21「……そうですか」
「音葉さん、これはどうすればいいのでしょう?」
「それはそっちになおしてください」
「わかりました」
爽やかに微笑んでから如月さんは私が言った棚になおしてくれる。
主に私が届かない背の高いところばかり直してもらって申し訳無さすぎる。
それを言うと先程と同じように爽やかな笑みで「気にしないでください」と言われてしまうから何も言えなくなってしまう。
誰か本気でツッコんでくれました?
何で如月さんと二人で和やかに片付けをしているのか。
答えは至って簡単。
今日私と如月さんが日直だからだ。
うちのクラスの日直はくじ引きで決まるのでたまたま如月さんとで現在日直の仕事で放課後の教室の片付けをしています。
「音葉さんは本当に面倒見がいいですね
長女ですか?」
「そうですけど、一人っ子です
面倒見がいいのは留衣のせいですよ」
「西木さんとなかがいいですよね」
「幼なじみですから」
そう答える私の笑みはどこかひきつっていたかもしれない。
それほどまで私自身この状況にかなりの違和感を感じているのだ。
初めて会った時、そして何故かお母さんの墓場で会った時。
私は彼に憎しみを籠めた視線で微笑まれ背筋が凍る思いを何度もしたはず。
だけど今の彼からは憎しみおろかむしろ親愛を籠めて微笑まれている。
戸惑うなと言うほうが絶対無理!
心のそこから助けを求めている私がいることに私が気づく。
とりあえず思ったのがさっさと仕事を終らせるということ!
如月さんも早く帰りたいのか私に分からないことはよく聞いてくれるのであとは黒板を拭いたら終わり。
これぐらいなら私一人でも出来るので彼に声をかける。
「如月さん、もう黒板を拭くだけなので先に帰っていてください」
「ですが女性を一人にするわけには……」
「留佳先輩……留衣のお兄さんが迎えに来てくれるので大丈夫です」
そう言って安心させるように微笑むと……
ゾクリ
背筋が凍る。
徐々に顔が青ざめるのが自分でも分かってしまう。
「……そうですか」
どことなく冷たい声音で声をかけられ私は体が固まってしまう。
見ると如月さんが微笑んでいるがどこか憎しみと苛立ちを混ぜた瞳でこちらを見てくる。
私の苦手な表情に声もでない。
だけど彼は先ほどの幻かのように消し去り微笑む。
女の子が見とれる笑みだけど今の私にはただの恐怖。
「ではお先に失礼します
西木留佳さんに“よろしく”とお伝え下さい」
「……」
彼の言葉に辛うじて頷くだけで何も言えない。
にこりと笑ってから鞄を持ち彼が教室から去ると私は黒板に力なく凭れる。
自分でも分かるぐらい血の気が引いている。
「っ~、何なの……あれは……」
あ、泣きそうだよ。
私を憎む彼の心情。
「……留佳先輩……」
唯一私が弱音を吐ける人は今はいない。




