激戦……。後 (なし)
皆様ここで悲報がございます。
どうしたんだ? と思われる方が多いと思いますので経緯を説明します。
さて、何があったかと申しますと、午後からのレイド戦に向けて少しでも強くなっておくべきなのではなかろうか? と私は考えたわけです。
そうとなればと勇んでホームを飛び出し、スキルショップで悩み倒して二つのスキルを購入するに至りました。
一つは、二刀流というスキルです。両手にモーニングハンマーを装備してますので両方の武器にスキルを乗せたい場合はどうしても二刀流のスキルが必要になるそうです。
このスキルはシンからもアドバイスを受けていたので、迷うことなく購入を決断しました。
二つ目なのですが、武器がハンマーですが、収納しているとナックルガードとしても使えるので色々悩みましたね。
一時間ほど悩んで決めたのが「打ち下ろし」です。戦槌などを使う人には御なじみのスキルですね。「打ち上げ」か「打ち下ろし」かで悩んだんですが、最初なので扱いやすそうな打ち下ろしにしました。
まぁ、時間はかかりましたが無事にスキルを購入する事が出来たんです! ここまでは良かったんですが……。
いざ、スキルを合成しようとしたら……、そうなのです! ルックが足りないではないですか!
デッキ上では派生スキルが出てますが、取得できない! くそがぁぁぁ! え? ルックを確認してから買えよ! ですって? ハハハ! そういう事もありますよね!
なので、今日のレイドでは初級スキルを試す事が出来そうにありません……。無駄な出費ではないですよ、いずれは買わないといけないので、遅かれ早かれってやつです。
それに、基本スキルとしては補正がかかっているので打ち下ろしをすれば威力は上がりますから良いんです!
まぁ、落ち込んで居ても状況は変わりませんので、気持ちを切り替えていきましょう!
「二百人も集まるとさすがに圧巻ですね!」
レイド専門サーバーに今日の戦闘に参加する人がすでに集まっています。
戦場の横には大きな観客席が運営によって設置されており、こちらもすでに観客で溢れかえっています。
色分けは、私たちの軍団が白組、敵を赤組となっています。観客席の上には百対百の表示がされてます。きっと戦闘で死ぬとあの数が減算していくものと思われます。
「そんな事いったら、千人対千人のレイドはもっと凄いですよ!」
リコちゃんが言っている千人対千人など私には想像できそうに無いですね……。
「緊張しますね……。対人戦闘は初めてなので」
モンスと違って相手はプレイヤーですから、思いもよらない攻撃などを喰らいそうで怖いですね。
「大丈夫ですよ! 私の近くに居れば全ての攻撃を防いで見せますから!」
あら、またもや頼もしいリコちゃんの登場ですね!
「ふふふっ! さーて私の実力を見せてあがるからね~」
えーっと、皆さんミラさんですよ! 戦闘をするので素に戻っているんです!
ちなみ格好は袴です、弓道部の袴です! 頭に白の鉢巻、袖を襷で縛ってあってかなりの本気を伺えます。
ですが、手に持ってる弓は和弓ではなく洋弓なのです……、少しミスマッチですが雰囲気は合っているので気にしないでおきましょう。
「久々のレイドだから、張り切って魔法を使っちゃうぞ!」
何時ものゴスロリファッションでメイちゃんが張り切ってます。魔法使いは動画でも見たこと無いので少し期待をしています。
「楽しく調理してあげますよ……」
あっれ~、ナツちゃんが何時もと違う! 戦闘は剣士だと言ってたので装備を見ると背中に武器を担いでいるんですが……。
それは剣と呼ぶにはあまりにも長すぎた、そしてそれは剣と呼ぶにはあまりにも綺麗過ぎた……。とナレーションが聞こえそうな武器を持っています。
まぁ、見たまま言えばマグロの解体用の長い包丁です!
もうね、日本刀って言えばいいのかなって感じです。いやはや、この武器は幾らくらいするのでしょうね……。
「リコさん、始まる前に聞いておきたい事があるんですが、攻撃を喰らったらどれ位痛いんでしょうか?」
「えーっと、レイドの場合は通常時の痛覚の八割をカットしてくれるので、殆ど痛くないですよ」
ほうほう、ならば安心して攻撃できますね!
