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Lunch Time

 昼休み、彼ら三人は一階の食堂に来ていた。二年A組の真下に位置する食堂は、昼休みになると生徒でごった返しとても賑やかだ。席は多数用意してあるが、勿論全校生徒分はない。だから昼食を食べ終えたら他の生徒のため、席を速やかに譲るのがルールなのだが。

 この日貴矢、猛、綴の三人は迷惑行為を顧みず、食堂で話合っていた。

「猛、なんか重要な話っぽかったけど、こんな人の多い所でいいの?」

 貴矢の指摘も最もである。ここでは誰に聞かれているか、わかったものではない。

「いいんだ。昔からよく言うだろ? 木を隠すには森の中」

「……」

 分かったような分からなかったような顔をする貴矢。

 なんか、若干意味違うような……それを言うなら、パーティ効果じゃないのか?

「なんでもいいからさー、さっさとはじめよ?」

「おう」

 大事な話ならなんでもよくはないはずだが、綴の言うことも正論なので、黙っておく。

「で、今日の委員長会での話なんだが……」

 猛の話によると先日、校内で暴行事件が起こったようだ。たて続けに二回。どちらも放課後、一人で教室に残っていた生徒が被害にあっている。幸い何発か殴られたりしただけで、命に別状はない。また被害者二人は自宅に帰省しているとか。

「まあ、怖い思いしたのにまた学校に行きたくはないわな」

 とは綴の意見。

 怖い重い……? あ、思いか。殴られるのって怖いかな? 

 感性がズレている貴矢は、理解するのに少々時間が必要だった。

「そうだろうな。あとは……」

 学校側が被害者から聞いた話によると、犯人はもう特定出来ているらしい。だがここまできて、問題が起きた。

「はぁ? 問題? さっさと犯人捕まえろよ、教師がよ」

 こんな事件があったのに何も知らせなかった学校に怒りを覚え、綴は攻撃的になる。

 学校が隠ぺいしたせいでもし霞になんかあったら承知しねえぞ……!

「落ち着け、綴。学校としてはこれから放課後は速やかに寮に帰る。帰るのも複数人で、っていうのを徹底させるつもりだ」

「猛、それより問題ってのは? 何か犯人を捕まえられない事情があるとか?」

 鎌をかける意味で言ったのだが、正解だったようだ。猛は頷く。

「よく分かったな。その通りだ。何故なら」

 犯人がそれぞれの事件で異なるから。

 猛は静かに、そう言った。

「はぁ!? そんなんどっちも捕まえればいい話だろ!?」

 綴が立ち上がらん勢いで猛に言い放つ。

「おい、周りに人がいるんだぞ」

 幸いまだいつまでいるんだ、という非難の視線は送られていないが、時間の問題だろう。

「で、犯人が違うってどういうこと?」

 貴矢が促す。

「ああ、そのまんまの意味だ。最初の事件と次の事件、暴行という意味では同じだが、犯人が別々。またその二人は、知り合いですらない」

『!?』 

 綴は素で驚き、貴矢は驚いたふりをする。

 いやそんなのミステリアスでも何でもないじゃん。……ある一つの場合を除けば。

「さて、この事件。お前らの意見を聞かせてほしい」

 聞かせてほしいという割には、猛は椅子にどっかり座り、腕を組んでいる。デカい態度だ。恐らく猛の中で結論は出ているのだろう。僕たちに求めるのは、その確認のようなモノか。

「じゃ、これか。実はその二人は知り合いだった」

「バカか。知り合いではないといったばかりだ」

 綴は少々頭が残念なので、猛はあっさり切り捨てる。

「お前はどうだ? 貴矢」

 得意そうな猛だが、貴矢に彼の顔を立てる義務はない。また早くどいた方がいいだろう、と思い自身の推論を述べる。

「なら、これが答えしかないよ。誰かが起こした暴行事件を、その次の誰か違う人が真似した。それが続けば、二回の事件の犯人は全員初対面でした、ってね」

 これが答えだ。頭の中では思っていても、心のどこかで否定する自分がいる。もしかして、また始まるのか……?

「と思うだろ? 俺もそう思った。だが、違う」

 まさに予感通り、猛は否定した。恐らく次に続く言葉は、

「真似をした、なら話は早いんだがな。犯人たちは自分が起こした事件を覚えていない。さらに極めつけなのが、犯人たちは被害者に何の恨みも持っていない」

 今度は予想通りだ。ついに動きだした、ここの、王。すべてを牛耳、統べる王。王の命令には誰も逆らえない。つまり主犯は、王。貴矢はすでに、理解した。

「…全く…意味分かんねえよ。ってことは何だ、無差別暴行ってやつか」

 綴の言うことは正しいように見えて正しくない。これは明確な意図を含んだ事件、王様捜し。

「ああ、本当にな。だから学校も迂闊に変なこと言って、生徒をビビらすわけにいかねえらしい」

「いや、それだとしても犯人は今どうしてる? 委員長会メンバーで事情聴取してないのか?」

 猛も綴も急に貴矢が食いついてきたので、驚いている。猛が驚くなんて、珍しい。と普段の貴矢なら思ったかもしれないが、今の彼に余裕はない。彼は待ちに待ったイベントが開催されたような、でもそれを抑えてようと必死で頑張っていた。二人が驚いたのは案外貴矢の表情だったかもしれない。何故なら彼は二人が見たことのない。歪んだ顔をしていた。嬉しさと、辛さが混ざったような。そんな様子で。

「あ……い、一応話を聞こうとはしたんだが、すでに自宅謹慎が言い渡され、帰った後だった」

「……そうか。犯人に関係はない。じゃあ、被害者に関係は?」

「ん……」

 今まで流暢に話ていた猛が言いよどむ。眉間に皺をよせ、思い出そうとしている。

「貴矢、何で被害者の関係知りたいんだよ?」

 こちらは何も分かっていない様子の綴。頭が冴えわたっている、今の貴矢は一気にまくし立てる。

「もし被害者同士何か関係があれば次の事件の被害者を予測できる。まあ関係が性別だけとかになるとお手上げ状態だけどな」

 ふーん、と言い彼は両手をだらしなく下げ、ぶらぶらさせる。全く頭いいやつの考えることは……と言い掛けて、綴は引っ掛かりを見つける。手を机の上に置き、組み貴矢に問う。

「さっき貴矢さぁ。次の事件っていったよな? まるでまた事件起こるの、知ってるみたいじゃん」

「……それは……」

 思わず綴から目を逸らす貴矢。カンとか言って誤魔化すか? だが綴は時々鋭い。バレる可能性を否定できない。だが、知っているといってその理由を話すと…… 二人は王捜しに、巻き込まれる。運が悪ければ、死ぬ場合もある。大切な友達を死なせるわけにはいかない。どう言って逃れようか……

「あー、だめだ。思いだせねぇ。悪い貴矢。委員長会の部屋に資料あったと思うから、明日渡すわ」

 助け舟を出してくれたのは猛だった。

「あ……うん、じゃあ明日でお願いするよ」

「おお、まぁそろそろ行こうぜ。授業も始まりそうだしよ」

「ああ……」

 結局三人は昼休みの間中、席を占領していた事になるのだが、誰も文句を言いに来ないのは幸運というより、不思議ではあった。貴矢としては綴の質問から回避できたので、そんな些細なことはきにならなかったが。

 早く真刃に報告しないと。

 はやる気持ちを押さえつつ教室に向かう貴矢。 

 この時もう少し周りに気を配る余裕があったのならば、また違う展開になっていたにかもしれない。

 

 貴矢が辺りの喧噪を、猛の顔を、見ていたら。

 



 

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