんだけどね」

とのこと。

苦笑しながら言うお父さんだけど私にはさっぱり現状が理解出来ていない。

よくみると真夏さんもぽかんとしている。

ただ一人八千代さまだけは険しい表情でお父さんを睨んでいる。

「そんなに睨んでも無駄ですよ

警察から家宅捜索が入りますし……早苗さんの轢き逃げ犯だって捕まります」

「なっ!?」

「知らないとでも?

早苗さんを殺すように仕向けたのは貴女でしょう」

お父さんの言葉に私は驚くけどそれよりもどんなことでも笑顔を浮かべるお父さんの表情から笑顔が消えたことに驚いてしまう。

お父さんは無表情のまま言葉を続ける。

「僕だけの仕打ちなら無視してきましたよ

ですが早苗さんを殺してさらに音葉まで誘拐されたら……

僕だって黙ってはいられません

それに音葉を誘拐したと言うことは西木家の方々がかなりご立腹ですよ?」

「お前……!」

「こんな古びた家系など壊れてしまえばいい」

ぞくりとする冷たい声音。

それは八千代さまと真夏さんを絶望に貶めるのには充分すぎた。







その後、家宅捜索に入った警察の手によりお母さんを殺した実行犯が捕まっただけでなく今までやって来た後ろ暗いことまでバレてしまう。

一応調書を取りたいと言われ警察にやって来ると廊下で真夏さんと出会う。

彼はどことなく疲れた様子でため息をつく。

「……やはり貴女が憎いですよ」

「?」

「私は両親から愛された事もなければ友人がいたこともない

曾祖母さまからは可愛がって頂いても結局は次期当主としてだけ

……だれ一人“如月真夏”を愛してくれなかった」

「……」

「同じ如月の血を引くのに貴女は家族や友人から愛されている

……それが憎いまでに羨ましい」

そう言って彼は哀しげに微笑む。

次期当主として周りからちやほやされたけど本当の意味では彼は愛されなかったのかもしれない。

彼が異常な迄に私を憎むのは同じ如月の血を引くのに私は家族から愛されているからなのかもしれない。

“如月家次期当主”として望まれ愛された彼と“一般人”として家族に愛された私。

私は去っていく従兄の背中を見て思った。

「……元気でね」




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