「体力が無くなったら、一瞬暗転して向こうのところに出ますので」
リコちゃんが指を指す方を見ると、観客席前に死亡エリアがあります。きっと死ぬとあの場所に勝手に転送されるんでしょうね。
「分かりました、後は勝つのみですね!」
「はい! 頑張りましょうね!」
気合を入れたところで、大将である伊部さんが現れます。
「殺らないか」
「ウオォォォー!」
他のプレオヤー達が歓声を上げてますが、あの人何も言ってませんよ! なぜに盛り上がってるんですか!
「見よ、我が隊はこんなにも勇猛ではないか!」
ミラさんが何かのキャラの台詞を言ってますね。勇猛かどうかは知りませんけどね……。
「ん? 誰か出てきましたね」
伊部さんの後ろに一人の男性が姿を現します。薄い水色のジーンズに太い体系にフィットしたTシャツを着こなし、眼鏡をかけ帽子を被り背中にはリュックサックを担いでいます。担いでいるリュックサックの両端から丸めたポスターらしき物が飛び出しています。
もうね、絶対キャラ作ってるでしょって感じのオタク風の男です。
「ぼ、僕たちを、ば、馬鹿にした事を後悔させてやるんだな!
皆の衆、拙者が突撃隊長をするんだな!」
「ウオォォォォ!!」
さっきより盛り上がっているように感じます……。おじさん誰ですか?
「あの方はトッププレイヤーの鈴木さん! 二刀流では並ぶ者無しと言われる豪傑ですよ!」
リコちゃん説明ありがとうございます! ところで鈴木さん武器持ってないですやん!
「あの人、武器持ってませんよ……。そんなに凄いようには見えないんですが……」
「戦闘が始まればわかるよ~」
ミラさんが笑顔で言ってます。可愛いな!
「向こうも準備が出来たようですね……」
対戦相手になる敵を観察してみます。何かね、こっちの方が悪者なんじゃないかなって思えてくるほど、向こうが正義に見えます。
前面に甲冑を着込んだ騎士風のプレイヤーが構えていて、隊列も組まれていて綺麗に並んでます。
先頭に大きな剣を地面に刺し、白銀の甲冑に黒いガントレットを着けた男が大剣に両手を乗せて待ち構えてます。向こうの先陣を切るプレイヤーでしょうか?
さて対照的に此方と言えば、みんな思い思いの格好に隊列など無いですし、雑談もし放題です。
お! 敵の大将が出てきましたね。テールコート姿にシルクハットを被り手には白手袋、口元にカイゼル髭を生やして紳士を表現したらこうなりますって男です。
「レディース アンド ジェントルマン! 楽しいパーティーへようこそ!」
声が渋いです! 格好いいです!
向こうの大将の挨拶に此方も対抗しましょう!
「殺らないか」
会話できてませんよ! もうね、此方が馬鹿にされているように感じますよ!
「時間ですね……」
リコちゃんの声で上空に見えるデジタル表示の時計を見ると、戦闘開始時間の午後一時になろうとしてます。
「勝ちましょうね!」
負けると最初から考えていたら勝てる戦も勝てませんよね!
午後一時なったようです、戦場にブザーの音が鳴り響きます。
まずは、鈴木さんが先陣を切って突撃していきます。相手のプレイヤーと対峙してますね。
相手プレイヤーが徐に大剣を通り過ぎ、鈴木さんに突撃していきます。ってか大剣使わないんかい!
さて、鈴木さんの武器は何でしょうかね? お! リュックサックに刺さってるポスターを二本引っこ抜きます。え? ポスターが武器ですか……。
「鈴木さんのポスター二刀流を直に見れるなんてすご~い!」
ミラさんがテンション上げてますが、理解できませんよ……。
さて、鈴木さんばかりに気を取られるわけにもいきませんので、私たちも参戦しますかね!
「リコさん、私も行きます!」
「頑張ってくださいね!」
さて、初級スキルは無いですが、やれるだけやって見ますかね!
とりあえず、突撃してみます。目の前に大きな戦槌を持っているプレイヤーが居るのでターゲットにします。
戦槌は重たいので、動作が遅いと判断します。いざ勝負じゃー!
