魔王よ……。(400)
昨日の出来事で有名になることは大変な苦労を伴う事だと少しながら理解する体験になりました。
私のようなプレイヤーでさえ苦労するのですから、伊部さんや福林さんやジャックさんのように有名なプレイヤーはもっともっと苦労をしていそうですね。
さて、誰に見られても恥ずかしくないように私も行動を心掛けしないといけませんね……。
ですが、ゲームなので楽しむ事が一番大事ですね! 迷惑な事はしない方が良いのは前提ですが、それ以上に自分が自分達が楽しめるように努力したいですね。
よし、気持ちも新たにしましたので今日も元気にゲームを楽しみますかね!
ホームに出ると、今日は全員居ますね、皆何かを飲んでいるようですね……。
室内にコーヒーの匂いがしますのでコーヒーのようですね。匂いからして豆から炒っているかもしれません。
しかし、良い匂いですね! このホームが元々喫茶店だったので雰囲気もありますし、何処と無く懐かしい気持ちになってしまいます。
「こんばんは、良い匂いですね!」
私の挨拶で皆さんが気付いて挨拶を返してくれます。
「知り合いにミラハーで取れた豆を頂いたので淹れてみました」
ほうほう、ミラハーでコーヒー豆が取れるのですね。ゲームですが色んな作物があるのですね!
ナツちゃんが炒った様ですね、調理が出来る人はこんな事も出来るのですね!
「タクさんも飲んでみますか?」
「ありがとうございます。いただきます」
ナツちゃんとミサちゃんの間に腰を降ろします。隣でナツちゃんがカップにコーヒーを入れてくれます!
「うーん、良い匂いです!」
鼻腔をくすぐる何とも表現しがたい匂いですね。少し酸味がありそうな匂いです。
個人的に酸味が強いのは好きではないですが、飲んでみないと分かりませんよね!
「うん……! 美味しいです!
豆が少し若いのですかね、酸味がありますが後味がスッキリしてますし飲みやすいです」
良い豆ですね! これならリアルでお金を出してもいいくらいです!
「良かったです。正直コーヒーは詳しくないので不味かったらどうしようかと思ってたんですよ」
さて、美味しい飲み物を飲むと考え事が捗りますよね!
今日はどうしますかね?
「さて、全員が揃ったし今日の予定を発表しまーす!」
うん、いつも元気だねリコちゃんは!
いい笑顔だし、その笑顔に私も元気になりますよ!
「多分、シナリオを確認に行くんでしょ? 丁度前と同じくらい間空いたしね」
メイちゃんが察して発言します!
「あぅ……、その通りです……。
メイちゃんに言われてしまいましたが、今日はシナリオです!」
ほうほう、もうそんなに時間が経ちましたか……。
ゲームが楽しいので日数が経っている事を忘れてしまいますね。
気持ち的には昨日の出来事のように覚えていますからね!
「さて、シナリオは動いていますかね? 私たちのシナリオって変わってますからね……」
ミサちゃんが心配するのも納得ですね。
色々と不確定な要素を含んだタグばかりですから……。
「私たちからイベントを起こすことは出来ないのかな?」
ミラさんが疑問を投げかけてきます。
確かにシナリオって普通は私たちの手でイベントを起こすのがセオリーだと思います。
「その辺はイルーさんに聞いてみないと分かりませんね……。
ですが、今までの感じからするとイベントは私たちで起こすことは無理そうですね」
そうですね、リコちゃんの言う通りだと私も思います。
「まぁ、ここで悩んでいてもどうにもなりませんし、コーヒーを飲み終えたら出かけますか」
ナツちゃんの意見に賛成です。
折角の美味しいコーヒーなのでゆっくり飲みたいです。
「慌てる事でもないですし、ゆっくりしていきましょう」
私の提案に皆納得してくれたようです。
では、気持ちに余裕を持ってシナリオ確認に行きましょう。
シナリオを確認にきたら街中が騒がしい事になっています!
何が起きているのでしょうか? あまり良い予感はしません!
