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The Witch in Hospital  ー風前の灯火ー

 放課後、渋る真刃と伴って件(くだん)の保健室へ出向いた。何故貴矢がこの無表情美少女を誘ったのかと云えば、彼女に人類最強と言われた男も、何でも知る魔女は怖いのであった。綴によると、猛に魔女の話は出来ない。故に一人で乗り込もうと考えたが、色々考える内に魔性の存在が、少しそら恐ろしくなった。いや、魔とは言えど人間であることに変わりはないはずではあるが、もし悪魔のように狂った性格だったら手がつけられない。そこがポイントである。一人で対処出来なくなる想定で同伴者を用意した。

 さて、保健室についた。扉に手をかける。そのままじっと動かない貴矢。

「何やってるのよ、さっさと開けなさいよ」

 真刃が無常にも急かすが、不吉な予想が腕を硬直させる。

「う、うん…… ねえ真刃。もし魔女がいろんな意味でスゴイ人だったら、どうする?」

 ここでの『いろんな意味』とは性格に難アリ、の意味である。もし対話不可能だったら、この少女はどうするだろう。僕は……逃げる。では真刃は……

「逃げるわね」

 図らずも意見が一致した所で互いに頷きあい、一気に扉を引き開ける! ガラっ、部屋内に音が鳴り響く。おっかなびっくり入る二人。運良く保健室の先生はいなかった。では、保健室の魔女はどうか。此処には部屋の隅に並ぶ患者用のベットが二つあり、いつもカーテンレールがひかれ中が見えないようになっている。今日も例外なく、カーテンがひかれていたが……

「んん? 珍しいですね。見舞い客が来るなんて」

『!!』

 その向こうから、澄んだ女性の声が聞こえて来た。貴矢たちからでは、誰かベットで寝ていた人が起き上がったというシルエットしか見えないが———

「んんー? 誰かと思えば、私と同じクラスの転校生さんたちじゃないですか!嬉しいいいですね、初めまして。私は『保健室の魔女』こと風前燈(ふうぜんともしび)です。お二人の名前は存じておりますよ。ええと、『四十万貴矢』(しじまたかや)さんと、『雲類鷲真刃』(うるわしまさは)さんですよね!!」

 保健室への来訪者たちは驚愕すべき点が多過ぎて、何も言い返せないどころか何に対し驚けばいいのかわからなかった。内一人は元々何も感じないはずであるが、魔女の情報量の規模に少なからず戦慄しているのは間違いない。思考が鈍る頭で懸命に足掻こうと思考する貴矢。魔女、いや風前燈が言った言葉を一つ一つ吟味する。

 まず、同じクラスの。これに対しては論理的説明がつく。一応A組所属として、担任教師が教えたのだろう。僕らの存在や名前を知っていても、何ら不思議はない。

 しかし。その前に。おかしいことがある。魔女は可笑しそうにしているが、これは犯しがたい点だ。僕たちが魔女と同じクラスであるか、なんてこの際どうでもいい。

 重要なのは———カーテンレールはまだ閉じたままであること。そう、魔女はまだ僕たちを、見ていない。扉を開けた音で存在確認は出来たであろうが、誰かまでは確定できないはずである。もしそのカーテンが貴矢たちから中は見えないが、魔女の方から外が見えるシステムなら話はべつだが。そんなマジックミラーじみたカーテンはない。彼女の方からも、シルエットしか見えていないはず。

 何故、解ったんだ。僕と真刃が来たことを。そして、どうして知っている。僕だけでなく、真刃の苗字を———

 彼の疑問に応えるかのように、魔女は口にする。心の底から、喜びに溢れた、楽しそうな響きで。

「だってわたしは、ぜーんぶ知ってますから!」

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