走りながら右手側の鉄球を外します、少し走れば右手に鉄球の重みが鎖越しに伝わってきます。
「せいや!」
高くジャンプして、右手を大きく後ろから大きく弧を描くように振り下ろします。
打ち下ろしのスキル補正がかかっているので、ダメージは大きくなるはず!
「ふん!」
相手が片手で戦槌を下から振り上げて、私の鉄球にジャストミートさせます。すると、鉄球がその場で止まってしまします。
「くそっ!」
ジャンプしての攻撃だったので次の動作に移れません! 相手は戦槌の石突き部分で私の鎖を巻き取り引き寄せます。
「やっべっ!」
体が引かれて体勢が維持できません。勢い良く相手に向かってます! 飛んでくる私の顔を見ながら相手は笑顔です! 相手の戦槌が左側から私に迫ってきます、ガードしようと左手を出しましたがここで私の景色は暗転してしまいます。
「うお! あ、死んだのか……」
相手の戦槌が顔にヒットする瞬間までは見えてましたが、気付いたら死亡エリアに居ます。凄く呆気なったですね……。
さて、死んでしまったのでどうする事も出来ないので戦場の状況がどうなってるかを確認しますかね……。
フィールドを見渡すと、我らが大将伊部さんが素手で敵のプレイヤーを千切っては投げています。こわっ! 大将が健在なので負けてはいませんね! さて、他のみんなはどうなってますかね?
人が入り乱れているので、リコちゃんとミラさんしか発見できませんでした。リコちゃんは盾で全ての攻撃を防いでますね。さすが、我らのリーダーですね! 対照的にミラさんは華麗に攻撃をかわしながら、弓によるヘッドショットで難なく敵を消しています。遠目に見ると良く分かりますがミラさんの腕前は凄いですね!
「タクさんも死んでしまいましたか……」
後ろから声がかかったので振り返ってみます。そこには、ナツちゃんが申し訳なさそうに立ってました。
「えぇ、意外と早くに戦線離脱してしまいました……」
ナツちゃんが隣に腰を降ろして、一緒に観戦をします。
三十分も経つと戦況が白組が不利だと教えてくれてます。鈴木さんが負けた辺りから一気に此方が不利になりました。
それと、敵の大将のジャックさんが強いです。ククリナイフを巧みに扱いながらあれよあれよとプレイヤーを撃破していきます。
ん? ミラさんが敵の大将に標準を定めたみたいです! 矢が物凄い勢いでジャックさんに迫りますが、ナイフで叩き落してます。
「あ! ミラさんが怒った!」
ナツちゃんの声でジャックさんからミラさんに視線を向けると……。
「なんですか、あれは!!」
空間が歪んだと思ったら大きな弓が出現しました。
「対ドラゴン用のバリスタです!! さっきの矢を落とされたのが気に入らなかったんですね……」
遠目に見てもデカイのが分かるほどの代物です! ミラさんが徐に足でスイッチを押した瞬間!!
ゴオオオォオォォォオォォォーーーー!!
凄い音と共にバリスタが敵味方関係なくプレイヤーを巻き込みながらジャックさんに迫ります!
きっと、誰も想像してなかったでしょうね……。伊部さんとジャックさんの一騎射ちを期待してましたが、結果はどうなるか最後まで分からないものですね。
ジャックさんの健闘むなしく、バリスタで決着が付いてしまいました!
ジャックさんが倒れた瞬間に上空に白組の勝ちとでかでかと表示されます。
一斉に観客も沸き立ちますが、私としては何とも言えない気持ちです……。
あと、正直言えば最初からミラさん一人で良かったんじゃね? ッてことです!
こうして、レイドはミラさんの一撃で終了となりました。
初めての経験で色々慌しかったですが楽しかったですね。
それと、我らが白組が勝ったので、パロも認めると敵対していたプレイヤーチームから声明が出て今回の一件は解決となりました。
参加賞や優勝賞品に関しては明日にでも書こうかと思います。
今日の出来事で分かった事は、怒らせてはいけない人物が私たちのメンバーに居る事を知れたことですね!
それでは今日はここまでにします。
現在の所持ルックはスキルを二つ買ったので三百ルックになりました。では、また明日お会いしましょう。
以外に文章が長くなってしまいました。今回は話の中でとある人物をちょこっと参戦させてます。分かる人には分かることですね! ではではでは