私たちの為に用意されている家に向かって足早に進みます。
横を通り過ぎる住民の会話が聞こえてきます。
何でも、魔王軍が目の前まで迫っているらしい事が会話から聞き取れます。
「あまり状態としては良さそうではないわね……」
メイちゃんも住人の会話を聞いて私と同じ考えに至ったようです。
「ですね……、とりあえずイルーさんと合流しましょう!」
リコちゃんは結構冷静のようです。流石は私たちのリーダーです!
勇者ハウス(私命名)に到着すると、イルーさんが入り口前で私たちの到着を待っていたようです。
まるで、私たちが来るのを知っていたようにも見えます……。NPCなので私たちがインすると情報が
いくのでしょうかね?
「勇者の皆様お待ちしておりました。
急遽で申し訳ありませんが、魔王軍がすでに我が王都の直ぐ近くまで進軍をしております。
つきましては、お時間がありませんが城門前にて迎撃をお願いします」
うーむ、アクシデントタグのせいなのでしょうか……。
色々とイルーさんに聞きたいことは沢山ありますが、今は魔王の対処が先決ですね!
もう三回目にもなるので、自分達の配置場所は覚えています!
時間がないとのことですのでメンバー共々駆けて城門に向かいます。
相手の位置も、進軍速度も分かりませんからどれ程の時間的猶予があるか全てが未知数ですね。
城門が近づくに連れて空が暗くなっていきます、きっと雷の演出が起きるのでしょうね……。
今回はメンバーのお約束を見なくて済みそうで何よりであります!
「みんなスピードを上げて!!」
リコちゃんが指示をだしますが、多分お約束を見逃すのが嫌なのでしょうね!
そこでムキになるリコちゃんは少し可愛らしいと思ってしまいました!
「間に合って!」
必死になるところが違うよって突っ込みを入れたくなるミラさんの一言ですね。
えーっと……、皆の頑張りで何と、演出に間に合ってしまいました……。
呼吸を整えつつ皆が何故か私を見てきます……。まるで私にもするように無言で圧力をかけているようです!!
くそっ! そんなに見つめられると私もしないと駄目な気持ちになるではないですか!
仕方ないですね、こうなったら付き合って上げましょう!
覚悟を決めるとタイミングよく演出が起きます。
この演出は結構眩しいので直視すると本当に数秒ほど前が見えなくなります。さて、恥ずかしいですが私もお約束をしておきます。
「目がぁ……、目がぁ……」
ノルマは達成しましたよ! 多分私の顔は恥ずかしさで赤くなっているでしょうね……。
恥ずかしさを堪えつつ私の後ろにいるメンバーを確認すると……。
何故か皆サングラスをしているではないですか!!
「おい! 俺を騙したな!!」
タクさん何を言ってるんです? と言いたげな顔をしている皆を怒りたい気持ちに駆られます!
「え~、何のことですかぁ~?」
ちゃっかりトルンで撮影までされてます! 私の黒歴史がまた一ページ増えましたよ!
「騙したなんて心外よ! たまたまよ! たまたま!」
偶々で皆がサングラスしている事に納得できるかーい!
メイちゃん嘘を付くなら笑いながら言っちゃダメよ、ダメダメ!!
「銀河の果てまで届け~! あ、違った! 愚なる王都の住民に告ぐ!
我こそは銀河の妖精ことベルゼちゃんだぞ! キラッ!
あ、違うか! 我こそは魔族の王、ベルゼである!」
もうね……、魔王よ……。お前の台詞の何処からツッコミを入れたらいいか悩んでしまうよ……。
AIなのに何処でそんな台詞を覚えてくるのよ!!
「降伏するならば、むやみに殺したりはせぬ!
しかし、逆らうのならば血をもって分からせることになるぞ!」
今回の魔王の声は高校生くらいだろうか? かなり大人びた声になっていますね。
前回より成長していることが予想できます。
「見えてきたわ! 今回は引き連れている魔族の数が前回よりかなり増えているわ」
目の良いミラさんが相手の戦力を報告してくれます。
「数にして多分、千はいる……。
先頭を進む魔王の乗っている魔物も……」
ミラさんの報告が止まります。どうしたのでしょうか……。
「どうしましたか?」
「多分、地竜……。
前に乗ってたトカゲみたいなモンスターも地竜の一種だったんだけど、それよりも強くなっている」
やはり、前回より強くなっているようですね!
