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第七話 波乱のお茶会

調査記録 『双子の父親』

目覚めてすぐ、リディと面会をしていた。そこでなにを吹き込まれたのか知らないが、動けるようになってすぐ、「アイシスの子供とDNA検査をしたい」と言い出した。珍しく感情的になっていたためやってみると見事に一致し、晴れてレイヴィアとレイヴンの父親と証明された。


シャマール・レドモンド

性別は男、魔法属性は金属。現役職は前線総司令。出身国はギルシーユ公国。年齢は36歳でアイシスと同い年。

青みがかった銀髪にエメラルドのような瞳を持つ。殺し屋を生業としていた家に生まれたため、ほとんどの武器を扱える。また、幹部の中でも群を抜いて強い。強さと器用さを併せ持った彼に勝てる者などそういない。また、その強さと器用さはレイヴィアにも受け継がれており、早くもレイヴィアはその頭角を現し始めている。

アイシスの事を心から愛していたようで、彼女の忘れ形見とも言える2人をとても大切に思っているらしい。最近忙しくて2人にあまり会えないと、少し前に嘆いていた。

暗殺事件から2日。犯人は未だに見つからず、両国は犯人探しに躍起になって演習に参加した隊員全員に事情聴取を行った。レイヴィアとレイヴンも例にもれず事情聴取を受けることとなった。

コンコン

「どうぞ」

「失礼します」

そう言ってレイヴィアが扉を開けると、中にはリディがいた

「レイヴィア・フランセン大尉ですね。お待ちしておりました。こちらへおかけください」

そう言い、リディはレイヴィアを椅子へ案内する。レイヴィアが座ったことを確認し、リディは話を切り出した

「本日は、事情聴取へのご協力ありがとうございます。さて、建前はこれくらいにして、第一目標達成おめでとう。そして、お疲れ様」

「リディさん、これも全てあなたのサポートがあったからです。ありがとうございます!」

「私は舞台のセッティングをしただけ。うまく立ち回ったのはあなた達よ。あとの事は私に任せて頂戴。うまくごまかしておくわ」

そう言ってリディはレイヴィアに微笑みかけた

「ありがとうリディさん、あなたには助けて貰ってばかりね」

「気にしないで。それにこれは私がやりたくてやっていることだから」

リディはそう言い、時計を見た

「さあ、あまり長居すると怪しまれる可能性があるわ。もう行きなさい」

「はい、それでは失礼しました」

レイヴィアは退室し、自身の部屋へ向かった。その後は呼び出されることもなく、当初の予定よりかなり遅くなったが無事本国に帰る事ができた

サルバート連邦に戻ってから約1週間が過ぎた。暗殺事件の犯人は未だ見つからず、軍部内ではまだ緊張した空気が流れてはいるが、徐々に日常に戻りつつある。そんなある日、レイヴィアとレイヴンは報告書を出しに幹部棟に来ていた、ところまでは良かったのだが事件は起こった

「ヴィア!レイ!久しぶり」

そう2人の父親、シャマール・レドモンドに会ったのだ。

「......久しぶり、お父さん」

「...久しぶりです、父さん」

何が事件なのかと思う人がいるだろうが、2人はシャマールに苦手意識を持っているのだ。別に2人は彼が嫌いというわけではない。仮にも自分達の父親なのだ、むしろ好意的に思っている。

だが、彼といるときの周りの視線が2人には苦痛で仕方がないのだ。彼を「お父さん」と呼ぶと付近の人が一斉に双子を見る。それだけならばまだいい、監視されることには2人も慣れているから。だがその視線には双子とアイシスに向けられた、「嫉妬」「悪意」「不快感」「蔑み」など、様々な負の感情が込められているのだ。そんな視線を四方八方から向けられていい気がする人などいないだろう

