ふむ……。(256)
最近は風も冷たくなってきて、すっかり秋を肌で感じるようになりましたね。
季節の変わり目なので風邪には注意ですよ皆さん。まぁ、私も体に気をつけないとゲームどころの話ではなくなりますね。どうも、今日も元気なタクちゃんですよ!
さて、私の所持ルック事情も明るくなってきていますので、そろそろ次のステップに移りたいと思うわけですよ。ここまで書いたら察しのいい人は、お! ついにか! と思うでしょう!
そうです! そうなのです! 言わずと知れた、スキルを増強しようと思うわけであります。
ん? どうしたんですか皆さん? そんな冷たい目で私を見ないで! ミサちゃんも言ってたではないですか、当たらなければどうって事はない! と。
まぁ、冗談ですよ! 本当は防具を新調します。さすがに防具なしはシンドイですからね……。今後、シナリオを進めていく上でも防具がないのは不安の一言ですから。
なので、今日こそ防具を買いますよ私は!
ログインをすると見慣れたホームの一階、ソファーに視線を向けると今日はナツちゃんしか居ません。
「こんばんは」
「こんばんは!」
とりあえず、挨拶をしつつソファーに座ります。
ナツちゃんは何枚かの紙を手に持ち読んでいるようです。一応顔を向けて挨拶をしてくれます。熱心に読み込んでいるようなので話しかけるには少し勇気が要りますね。
ただ、ナツちゃんも生産者通りで活動しているので、防具屋などの情報を持っていると思うので参考程度に情報は聞いておきたいです。
悩んでいても仕方ないので聞いてみましょう。
「ナツさん、少しいいですか?」
「はい? どうしたんです?」
書類から視線を此方に向けながら反応を返してくれます。
「今から防具を揃えようかと思ってまして……。
いい防具屋さんなど知りませんか?」
ナツちゃんが顔を上げる仕草と連動して胸が揺れますが気にしないフリです!
「そうですね……。予算にもよると思いますし、ステルスで防具を見えなくするなら装飾などが無い防具でもいいでしょうし……」
ん? ステルスとはなんぞや?
「ステルスってなんですか?」
知らないことを聞く事は恥ずかしい事じゃないです。知ろうとしない事がは恥ずかしい事なのです。
「えーっと、防具は装備した後に表示するか、しないかを選べるんです。
私たちのように衣装に力が入っているプレイヤーの為に防具が邪魔しないように出来ているんですよ。
ロールプレイで騎士などをする人は逆に防具が表示されないと困りますからね。
結構考えられているんですよ」
ほうほう、言われてみればナツちゃんも防具つけている姿を見たこと無かったですね。
「少し待ってくださいね……。
これで……、よし!」
ディスプレイを操作するとナツちゃんの防具が表示されます。
真っ赤な鎧を着ています。下半身の方の鎧はスカートの形になっていて特殊な感じがします。
良く見ると表面に花などをあしらった装飾が付いています、手の込んだ鎧ですね。
「表示されると、こんな感じなのですね……。
非表示にすると鎧が見えなくなるだけです?
それとも、鎧事態を装備して無い様な感じになるのです?」
普段の動きからすると鎧自体を装備してないような動きをしてますからね。
「非表示にすると、防具はつけてない状態と同じになりますが防御力はちゃんと上がってます」
ほうほう、なるほどなるほど!
「見えないから装飾が無いものでも良いですね」
これはいい情報だと思います。
「色々ありがとう。後は店で決めるだけかな」
「そうですね、装飾が無くても良いんでしたら……。
ガンコさんのお店が良いかも知れませんね……」
ほうほう、ガンコさんですか……。場所を聞き出しましょう。
優しいナツちゃんは紙に地図を書いてくれましたが……、いや……これで目的地に着けるか分からない物を渡されました。
えーっと、擬音が書かれています……。
突き当りまでゴォー、右にズーンと行って越後屋さんをドーンとして……、コスプレ屋の向かいをちょちょいと行けば……。ってどうすれば良いの? 理解できません……。
折角の優しさを無下にできないので、この地図を頼りにしますかね……。
「あ、ありがとう。では行ってきます」
とても良い笑顔を頂きました!
分からなくなったら、どっかで誰かに聞く事にしましょう……。
何時来ても人が多いですね……。とりあえずコスプレ屋は中央の広場の方から進んで直ぐの所にあったのを覚えているので、一旦中央の広場の所まで行ってみますかね……。
ただ目的地を目指すだけでなく通りを歩く他のプレイヤーの防具を見てみます。
皮で出来た鎧を着ている人もいれば、映画とかで出てきそうな顔からつま先まで鎧に包まれた人も居ます。衣装に力が入っているプレイヤーさんも大多数いるので何もつけていない人もいますね。
お! 背中に天使の羽みたいなのを着けている人もいますね。あれは防具なのか衣装なのか気になりますね……。
お! こっちの人はペガサスを連想させる鎧をきてますね。まるでシルバー戦士です!
