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アクセス数=強さだ!!~見てくれる人は神様です~  作者: 雲ノ上
ミラレテン・ハートの世界へようこそ!!
2/70

パンが……。(138)

 友人に見せられた動画が面白かった。

 ゲームを実況している動画だったのだが、その動画内で喋ってる男の人の話し方が、兎に角笑える話し方だった。

 動画について説明をしてくれる友人いわく、ビビリ実況と言うらしい。

 見せられた動画では、ダンジョンを攻略していたのだが、曲がり角に来るたびに「この先に絶対強い奴が居るんだよ……」や「安心させといて、後ろか?居ないか……、ウォォォー天井からだった!!」など、見てる方がドキドキするような実況だった。

 この動画がきっかけで「ミラハー動画」を見るようになった。

 色々な人が動画を上げていて、みんな楽しそうにゲームをしている。

 楽しそうに遊んでる動画を見ている内に、自分もこのゲームをやってみたい!と思ってしまった。

 まんまと、戦略に嵌ってしまっていた訳である……。


 山崎 拓と言います。最近は彼女もいない寂しい生活を送っている二十五歳で、社会人になってからは、ゲームなんて殆どしていません。

 昔は結構ゲームをしてたはずなのに、仕事の疲れや時間が無くて触れる事がなくなりました。

 たまたま、友人が動画を見せてくれたから、久しぶりにやってみようかと思っただけ。

 他のゲームなら、時間が無いから、攻略に疲れたからって理由で離れるかもしれない。

 でも、動画で見たゲームなら楽しく遊べそうだ。シナリオも沢山あるみたいだし、あっという間に最強になってやるぜ!と考えていた時期が私にもありました……。


 ミラハーの世界は厳しいです、死にそうです。人気が無いと食料さえ買えません……。

 この世界でNPCが売ってる一番安い食料はパンです。何ルックだと思いますか?


 百ルックです! 聞きましたか奥さん!! 私達みたいなミラハー難民に死ねと言ってます!

 三食で三百ルックですよ! 人気無いと一日すらまともに生活が出来ないなんて……。

 開発者は鬼ですわ、鬼畜ですわ。値段設定間違えてるってオチであって欲しい……です。


「タク! ほい、恵んでやるw パンを買うのに悩むとは、そんなにアクセスが少ないのか?」


 このゲームに誘い込んだ元凶である、シンがニヤニヤしながらパンをくれる。

 あんた神様や!と心に思ったけど絶対言わない。だってシンは、アクセスが一日で千を超える中級ミラハー民である。

 ここは、始まりの町スターティア。中央に大きな広場があり、真ん中には噴水があって待ち合わせに使われる場所でもある。噴水の周りにベンチが並べられていて、色んな人が腰掛けている。

 そのベンチの一つに自分と友人であるシンと仲良く座っている。いい年した大人が男同士でベンチに座ることになるとは……。


「うい~。やった事無くても、動画にしとけばよかったかな……。

 ブックにしたけど、踏んでくれる人が少ない少ない……。掴みはいけると思っていたのに、全然伸びなかった……。

 何があかんのや!! って叫びそうになりながら、次の文章考えてるよ」


「そりゃ、文章が硬いのがダメなんだろ?読んでで面白くないぜ?」


 面と向かってダメだしをくらう、冗談が足りてないのか? そうなのか?


「タクの文章って暗いんだよな……。読んでて明るくなるように表現しなきゃ。

 例えば、空一つの描写だけど。


 タクは、『青い空、雲はなく太陽が輝いている』って書くだろ。


 俺なら、『突き抜けるような晴天! 晴れ渡った空に、照りつける太陽! 喉が渇きますね、ビールが欲しいです!』と書く。これ位、明るかったら読みやすいだろ?