「今日はどうして幹部棟(ここ)に?」

「報告書を出しに来ただけよ」

周りの視線が痛いのかレイヴィアは、俯きながら最低限の受け答えをする

「そんなの、1階の事務局に出しておけばいいじゃないか。なぜわざわざ軍務長官室がある4階まで来たんだ?」

「......事務局に渡しても、出していない事にされるので仕方なく自分で出しています」

レイヴンの言葉にシャマールは申し訳なさそうな表情を見せる

「......そ、そうだ、せっかくここまで来たんだ。一緒にお茶でもどうだ?」

その誘いにレイヴィアは少し考え、こう答えた

「......私とレイ、それとお父さんの3人だけなら」

「もちろん!久しぶりに家族水入らずの時間を過ごそうじゃないか」

その答えを聞いたシャマールは嬉しそうに言い、2人を自室に案内した

「さあ入って、さきにそこの椅子に座っててくれ。今お茶と茶菓子を用意するよ」

部屋に入ると、シャマールはすぐさまお茶会の準備を始めた。椅子に座り、一息ついたのかレイヴィアとレイヴンはふっと肩の力を抜いた

「お待たせ。そういえば、合同演習何やら大変だったようだね、まさかテスタニアとローズマリーが暗殺されるなんて......2人も行ったんだろ、大丈夫だったかい?」

「ええ、何ともなかったわ」

「そうか、それは良かった」

しばし沈黙が流れる。それが少し気まずいのか、シャマールはソワソワしている。それを見かねたレイヴィアが口を開いた

「ねえ、お父さん。もし、2人を殺したのが私だって言ったらどうする?」

「...!なんでそんなことを聞くんだい?」

『まさか、お前たちがやったのか』とでも言いたげな視線を2人に向ける

「例えばの話よ。最近、『あの、暗殺事件は2人がやったんじゃないか』って噂が立っててね、もしその噂が本当ならどう思うのか知りたくなったの。だから、そんなに真剣に受け止めないで」

そう言ったレイヴィアの表情はいつになく真剣だった。そのただならぬ雰囲気に少し圧倒されながらも、シャマールは答える

「......そうだな、もしそうなら...俺はお前たちを逮捕するさ。家族だからと罪人を見て見ぬふりをするなんて、あってはならないからな」

真剣なレイヴィアの問いに、同じく真剣に返したシャマール。それを聞いたレイヴィアは、ハッとあざけるように笑った

「もしそれが、お母さんの復讐だったとしても?私、知ってるのよ?お母さんは陰謀によって殺されたってこと!」

「な!どうして、それを......」

レイヴィアのあまりの迫力にシャマールはうろたえる

「リディさんが教えてくれたわ。ご丁寧にお母さんの手紙と一緒にね」

「あいつ...!待ってくれ、それじゃあ手紙に書いてあっただろう?アイシスは復讐を望んじゃ――

「そんなの分かってる!!これは私がやりたくてやってるの、私のやりたいことをやってなにが悪いの!?それに、たとえ親であっても私の人生に口を出す権利はな――

「姉さん!少し落ち着いて!ね?」

レイヴィアは椅子から立ち上がりシャマールに詰め寄る。それをレイヴンが必死に押さえつけ、レイヴィアをなだめる

「離しなさいよ、レイ!あなたまで私の敵になるの!?」

「ちょっと待って、姉さん!僕はそんなつもりじゃ......」

「そうよね!あなたもがっかりしたでしょう?私が復讐のために幹部を暗殺したんだもの、失望した?」

それを聞いたレイヴンが一瞬動きを止めた

(姉さんは一体なにを言っているんだ?この復讐計画は最初から2人で立てた計画じゃないか。どういうことなんだ......)

レイヴンはひっそりレイヴィアを見た。すると、レイヴィアもこっちを見ており、目でなにかを訴えようとしている。それを読み取ったレイヴンはこう言った

「......確かに僕は姉さんがそんなことをしているなんて知らなかった!だけど、それごときで姉さんにがっかりなんてしない!」

レイヴンがそう言ったのを聞き、レイヴィアは僅かに微笑む

(多分、姉さんは僕を巻き込みたくないんだ。なら、僕は知らないふりをした方が姉さんにとって好都合だろう)

「そう、良かった......それよりお父さん、さっきお母さんは復讐を望んでないって言ってたわよね?もしかして、それが復讐をしない理由?」

「......そうだ、アイシス(母さん)は望んじゃいない。だから、こんな事今すぐやめろ。今ならまだ間に合うから」

懇願するようにレイヴィアに訴えかける。それを見たレイヴィアは軽蔑の眼差しをシャマールに向けた

「本当、お父さんには失望した。お父さんはそれを言い訳にして、復讐するのが、真実を知るのが怖いだけなんでしょう!?仲間のうちの誰かが、いやお母さんに暗い感情を持っていた人達全員がお母さんを裏切った事を知っているから!そうでしょう!?」

