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平均な兄、天才な妹  作者: 夜桜
日常編
13/40

13「むしろ楽しく充実していた」





「留佳先輩みたいなお兄さんほしいです」と言われた時自分でも動揺してしまうぐらい気持ちが沈んだのが分かる。

妹なんて留衣だけで十分だというのは本音だが、彼女の“兄”には絶対になりたくないと心の底から思う。






音葉が我が家に滞在してから10日経ち彼女は久しぶりに両親に会いに早苗さんの実家に向かった。

何度も我が家に止まりに来ている音葉だがここまでの長期間は初めてだ。

久しぶりに音葉のいない家でゆっくりしていると何故かそわそわしてしまう。

「……暇だ」

あまりの暇さに読書もやめてしまう。

この10日間は何かと音葉が話しかけてくれたり一緒に勉強したりしていたから暇ではなかった。

むしろ楽しく充実していた。

なのに彼女一人いないだけでこの有り様。

……留衣に見られたら笑われるのは必須だが幸いにも母さんと一緒に音葉を早苗さんのもとまで送り届けている。

つまり家には俺と父さんしかいない。

「暇だな」

「……」

その父さんは今リビングのソファーで寝転がっている。

ちなみに俺は向かえのソファーに座っている。

もう45才なのにまだまだ若々しいもとい幼い父さんを見ていると父さんよりも年下な真也さんが凄く大人っぽくみえてしまう。

「……そう言えば父さんは真也さんと仲良かったな」

「まあね

俺と真也くんは従兄弟だから自然と話すことが多かったよ」

さらりとかなり衝撃的な事実を言われてしまう。

まさか真也さんと父さんが従兄弟だったとは思わなかった。

それが顔に出ていたのか父さんは苦笑してから話を続ける。

「従兄弟と言っても俺は普通の人間だけど真也くんは華道の名門“如月家”の次男だからな

母親同士が姉妹なだけで俺は親父似、真也くんは母親似だから分からないのは当然だ」

「……真也さんって婿養子で入ったのか?」

「どちらかというと駆け落ちだな」

物凄く現実離れした言葉が聞こえてきた。

俺が唖然としているのに対して父さんはどこか納得したように頷いている。

平成になったこのご時世にまさか“駆け落ち”何て言う言葉を聞くことになるとは思わなかった。

そして思った。

音葉はこの事を知っているのかと。

だけど父さんは俺の考えを打ち消す。

「知らないさ

知ってたらあそこまで真っ直ぐに育たない」

「そこまで酷いのか?」

「あそこは異常だからな……

お袋も嫁いだ姉さんをよく心配してた」

遠い目をして過去を思い出そうとする父さん。

父さんのお母さん、つまり俺の祖母はまだ存命だ。

だから父さんの過去形の言葉に俺は息を飲むだけで実際には聞かなかった。

「……次男ってことはお兄さんが?」

「いるぞ

病弱な弟とは違って健康優良児がな

そのせいで真也くんは実家では役立たずって言われてたしな」

「柊家は真也さんがいないと回らない気がする」

「同感」

それっきり俺と父さんは話すことなくそれぞれ好きなことをしていた。




その日の夕方に留衣達は帰ってきた。

久しぶりに両親に会えたのが嬉しいのか音葉は普段よりも明るく晴れやかに笑っている。

そんな音葉の様子に俺だけでなく家族全員がホッとしている。

身内同然で接してきた母さんは可愛いげのない留衣とは違い可愛らしく素直な音葉を溺愛しているし、親友である留衣は音葉が大好きで仕方がないと全身で表現している。

俺も音葉が嬉しそうに笑っているのは嬉しい。

「順調に行けば明後日にでも退院できるそうよ」

「そりゃ良かった!

またいつでも遊びに来るといい」

「あ、ありがとうございます」

「いっそうのこと我が家で暮らせばいいのに……」

「留衣はしつこいね」

「え!?」

うんざりとした風に言う音葉に留衣は慌てて彼女のご機嫌取りを開始。

微笑ましい二人の状況に両親はにこやかに見守っているが俺一人だけ留衣に苛立ちを覚えている。

同時に“何故か”羨ましいと思っている。

「……(等々おかしくなったか?)」

幼なじみと妹がじゃれあっていても以前は何も思わなかったのに最近では妹に苛立っている。

幼いときからの光景だと言うのにだ。

思わずため息をつくと音葉がキョトンとした表情で、留衣が忌々しげな表情で俺を見てくる。

音葉の表情はともかく実の妹にあのような表情をされたら流石に心が痛いのだが。

「どうかしましたか?留佳先輩」

「いや、大丈夫」

「ほっといていいよ、音葉

どうせ自分の気持ちが分からないことに対するため息だから」

「……実のお兄さんに対してそれはどうなの?」

「いいのよ」

そう言って留衣は俺を一睨みしてからリビングから去る。

その瞳はどこまでも悲しげで苦しそうなだけに俺は何も言えなかった。

音葉も怪訝な表情をしながら留衣の後を追う。

急に消えた暖かな存在に“何故か”物足りなさを感じ眉間にシワを寄せるとクスクスと笑う声が聞こえてくる。

母さんだ。

「留佳も留衣も音葉ちゃんが好きなのね」

「は?」

「留衣も留佳に音葉が取られると思って警戒しているのは笑えるな」

「……」

両親の訳のわからない会話に俺は目を丸くするだけで何も言えなかった。




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