11「「西木家に滞在だよ……」」
母の実家に帰ってきてから一週間も立てば年があける。
明けたと同時にやって来るのは重く辛い出来事の連続だった。
すっかり元気になったお父さんだけどお祖父ちゃんが絶対安静を言った為に今年は家族で初詣には行けなかった。
しかも聞くところによるとしばらく旅行もしてはいけないらしい。
普段は少し子供っぽい意見を言うお母さんもお父さんのことになると真剣な表情でお祖父ちゃんの話を聞いている。
「ま、激しい運動は勿論だが一人での外出も避けるんだ
それさえ守れれば後は家の近くなら出歩いてもいい」
「ホントに!?」
「良かったわね、早苗ちゃん
真也くんも身体は大事にしてくださいよ?」
「分かりました、義父さん、義母さん
せめて音葉の成人式は見たいので忠告はしっかり守りますよ」
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんのダブルの忠告が効いたのかお父さんは少し苦笑いを浮かべながら頷く。
それを私は遠くから椅子に座ってみていた。
細かい話はよく分からないけど一先ずお父さんの容態は安定したらしい。
でもいつ急変するから分からないから冬休み後も暫くお祖父ちゃんの病院で検査を受けるようだ。
「音ちゃんはどうします?
ここからでは少々学校は遠いでしょ」
「大丈夫
早起きは得意だからここから通うよ」
「え!?」
「へ!?」
私の言葉にほぼ同じに反応したのは両親だった。
何故か驚いている。
「……嫌な予感がするけどあえて聞くね?
私もここにしばらく滞在するよね?」
「そ、それは……」
「総一さんに音葉のことを頼んだんだけど……」
「「西木家に滞在だよ……」」
「そう言うことは先に本人に言いなさい!!」
おもいっきり嫌な予感があたり私は半ばやけくそに自分の里芋の煮付けを口に入れた
流石お祖母ちゃん、美味しいよ!
「早苗ちゃん……」
「お前は相変わらず沙耶に迷惑を……」
「こ、今回は私が言ったんじゃなくて沙耶から提案があったの!
音葉!しばらく真也くんが入院って留衣ちゃんか留佳くんに言わなかった!?」
「そう言えば留衣にメールしたような……」
「それよ!」
「だからと言って音ちゃんの相談もなく決めてはいけませんよ」
やんわりと言っているようだがどことなく責めているお祖母ちゃんの言葉にお母さんは素直に謝る。
40才のお母さんが58才のお祖母ちゃんに頭を下げる姿は貴重かもしれない。
そんな風に現実から目を逸らしてもあまり意味がないと知りながらも。
三学期が始まる1日前に母の実家から一度自宅に戻りお泊まりの準備をする。
お父さんの入院はおよそ2週間。
その間に私は西木家にお邪魔になる。
「はあ、申し訳なさ過ぎるよ……」
いくら幼なじみの家と言っても所詮他人の家。
お祖父ちゃんの家に泊まるのとは訳が違う。
考えても仕方がないので一つため息をついてから椅子から立ち上がりお泊まりセットの入っている大きな鞄を持ち玄関へと足を向ける。
靴を履き一度振り向いてから小さく「行ってきます」と言って家から出る。
2週間後、家族三人でまた暮らせると確実とは言えない未来を頭で抱きながら。