「だったらなんだ!悪いか!?俺はアイシスほど強くないんだ、だから怖いんだよ!アイシスを死に至らしめた奴が軍内部にいると考えると周りが、みんなが信じられなくなってしまう!」

レイヴィアのみでなくシャマールも声を荒げ始めた。流石にまずいと感じたのかレイヴンが仲裁に入る

「姉さん!父さんも!2人とも少し落ち着いてください!」

「ッチ!とにかく、私は復讐を続ける。止めたいなら、他の幹部に暗殺事件の犯人は私だと言えばいい。別にそれを止めるつもりはないわ。それじゃあ、私はこれくらいで失礼するわね」

そう言い、レイヴィアは部屋を出て行ってしまった。そして、部屋にはレイヴンとシャマールが残された

「......落ち着きましたか?父さん」

「ああ、すまない。ついカッとなって言い過ぎてしまった。あとでヴィアにも謝らなければ」

その様子を見るに、本当に反省しているようだった

「そんなに落ち込まないでください。謝れば、姉さんは許してくれるはずです。それに僕は、今回ばかりは姉さんも少し言い過ぎたと思っています。姉さんにも後日謝るように言っておきます」

「ああ、すまないなレイ。お前には苦労を掛ける」

「良いんですよそれくらい」

その態度にシャマールは、懐かしむようにこう言った

「そういう所は本当にアイシスに似ているな。顔は俺そっくりなのに、中身はアイシスそっくりだ。でも、ヴィアは逆だな。顔はアイシスに良く似ているのに、性格は俺そっくりだ。」

そう言ったシャマールは微笑んでいた

「......そうですか。僕を見ると母さんを思い出しますか?」

「ああ、もちろん」

その答えを聞き、レイヴンは安心したようで、表情を緩ませる

「時々、もし僕が母さんの子じゃなければどうしようかと思う時があるんです。ほら、僕は父さんによく似てるのでもしかしたら、別の人との子かもなんて思っちゃうんです」

それを聞いたシャマールは慌てて否定する

「そんな訳ないだろう!?」

「知ってますよ。父さんは母さんの事が大好きですもんね。でも、ならなぜ母さんの弁明をしなかったのか、復讐しようと思わなかったのかと考えるんです。ねえ父さん、父さんはなぜなにもしなかったんですか?」

その問いにシャマールは黙り込んで、少ししてからゆっくりと話し出した

「アイシスが処刑されたとき、俺は昏睡状態だったのは知ってるか?目覚めてすぐ、リディが俺の病室に来た、そして手紙を渡されたんだ。内容は、多分2人と一緒だ。『自分の死について、弁明しようとするな。ついでに復讐しようとするな。』ってさ、他にも色々書いてて、2人の父親が俺だと知れたのも手紙のおかげだ」

手紙についての詳細はあまり話してくれなかったが、おそらく双子に宛てた手紙とほとんど変わらないのだろう

「最初は必死に弁明したさ、『あいつは冤罪だ』って。でも、俺がそう言うたびに周りは『アイシスに洗脳されている』だの『目を覚ませ』だの弁明すればするほど、俺はアイシスに騙された可哀想な奴になっていった。それだけならまだしも、それと同時にアイシスの評判も下がっていった。『死んでもなお厄介な女』だのなんだの言われて本当に辛かった」

シャマールは俯き、頭を抱える。その顔には悔しそうな表情を浮かべていた

「秘密裏に復讐しようとも考えたさ。でも、犯人は軍内部にいるって知ってやめた。ヴィアの言った通りだよ。俺は弱虫だから、これ以上仲間を失いたくなかった」

シャマールは目に涙を溜めながら必死に話す

「そうだったんですか」

「......かなり長い時間引き留めてしまったな。もうそろそろ部屋に戻りなさい。ヴィアが心配してしまう」

そう言われ時計を見ると、6時になっていた。ここにきたのが4時くらいだったので、かなり長居していることがわかる

「そうですね、では僕もこれで失礼します」

そう言い、レイヴンは部屋を出た。1人残ったシャマールは、声を殺しながら泣いていた

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