前夜祭
前夜祭。
ここは現代日本、福岡県某市、佐和千早宅。
22歳になった彼女は相変わらずこのマンションに住んでいた。
「ちはちゃんちはちゃん」
「はーい……って誰ですかあなた⁉」
玄関でセーラー服を着て、決めポーズをとる少女。……少女? なのかはわからないけど、たぶん少女。
「魔法使いソフィーちゃんだよ! ハロウィンのモンスターメイク教えて~!」
「ごく一般的な女子大生にモンスターメイク聞くあなたの精神疑いますが⁉」
「教えてくれないの……?」
「~~~~教えますよ教えりゃいいんでしょう! ネットで調べてやってくださいよ! ってかハロウィンでどんな格好するんですか!」
少女はくるりと一回転した。
「美少女魔法使い」
「モンスターメイク関係ないでしょう‼」
【千早家にソフィー加入】
「で……、こんな感じになったよ♪」
「ま、まあまあマシなんじゃないですか……」
「うわぁあぁぁぁあああっ‼」
がしゃん、と音がした。
モンスターになった少女を置いてリビングに来てみると。
「……ったぁ~……」
「義龍何するの!」
金髪と黒髪が揺れた。群青色の学ランが床に散らばる。
「またあなた方ですか! 今回は呼んでませんよ!」
「知らないよ! 作者に送り込まれたんだよ! 包帯とともに……」
「私は耳だな……」
ふたりはメタ発言の後コスプレ? 衣装をぎりぎりと握りしめ空をにらんでいる。
(このときキャラクターを送り込んだ作者待機所の面々の体感温度が十度ほど下がった)
「もうぅ……!」
「とりあえずだな、この着せ方を教えてくれないか?」
「いいですよ。あ、深澤さんはそっちで着替えるなら着替えてください。ここ男性禁止なんで」
「ああ、義龍。貴様は廊下でも……いいぞ」
「扱いひどっ」
【千早家に深澤義龍と艦魂赤峰が加入】
「あのー、すいません」
「はーい……ってあなたもそこからですか! さあまずお名前をどうぞ!」
見たこともない男の方々がクローゼットから出てきましたがもう気にしない。
「山本です。こっちが如月で、これが山崎」
「で……、今回は何をしに」
「さあ……、作者が行ってこいって」
こちらもメタ発言ですね。
彼らはまともそうだからいいかな……と安堵しかけたところ、
「あ、これバカルディじゃん。のもーぜ」
「おー、いいねぇ!」
「昼から酒盛りですか!」
そしてバカルディがなんでお家にあるのか見当もつきませ
「ゆうー⁉」
「……ったた……、姉さん大丈夫?」
すっごい美幼じ……美少女系の人と男の子(多分姉弟)がご来訪です。
「お宅はどちら様で⁉」
「あー……えっと、その前にここ、どこですか」
「ここは福岡県です。現代日本の。それからわたしは家主の佐和です」
ふたりは顔を見合わせた。多分お姉さんの方は弟さんの背に隠れている。
「福岡かー……あ、どうも。俺は堀切悠で、こっちが姉の唯です」
「ゆう、知り合い?」
「いや、そんなわけないだろ。作者が送り込んだんだろ」
「作者さんが……」
「まあ、寛いでてください。……あと、唯さん、その手のものはなんですか」
「んー……お洋服みたい」
にこっと悠さんに笑ったその顔にノックアウトされました。
こんな美少女がいていいんだろうか。
【山本恒史、如月弘隆、山崎裕生と、堀切 唯、悠が加入】
人が増えてきて、そろそろうちも限界に近い。
というか、普段独りで暮らしているせいか、なんだか息苦しい。
「ふわぁぁ~っ♪」
なんとも可愛らしい声がして、またクローゼット⁉ と訝しむと、
「佐和さん上!」
「はああ⁉」
天井から、誰かが、この家に、来た。
スカートをなびかせ、下りてきたふんわりした雰囲気の女の人。
「あらら、ひとがいっぱい。ここ、どこです?」
「……ここは、わたしの家です。あなたは誰ですか?」
「春日真理です。えっと……、魔法使いやってます」
真理さんはにこりと笑う。
