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三題噺集

猫、風、レンガ

作者: シュウ

散歩中、ふといつも通っている道からそれた位置にある路地を見た。

ただ風が吹き抜けていくだけの道とも思えるような細い路地に、一匹の猫がいた。

気ままに散歩をしていただけの俺は、その猫の元へと寄っていった。

すると、まぁ当然といえば当然なのだが、猫は警戒心があるようで俺から一定の距離を保って離れた。

一歩進むと同じだけ猫が離れていく。

そうこうしているうちに、猫が前を歩き、その後ろを俺がついて行っているような形が出来上がっていた。

ゆらゆらと動く猫のしっぽを見ながら細い路地で歩を進めていると、強い風が吹き、俺は腕で顔を隠すようにしてそれを防いだ。

そして腕を下ろしたとき、なんとなく違和感を感じた。

辺りを見回したときその違和感の正体はすぐに分かった。

周囲の建物がいつの間にか赤みを帯びたレンガ造りの建物に変わっていたのだ。

この辺りは確かコンクリートや木造で作られたような、いたって普通の住宅街だったはずだ。

なのにいつの間にかレンガ造りの建物だけに変わっている。

たまたまレンガ造りの建物が集まっているところに迷い込んだ?

そんな比ではなかった。

見える範囲全部の建物が全てレンガ造りになっていた。

手が届く両端の塀も、届かないちょっと遠くのマンションも、すべてが鮮やかな赤みを帯びた建物へと風貌を変えていた。

俺は手を伸ばしてそこの塀を触ってみようとした。


「にゃー」


その時、猫がこちらを見て鳴いた。

声につられてそちらを見ると、あたかも『触ってはいけない』と言われているような気がして、伸ばしていた手を引っ込めた。

そしてまたしっぽをゆらゆらと動かしながら歩き出した猫。

俺は周りの雰囲気を不思議に思いながらも、離れてはいけないと思い、猫のあとをついていった。

少し歩くとまた突風のような風が俺を襲った。

さっきと同じようにして腕でそれを防いだ。

風が収まったあと腕を下ろすと、ふっと違和感が消えたのがわかった。

辺りを見回してみると、見たことがあるような光景に戻っており、レンガ造りの家などどこにもなかった。

首をかしげている俺をよそに、猫は足で首元をかいたあと、タタタっと走り去っていってしまった。

その後、このことを誰かに話しても誰も信じてはくれず、不思議な出来事として俺の胸の内にしまわれることになった。



おしまい。

猫のしっぽは催眠効果がある的なお話でした。

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