 あと、気温が高い事も想像できるし、もしかしたら夏かなと思わせる事も出来るよな?」


「あぁ、そうだな……。シンの言うとおりだな」


「ついでに、『海も良いですが、やはり山ですね!』と書いたら、読んだ人は夏の漢字が無くても勝手に夏だと思ってしまう。

 そこで、オチだ!『サーフィンも良いけど、スノボーがとても楽しいです』と書いたら、冬か!! となるわけだ」


 友人の話を、貰ったパンを食べながら聞く。なんだかんだと、シンの話は自分より上手くて泣けてくる……。これが才能なのかもしれません。


「昔は勉強できなくて、宿題を見せていたのに……。勉強と表現は別物だった!!」


「慣れだよ、慣れ!! タクも慣れたら、同じくらいの表現は出来るようになるぜ……、多分」


 不安になる言葉をかけるなと思うけど、パンをくれたから許す。

 視界の左上のゲージが赤かったのが、パンを食べたので黄色を越えて少し緑色になる。ゲージで言えば四分の三が埋まった感じである、満腹には成っていないけど空腹のバットステータスは回避できた。


「で、アクセスは幾つだったんだ?」


「あえて、言わなかったのに聞くのか……。

 聞いて、驚くなよ?百三十八アクセスだったぜ!」


「お、OH。スゴイネ! パン買エルヨ」


 馬鹿にされているように感じる。だが、自分の実力が無いから文句を言えない……。

 これがネット社会の格差か!


「初期のスキルさえ買えない。そして買っても、初級のスキルアップに五百ルック必要って鬼かっ!

 中級で必要数が千ルックって俺には遠いな……」


 思わず空を見上げるけど、自分が空を見上げる姿を想像して似合わないと思い、シンに顔を向ける。


「最初はそんなもんだ。俺達だって、今の動画が軌道に乗るまで、ひもじい思いしたんだぜ」


 シンは双剣使いである。腰に二本の剣をぶら下げているから、傍から見ても双剣使いだと分かる。

 装備はそこまで揃っているように見えないけど、それでも皮鎧は装備してる。


「何てタイトルだっけ、『双剣どうでしょう?』だったっけ?」


「あってるよ。皆で分割になるから、最初なんて一人頭、百無かったんだぜw

 今では、割っても千を超えるけどな」


 シンは双剣仲間でサークルを作っており、ある番組のパロみたいな動画を上げている。参加している人たちの個性が強く、万人受けはしないかもしれないけど、それでも一定数のファンが付いている。

 パロであろうが、最初にやった者勝ちの世界である。その後に違う人が真似ても、二番煎じ、三番煎じと言われて、視聴さえしてもらえないなんて事もある。

 自分の文章も、誰々の真似だとか、誰々に影響を受けてるとか、その内言われるかもしれない。

 まぁ、それくらいならいいけど、文法が間違っているや、言い回しが変だとか、文章が幼稚だとか言われるようになるかもしれない。それだけ、読んでくれる人が居ればの話だけど……。

 ゲームのために小説を書いているから、そこまで細かい事を気にして文章など書いていない。これが、出版を目指してますなら、話は違うのかもしれないけどね……。

 食事も終わった事だし、どうしようかと考えようとした時。


「おっと、俺はこの後サークルに顔を出すから、そろそろ行くよ。

 今日の分の撮影に行ってくるぜ。

 なんかあったら、メールくれ! じゃあな」


 俺の返事も聞かずに。シンは去っていく。食料を恵んでくれた神様が去っていく……。

 ベンチに座っているだけでは、小説を書くことが出来ない。何かイベントを起こさないと! もしくはネタになることを探さないと。そうしなければきっと、今日のアップする文章は、ベンチの住人ってタイトルでPC観察日誌になってしまう! それだけは避けたい!