魔法使い……まさか、異世界とか、次元超えちゃった系ですねわかります。
「うーん、でも、ちょっと失敗しちゃったみたい?」
「あはは……」
「魔法使えるの? 凄いな」
いつのまにかカメラを持った山本さんが真理さんの目の前にいた。
真理さんはちょっと困ったように笑う。
「ああああああのっ、大和さん、どこですか…………」
後ろから、か細い声が聞こえた。
一斉にそちらを向くと、涙目になっているツインテールの少女がいた。
……軍服っぽいものを着た。
「えっと……、まずあなたは、誰ですか?」
「わた、私、時風です……っ、艦魂といえば、分かるでしょうか……」
「ああ、君も艦魂なの? 私の赤峰もだよ」
にっこりと笑いながら話しかけた深沢さんに、赤峰が強烈な肘鉄を食らわせた。
「誰が、貴様の赤峰だ! ばかやろー……」
最期の方は真っ赤になって俯いてしまい、声が続かなかった。
深沢さんは時風さんに近寄ると、そっと頭を撫でた。
「大丈夫大丈夫、君の大和くんももうすぐここに来てくれるは
「時風?」
「や、やまとさぁぁぁぁぁあああんっ」
ぎゅうぎゅうと抱き付かれた大和さんは真っ赤になった。
「つか、ここどこっすか?」
「わたしの家ですよ。大和さんでしたっけ、時風さんも、ゆっくりしてください」
【春日真理、矢野大和、艦魂時風が加入】
その時、携帯が震えた。
ポケットから取り出すと、非通知の文字が。
……誰だろう。
「もしもし」
『もしもし、佐和くんかい⁉ 元気してるー?』
「切ってもいいですか」
声の主は、魔王と名高い(勝手にわたしが呼んでるだけだけど)、科学者の北村一輝さん。
某2.26事件の首魁と一文字違いで……ってそんなことはどうでもいい。
『なんでわたしの番号知っているの、という類の質問には答えません』
先回りして制された。
ぐっと黙り込むと、北村さんは、
『作者陣の話し合いにより、一斉にそっちに送るから♪』
「あなたまでメタになるのやめてくれます⁉」
『まあ私は作者の身代わりだからな。じゃあ一気に送るぞ、そーれ』
「ったあ……」
「ここ、どこなんだ……?」
『みーんなまとめておく……あれ?』
あ、しまった、という声が受話器越しに聞こえ、その後、断末魔が聞こえた、ような気がしないでもない。
「作者さんのところから送られました、参加してこいって。俺は新澤、こっちが艦魂のやまと」
「よろしくお願いします」
新澤さんという男性、たぶん軍関係の人、それから艦魂のやまとさんは、名前のイメージよりもずっと可愛らしい。
「俺は木南、んで、」
「飛燕です。よろしくお願いします」
わたしと同い年くらいの男女ペア。飛燕さん、綺麗すぎます。
そして木南さん……、どこかで見たことのあるような鉤十字のついた服を着ているんですが、気のせいでしょうか。
「私、この服着たいんだけど、お部屋を借りれますか?」
手に持った服をひらめかせる。和服? 多分きっと袴だ。
「どうぞ。そっちの部屋使ってください」
「ありがとう」
にこりと笑ったその顔をわたしは一生忘れません、すっごいまぶしかったです。
『送り忘れたのがもう一匹いたんだわ……、それは後で送るから、楽しんでけよ!』
繋がったままの携帯から、とぎれとぎれの声が聞こえた。
魔王北村さんを一蹴するほどの作者陣の威力半端ない……。
「送り忘れたもう一人って、誰だろ……」
【新澤大樹、艦魂やまと、木南連、川崎飛燕が加入】
「はあ⁉ いくら君でも、俺の顔にそんなことするのはやめて」
「文句は言わせん。さっさと来い」
「いや、そんな化け物みたいなメイクをしたら綺麗な顔が台無しになるだろ」
「ナルシストは黙ってろ」
残りのひとり、魔王北村さんと異空間に取り残され中。
ハロウィンには本編だけでも間に合わせます!
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