隣を歩くプレイヤーは阿修羅みたいな三面の顔をしててゴールドの鎧です。顔が怖いですけどね……。
すれ違うプレイヤーを見ながら、中央側の入り口に付きました。さて、後はガンコさんの店を探すだけだ!
コスプレ屋の前まで来たので、地図に書いてある向かい側を探します……。
えーっと、それらしい店がありません……。ちょろちょろの意味が分からないとダメなのか……。
うーむ、分からない。
しばらく、向かいを良く見ていると人が一人分だけ通れる道がある事に気付きます! もしかしてここを進めって事か!
不安になりながら、兎に角進んでみます。お! 漢字で頑固と書かれた看板を掲げるお店がありました! 狭い通路に昭和を彷彿とさせる建物で入り口は家屋の入り口と変わりません、正直当たってるか分かりませんが突撃であります。
「すみませーん」
扉を開けて、中に入ります。まんま昭和の日本家屋です、土間の先に六畳ほどの和室があり着物を着た男の人が横になりながらブラウン管のTVを横になりながら見ています。
ちゃぶ台が置かれていて、その上にはミカンが置かれ防具屋には見えません……。
「ん? 客とは珍しいな」
声に気付き、起き上がる男性……。角刈りの頭で少し強面の顔です!
「知人の紹介で……」
腕を組んで此方を見る姿は昭和の親父にしか見えません!
ん? 奥の柱の影から赤いワンピースを着た女性が覗いています……。気にしないでおきましょう……。
「防具か?」
言葉が少ないです。
頷くことで意志を伝えます。
私の頷きに答えるように立ち上がってタンスに近づいていきます。
「これはどうだ?」
徐にタンスから何かを取り出してきます……。
バネで作られた防具を渡されます……。いや、これは防具じゃないですよね?
「これは?」
「これを着ければ、世界を目指せる野球選手になれる!」
やっぱりか!! だと思ったよ!! このゲームは野球ゲームじゃないの!
「いや遠慮します!」
「なにおぉー!」
いきなり振り返るとちゃぶ台をひっくり返します……。
「やめて! 父さん!」
柱の影から見てた女性が止めに入ってました……。
私は何とかの星は目指さないよ!
この茶番に何時まで付き合えばいいのだろうか……。
「えーっと、まともな防具が無いのでしたら帰ります……」
私の声を聞いた二人が慌てて正座をして、此方に顔を向けます。
「すみません、ここまでは流れってやつでして……」
「すみません、これをしないと気が済まないのです……」
いきなり真面目に成りましたね……。
「それでは改めて、千ルックまでで防具を見繕って欲しいです」
私の注文で速やかに行動をする二人……。
「これはどうかな?」
皮で出来た鎧です。シンが着けているものよりかは安い感じがしますが、守るべき場所をちゃんと守れるようになってます。すこし皮で装飾がされています。
「えーっと、ステルスにするので装飾が無いもので一番防御力があるものが良いです」
私の意見を聞いてくれて、次に出されたのは防弾チョッキ見たいなやつでした。
「これは見たまま防弾チョッキだ。
ただ鉄板を布で包み体の前後を守るようにしてある。使っている鉄板は装飾などしてないから厚めにしてある。
付属の肘、膝当てもつけても重量は二十キロにはならないから重量による負荷は少ないはずだ」
ほうほう、これはいいかもです。
「これで千ルックですか?」
「ところで、誰の紹介でここへ?」
私の質問に答えずに質問を受けます。
「ナツさんという私のチームメンバーです。
生産者通りでパンを売ってます」
私の答えを聞いた途端に笑顔になります。
「よし、なっちゃんの知り合いなら勉強させてもらうよ。
肘当てと膝当ては別途料金なんだが一緒にして、さらに脛当てもつけて千ルックでいいよ」
角刈りのおじさんナイスです!
そして、ナツちゃんに感謝ですね。
「ありがとうございます!」
千ルックを払い、とうとう防具を手に入れました。
「なっちゃんによろしく言っておいてくれ!」
角刈りのおじさんと赤いワンピのおねーさんに見送られてホームを目指します。
良い買い物が出来ました。
ホームに戻って、ナツちゃんにお礼を言ったら気にしないで下さいって笑顔で言われました。
たまに思いますが、人との繋がりって色々大切ですね!
さて、今日は防具を購入したので小説の話はこれで決まりですね。
ちなみに防具をつけた感想は普段と変わらないです。防具によって防御力が上がったといっても、数値的に分かるものではないようです。実際に攻撃を喰らうと実感するってナツちゃんが言ってました。
次の戦闘が楽しみですね! 現在の所持ルックは防具を買ったのでかなり少なくなりましたが五百十四ルックです。では皆さん、また明日お会いしましょう。
やっと防具が買えました! 次は何にしましょうかね? ではではでは。