 どうするかをベンチに座って考えるが、いい案が思いつかない……。ならば今の手持ちで何が出来るか、店を回ってみるかな……。


「た、高い……。基本のスキルが一つ五百だと……」


 スキルショップで並んでいる値段に引いてしまう。それでも、買わないと遊べない。

 このミラハーの楽しみの一つが、自分で作るスキルである。初期スキル、(別名基本スキル)と呼ばれる物を組み合わせて自分オリジナルの技を編み出す。

 初級スキルにするためには最低でも二つ買い、覚える必要がある。

 覚えた基本スキルを自分のステータスデッキで組み合わせると技が発生する、納得できる技であったなら五百ルック払って初級スキルとする。中級は三つ以上のスキルを合わせないと発生しない、必要ルックは千ルック。上級は五つ以上の組み合わせで発生する、必要ルックは千五百ルックである。

 種類が豊富にあるので、攻略掲示板には、皆が自分で作ったスキルを紹介する板があるくらいである。

 最初に作った人の考えた名前が非公認だが、技名としてプレイヤーの中で広まる。有名になりたい人や、中二臭い名前を付けたい人は頑張って新しい組み合わせを試している。

 でも、試せるということはルックを持っていると言うことである。

 

 ここでも、ルックの恐怖が付いて来るのか……。

 だめぽ……、何も思い浮かばないお……。神は私を見捨てたのか……byタク

 違う、違うんだ!こんなくだらない事を考えているんじゃダメだ。


 スキルの壁の高さを実感しつつ店を出る、何かネタを探せ!


「ん、あの人のトルン凝っているな」


 たまたま、スキルショップの前で視界に入ったプレイヤーのトルンに目を奪われる。ゴスロリ装備でトルンはフランス人形。

 トルンと言うのは、ミラハーの動画を撮ったり、生放送をするときに使ったり、個人が行動をした記録を残すのに使ったりするカメラの事である。最初から個人に一つ装備で付いてくる、プレイヤーの右肩のあたりに浮いていてプレイヤーに合わせて着いてくる優れた奴である。初期はただのボールなのだが、トルンショップでカスタマイズする事で見た目の変更が出来る。

 他にも、細かい設定をいじれば、プレイヤーが見ている視覚情報で録画が出来たり。プレイヤーの顔だけを映す位置にボールを配置できたり、上空撮影だって出来る優れものである。凄い人になるとトルンを買い足して、多角視点で録画する人もいるくらいである。

 しかし、フランス人形って顔怖いよなって考えていたら、いきなりフランス人形の目が発光する。

 気持ち悪!! とっさに叫びそうに成るのを抑えて、何が起きてるのかを考えてみる。

 あ、録画中か! それでも目が光るってどうよ……。なんてマジマジ見ていたら声をかけられる。


「なに、見てるのよ!! 撮影ならルック払ってもらうわよ!!

 ん、初期装備か……。なんだ、ルックなしか……」


 勢い良くまくし立てられたけど、装備を見て察してくれたようだ……、余計なお世話だ!


「カスタマイズしている人って少ないので、見とれてしまいました。

 気分を害するつもりはなかったんです」


 ゲームと言えど揉め事は避けたいので、下手に出る。


「まぁ、私くらいの売れっ子になると、ルックなんて捨てるようにあるけれどね」


 くそっ!! 傲慢な態度にイラッ! ってするけど、向こうの方が格上だ。我慢我慢……って出来るか!


「その内、俺だってそれくらいのカスタマイズできるようになるさ」


 言い切って即効でログアウト!

 

「あ、待ちなさい! こらっ! 喧嘩売ってんじゃねーぞ!」

 

 ログアウトするときにロスゴリの声が聞こえるけど、シカトだ。

 ふぅ、今日はもうログインしないでおこう……。アクセス増やすために小説を作り込もーっと。

 面倒な奴だったな……、ネタにしてやるかな何て考えつつミラハー・ブックで次話を書き始める。

 明日は、どれだけのアクセスになるか楽しみだな……、期待してないけど期待する!

 装備やスキル揃えないと、話が進まないよ……。

 少しですが、世界観が伝わればと思っています。パン高いですよねw

 その内、活動報告に細かい設定を書く予定です。ではではでは。

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