ちびっこ勇者のパーティー
「ふぁ…、よく寝たぁ…」
時刻はam5:00。
まだ朝日も昇っていない暗い森の中で、のそのそと野宿用テントから出てくる小さな影がひとつ。
「今日の朝ごはんは何にしよーかなぁ?あ、ハムと卵があるからサンドイッチ作ろっと♪」
食材の入った袋を見ながら嬉しそうに一人言を話すこの少女は勇者。
この世界を救うため、魔王と戦うことを運命づけられた少女である。
一見幼い少女にしか見えないが、年齢は10代後半である。
パンが程よく焼け、卵とハム、いろんな種類のジャムを塗ったたくさんのサンドイッチが完成したころ、勇者の出てきたテントとは別のテントから体格のいい影が出てきた。
「おぉ、今日はサンドイッチか。うまそうだな。」
「あ、戦士ー。おはようー。」
「おはよう勇者。」
この筋肉の塊のような体格の良い男は戦士。
大きな体とは裏腹な優しい性格と顔つきをもっている。
戦士に続いて、次は勇者の出てきたテントから二つの影が現れた。
「おはよう勇者ー。てか眠(笑)寒(笑)」
「勇者ーお腹空いたー!おっしゃサンドイッチ!」
長い髪に端正な顔立ちをした美女は賢者。
戦士ほどではないが、いい体格をした豪快に笑う女が武闘家だ。
「おはよう賢者、武闘家!ホットコーヒーも用意したから席についてて!」
「…またあいつは起きてないのか」
「そうだよ…あぁめんどくさい。戦士、起こしにいくの手伝って。」
「おう」
眉をひそめた勇者と呆れ顔の戦士は先程戦士が出てきたテントに近づいていった。
テントからは小さな寝息が聞こえてくる。
「盗賊ー、朝だよー起きろー。」
「盗賊、早く起きろ。朝飯が食えんだろうが。」
戦士と勇者が入り口から呼ぶと、のっそりとした人影が這い出てきた。
「…朝っぱらからうっせぇよ。静かに寝かせろよ…」
切れ長の目に睨みをきかせた不機嫌そうな顔、盗賊である。
「サンドイッチ作ったから早く食べよ。賢者も武闘家も待ってるよ。」
「別に俺には関係ない。」
「朝飯は全員で、がこのパーティーの決まりだ。早く行くぞ。」
まだ不機嫌顔の盗賊を引っ張るように賢者と武闘家の待つテーブルへ連れて行く。
「盗賊遅いー、お腹空いたー!」
「うっせぇよデカ女。黙れ。」
「私もお腹空いたー」
ぶーぶーと文句を垂れる三匹。
その間、勇者はくるくると働きテーブルに朝食を用意する。
「お待たせー!さ、早く食べよ!」
「ありがとうな、勇者。」
勇者が全部を用意し終わると、小さい子どもを誉めるように戦士が頭を撫でた。
「…子ども扱いしないでよぅ。」
頬を膨らませながら勇者は言った。
そんな様子を見て戦士が父親のような笑みで微笑み、パーティに告げた。
「さぁみんな、朝飯を食べたら次の町をめざすぞ。魔王はこうしてるあいだにも悪事を働いているかもしれないからな。」
戦士の言葉に全員が元気よく「はーい!」と返事をした。