これは段々と戦いが厳しくなりそうな予感です……。
「気を引き締めて対処しましょう……」
「いざとなったら私が上級魔法を使うわ!」
メイちゃんも気合十分のようです。
少しすると、私にも魔王が見えてきますが……。
何故に君はセーラー服なのかな?
赤いスカートに紺色の服です、胸元にはピンクの可愛らしいリボンが付いてます……。
黒髪をツインテールにして、まるで女子高生そのままです!
魔王らしさが微塵もありませんよ!! どうしてそうなったんだ!
「弓矢隊構えぇ! 打ち方用意! 放てぇぇ!」
防衛軍が弓矢による攻撃を開始します。
前回は魔法で防がれたので今回も魔法で防御されると思いますが攻撃を仕掛けています。
「馬鹿の一つ覚えみたいな攻撃など効かぬわ!」
やはり魔法で飛んでくる矢を燃やし尽くしていますね……。
「魔法隊構え! 射ち方用意!! 撃てぇぇぇ!」
前回魔王が対処できなかった魔法が敵の軍勢に向かって飛んでいきます!
さて、魔王はどうするのでしょうかね?
「フハハハ! 効かぬ、効かぬぞぉ!!」
とても良い笑顔で魔法障壁を展開して魔法の攻撃を防いでいます。
さすがに前回の攻撃は通用しないようですね……。
ついに私たちの出番でしょうか?
「騎馬隊出撃用意!! 敵は前面の魔王軍である!!」
此方は次に騎馬隊が出撃するようですね……。
号令で三千を超える騎馬隊が陣を組んでいます。傍から見ても迫力がありますね!
パッパラーパラッパ、パッパラパパッパパー!!
多分突撃ラッパだと思われるラッパ音が戦場に鳴り響くと、砂埃を上げて進軍を開始します!
突撃していく騎馬隊を見送り、魔王の方へ視線を向けると……。
あっれ~? 魔王の表情が青くなっています!
おい、まさか! 対処できないのか? まさかだよね?
「接近戦闘は、まだ対処法を習ってないのぉ!!
対処できないよぉ~!!」
ふむ、ダメな感じですね……。半泣きになっています。
地竜も騎馬隊の猛攻撃に反撃出来ずに亀のように縮こまっています……。
地竜は足が遅いのかもしれませんね、逃げる事も出来ないようです。
「多分魔王は学習をしているんだと思う。
前に思ったんだけど、倒される度に強くなっている説明にもなるよね」
メイちゃんがこの前呟いていたのはこの事だったんですね!
「で、ここからは憶測だけど……。
私たち勇者に倒されない限り復活するんだと思う。
今回の討伐で魔王が再度復活したら確定だと思う」
メイちゃんの考察は理にかなっていますね!
「だったら、今からでも魔王討伐に参加した方が良いんじゃないですか?」
ミサちゃんの慌てて進言してます。一理ありますね……。
「もう遅いと思うよ……」
ナツちゃんが呟やきます。え? どう言うことですか?
慌てて魔王の方に視線を向けると……。
「ぐはっ!! またもや負けるとは!!」
倒されてます! 霧になってます! 消えていってます!!
またしても、負けてますよ魔王さん……。
「あ、遅かったですね……。次回に期待ですかね……」
とりあえず戦闘は終了になりました……。他のモンスターは騎馬隊の活躍で綺麗に掃討されました!
騎馬隊強いですね、あっという間の出来事でした!
さて、イルーさんの所へ行って神託の事について伺いますかね。
「皆様の仰るとおり、魔王はまだ討伐されたと神託は降りてません」
勇者ハウスにてイルーさんに話を伺ってみると前回と同じ回答になりました。
さて、メイちゃんの推測が正しいと思われるので、次のときには私たちの手で魔王を討伐したいと思いますよ!
今回もこうしてグダグダでシナリオが進みました……。
さて、今日の小説はシナリオについて書きます!
新しい発見もありましたし、魔王ちゃんさり気に可愛かったし! あ、本音が漏れた!
次こそは討伐ですね!
現在の所持ルックは二千二百四十八ルックになりました。では皆さん、また明日お会いしましょう。
シナリオ第三弾になりました。魔王ちゃんが段々とアホな子になっていくです! ではではでは




