27「腹立たしいまでに母君に似たようですね」
目が覚めて手錠が邪魔だなと思い始めた時にあの人はやってきた。
「お目覚めですか?音葉さん」
「……如月真夏さん」
にこやかに微笑む真夏さんはかなり怖い。
目が笑っていない上に私にたいして隠そうともしない憎しみで溢れている。
彼が言うに私たちは従兄弟らしい。
だからと言って誘拐は犯罪。
負けじと睨み付ける。
「……さっさと帰らせていただけませんか?」
「無理ですよ
貴女は僕の婚約者なのですからね」
「…そんなものにはなった覚えはありませんが?」
「貴女が産まれた瞬間から決まっています」
さらりと当然のことのように言われて一瞬反応できなくなってしまう。
反応出来たときには彼の後ろに小柄な誰かがたっているのに気づく。
視線をそちらにやるとどことなく真夏さんによくにた雰囲気のお祖母さんが立っている。
着物をしっかりと着こなし背筋がピシッと伸びている姿は少し近寄りがたい。
「真夏さん、彼女が?」
「はい、曾祖母様
彼女が柊音葉ですよ」
「そう……」
一言、つぶやくと女性は真夏さんを押し退け私の隣に正座する。
あまりにも洗練された美しい動きに目をみはるだけ。
だけどここまで近付かれたら分かる。
彼女の全身から私に対する嫌悪感が放たれている。
真夏さんとは比にもならないくらい。
思わず身体を震わせると真夏さんはにこりと微笑む。
「そう言えば紹介がまだでしたね
こちらの方は二代前の当主 如月八千代さま
僕らの曾祖母にあたる方ですよ」
「ひい……おばあさん……?」
思わず女性をガン見してしまう。
とてもではないが桜お祖母ちゃんよりも年上には見えないしまだ背筋が真っ直ぐなので50代そこらしか見えない。
だけど、瞳の冷酷な色は修羅場と言うべきか荒事を潜り抜けてきた強者の瞳だ。
八千代さまと呼ばれた私の曾祖母は私を見てから眉間のシワを深くする。
「腹立たしいまでに母君に似たようですね」
「……?」
「ですがよくよくみると雌狐にそっくりで……
真夏さんが可哀想」
「……」
……えーっと、私はどう反応したらいいのかな?
なんだか八千代さまは真夏さんにひどくそれこそ大袈裟に同情していて着物の裾かな?で顔を隠している。
全力でツッコみたいな。
今可哀想なのは家族から引き離された挙げ句、手錠を両手両足にされて自由を奪われている私では??
声には出さないけど顔にはそんな思いが出ていたのか不意に八千代さまは手を振り上げ、
パチン
私の頬を叩く。
自分のことなのに何が起こったのか分からず私は呆然としていて頬が熱を帯はじめてようやく叩かれたことが分かった。
見ると八千代さまの後ろで待機している真夏さんも目を丸くして驚いている。
呆然とする私、驚く真夏さんに気づかないのか八千代さまは無表情に私を見つめる。
「貴女が産まれなければ真夏さんには分家の娘を授けたと言うのに!
腹立たしいことに貴女が真夏さんの次に近い如月家の直系です!
真也さんの娘たる貴女には見に余ること
光栄に思いなさい!」
「……」
その一言ですべてを理解してしまう自分の頭に涙が出てきそうになる。
ああ、分かった。
この人は私に用があったんじゃないし私が欲しいわけじゃない。
私の“血統”が欲しいのだ。
それは真夏さんも一緒なのか私を冷たい目で見ている。




