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平均な兄、天才な妹  作者: 夜桜
如月編
18/40

18「音葉ー、くっついたよ!」




あの夜の食事、私が転校生の名前を言えば皆固まってしまった。

お父さん、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんだけでなく留佳先輩までも。

私がどうしたのかと聞けばお父さんは「何でもないよ、ただ昔聞いた名前だから驚いただけ」と言って誤魔化す。

そのあとは留佳先輩を家の外まで送ると「気を付けろ」と言われてしまう。

何もかもが分からないのにそんなこと出来るはずがないのに私は頷いてしまう。

だって、留佳先輩が見たこともないぐらい心配そうな表情をしていたから……。







5月末、5限目の家庭科の時間。

私は留衣に教えながらも自分の課題を着実にこなしている。

眉目秀麗な留衣だけど何故か家庭科は平均以下で不器用。

機械音痴でもないのにミシンが扱えないらしい。

今だって……

「音葉ー、くっついたよ!」

「なんでスカートに縫い付けるかな!?」

今時誰もやらないであろうミスばかりしている。

ため息をつくなってほうが無理でしょう!

クラスの子達も天才の意外な姿を見て口許をひきつらせているよ!?

「なんでくっつくのよ!」

「ミシンにキレるな!!」

「……お二人は仲がいいのですね」

漫才みたいになっている私達に遠慮がちに会話に加わるのは転校生の如月真夏さん。

彼はあきれた表情ではなく穏やかに微笑んでいる。

「音葉さん……と、お呼びしてもいいですか?」

「え……う、うん」

「ありがとうございます

音葉さんは西木さんの母上のようですね」

にこりと女性受けしそうな笑みを浮かべる如月さん。

はっきり言おう。

こんな娘はいらない!

16年来の幼なじみだけどいまだ留衣のことを理解している自信なんてない。

正直、これから先理解したいと思うことはないと断言できる。

私が如月さんに対して苦笑していると留衣が彼を睨み付けるように見ているのに気づく。

良くも悪くも愛想の良い留衣にしては珍しい。

「如月真夏さん、一体何の用かしら?」

喧嘩腰で問う留衣だけど他の人から見たら美少女が美しく微笑んでいるようにしか見えないだろう。

現に周りのクラスの子達の何人かは頬を赤く染めている。

……頭が痛い。

何故かは分からないけどどうやら留衣は転校生が気にくわないようだ。

私が盛大にため息をつきたいのを我慢していると如月さんはにこりと微笑む。

どこからともなく悲鳴が聞こえたのは気のせいなはず。

「何の用とは

ただお二人とお話したかっただけですよ?」

「だから自己紹介もしてないのに私達の名前を把握していたのね……

流石、如月家の御曹司ね」

「家は関係ありませんよ」

「……」

にこやかに和やかに(表面上は)会話する二人。

周りは見目麗しい男女に蕩けているけど私はもう関わりたくないので課題を進め始めている。

夏が近づくいているのか扇風機の風が顔にあたる。




放課後、今日は珍しく一人で自転車をこいでいる。

留衣は生徒会で留佳先輩は委員会の当番で遅くなるらしい。

ここ最近は留佳先輩がずっと傍にいてくれたから独りなのはどこか寂しく感じる。

今住んでいるのは学校までは自転車で約40分のお祖父ちゃんの家。

40分間独りなのは本当に初めてかもしれない。

少し寂しいと思うのは気のせいじゃなかも。

留佳先輩と一緒に通るこの道は凄く短く感じるのに今は長く感じる。

どれだけ留佳先輩と一緒にいたか分かり私は苦笑しながら自転車をこぐ。



「あれが“柊音葉”ね」

「はい、真也叔父上と柊早苗の唯一の子供です」

「……そう」



物陰に車を潜ませ、私を見ている二人に気づくことなくこぎ続ける。


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