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平均な兄、天才な妹  作者: 夜桜
日常編
14/40

14「貴女は私と真也くんの“唯一”」




“嵐の前の静けさ”なんて言葉なんてあるけど私は実際はないと思う。












『じゃあ、明日には帰るね』

「うん、無茶しないでね?」

『んーそれは早苗さんに言わないと分からないね』

そう言ってお父さんは受話器越しでクスクスと笑っている。

体調がいいのか始終笑っているお父さんに私もようやく安心できる。

物心ついたころから病弱なお父さん。

聞いた話によると子供さえ諦めないといけないぐらい運動も出来ないのでお母さんは最初子供のことは諦めていたらしい。

だけどお父さんが子供が欲しかったらしく医者の許可できる限度で子作りをした結果私が産まれたようだ。

『音葉も無茶したら駄目だよ?』

「わかってる」

『真也くん!変わってよ!!』

『ちょっ!早苗さん!?』

受話器の向こう側で何やら言い争い(?)を繰り広げられ時折『げふっ』と言うお父さんの声が聞こえてくる。

『音葉?』

「……お母さん、病み上がりの人に何をしたの?」

『ちょっと寝てもらっただけよ』

さらりと何とでもとれる言葉を少女のような高いテンションで言ってしまう。

少し頭痛がしたけど平常運転なお母さんに少し安心してからため息をつく。

「どうかしたの?」

『ちょっと、何でそんなにしんどそうな声出すの!?

お母さんじゃ嬉しく無いわけ!?』

「夜の10時に他人の家に電話してきて大越を出す母親がいるのがおかしい!」

『まだ10時じゃない!』

「子供は寝る時間!!」

「音葉?」

思わず大声でツッコんでしまうと背中から声をかけられる。

慌てて振り返るとポカンとしている留佳先輩がたっている。

おそらく私が大声を出したのが珍しいのだろう。

留衣ならともかく留佳先輩に見られたのはさすがに恥ずかしかったので思わず真っ赤になってしまい顔が熱い。

『音葉?どうしたの?』

「……お母さんの馬鹿」

『何で私のせいなのよ

ま、いいや』

良くない!と大声でツッコみたいけどまだ留佳先輩にジーっと見られてしまって何も言えない。

娘が黙っていることに何を感じたのか受話器越しのお母さんはクスクスと笑ってから用件を言う。

『明日お母さんは少し用事あるから真也くんよろしくね?』

「わかってるよ」

『……貴女は私と真也くんを繋げる“唯一”なの』

「?」

『……約束して

一人で抱え込まないって』

「!?」

お母さんらしからぬ悲痛な声音は私は目を見開く。

あまりにも柊早苗らしからぬお母さんらしい言葉。

私は驚きのあまり身体だけでなく思考回路も凍結してしまう。

だけど“こう”言わないとお母さんは安心しない。

反射的にそう思った私は口をあける。

「うん……“わかってるよ”お母さん」

『……留佳くんいる?』

「え?あ、うん」

『かわってもらって』

娘の答えには答えず私はお母さんに言われた通り留佳先輩に渡す。

留佳先輩は少し怪訝な表情をしながらも素直にお母さんの電話に応じてくれる。

しばらくお母さんと留佳先輩の会話が続く。

会話が全く聞こえないけど時折無表情な留佳先輩の顔に驚き、悲しみそして笑顔が続々と現れて新鮮な気持ちで見ていた。

普通にカッコいい容姿をしている留佳先輩。

こんなの密かに存在するファンクラブがここにいたら発狂ものだろうな、と場違いなことを考えているとふと留佳先輩と目があう。

反らすタイミングを逃した私はそのまま留佳先輩を見ていると深い漆黒の瞳が私を貫く。

その瞳には優しく暖かな光が宿っている。

「……わかりました

俺が責任を持ちます

……はい、今変わります」

そう言って留佳先輩は私に受話器を渡す。

私は恐る恐る受け取り電話に出る。

『貴女は私と真也くんの“唯一”

こんな母親だけど貴女の幸せは一番に願っているからね』

「……急にどうかした?」

『ん?

別に言いたくなっただけ』

そう言って親父顔負けのゲラゲラ笑いをするお母さん。

訳のわからないことだけどとりあえず「ありがとう」と言うとお母さんが受話器越しに微笑んだ気がした。



受話器を置くと少し寒さが増した気がし思わず振り返ると先ほどまでいた留佳先輩は部屋に戻ったのかいなかった。

少し寂しく感じながらも暗い廊下を一人で歩いていく。

そのまま部屋にたどり着くと布団にダイブしてしまうとすぐに寝てしまい朝まで起きることはなかった。







バタバタバタバタ バン

激しい足音とともに扉が力一杯開く音で私は目が覚める。

よく寝たお陰か頭が冴えている。

時計は朝9時で思ったより寝てしまっていた。

「音葉ちゃん……」

弱々しい声音でようやく扉の方へ顔を向けると今にも泣き出しそうな表情の沙耶さんがこちらを見ている。

いつもの明るさが一切なく私は怪訝な表情を浮かべていたと思う。

沙耶さんは自身を落ち着け言い聞かせるような言う。

「音葉ちゃん……早苗が……








お母さんが今朝亡くなったって電話が……!」






あまりにも現実離れした言葉に私は何も言えず、失礼ながらもお父さんじゃないのかと思ってしまった。


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