第三話 誕生日おめでとう
調査記録 『深紅の薔薇』
表向きは消滅したことになっているが、真相は不明。
深紅の薔薇の本当の首領
サルバート連邦軍所属の可能性大ということしか分かっていない。引き続き調査の予定。大々的に調べたいが、幹部達が良い顔をしないだろう。事件は解決したことになっているのだから。
アイシス拘束時、深紅の薔薇メンバーも約30人拘束。
拘束されたメンバーの特徴
魔法属性、一貫性なし 魔力量、一貫性なし 階級、一貫性なし 出身国、一貫性なし 男女比率、1:9 所属、メンバー全員サルバート連邦軍(他国との関係✖)
・メンバーは皆、『首領が誰なのか知らなかった』と供述しているとのこと。
・彼女らは皆、シャマール・レドモンド前線総司令に好意を抱いていたとの情報もあり。
・レドモンド前線総司令と仲の良かったアイシスに嫉妬した可能性あり。
・今現在捕まったメンバーのほとんどは国外追放され、残った一部の重罪人も処刑されたとの情報あり。
まとめ:メンバーに一貫性はほとんどなく、寄せ集め感が否めない。また、おそらく捕まったのはメンバーのほんの一部で、アイシスに恨みを抱いた人をかき集めたと思われる。
厨房へ行き、ティーセットを片付け終わる頃には既に6時を回っていた
「6時か、この時間は食堂混んでるから、あんまり行きたくないのよね......」
レイヴィアが顔をしかめながら言う
「レイどうする?行く?」
「うーん、僕も人混みは苦手だから行きたくないかな。それに今日はあまり食欲がないんだ。適当に購買で何か買って、部屋で食べよう」
「早くこれも確認したいし」と胸ポケットを指差しながらレイヴンが言う
「そうね、そうしましょ。正直、私もあんまりお腹すいてないし」
そう言い、2人は購買に向かう。途中、部下や別部隊の隊員とすれ違うが、皆一様に2人を見てひそひそと何かを話している。2人はいつものように知らんぷりを決め込む。それでもレイヴンは居心地が悪いのか、少し俯きながらレイヴィアの少し後ろを歩く
(ばれてないとでも思っているのかしら?バレバレだっつーの。)
普段なら気にならないはずなのに、今日は無性に腹が立つ。そそくさと購買へ向かい用事を済ませレイヴィアの部屋へ戻る
「本当、なんで購買は食堂の近くにあるのかしら?おかげでいろんな人に会っちゃったじゃない。わざわざ私達の顔見ながらひそひそ話なんてしちゃってさ。言いたいことあんなら直接言いに来いっつーの!」
「まあまあ姉さん落ち着いて。とりあえず腹ごしらえして、USBの中身確認しよう」
レイヴィアをなだめつつ話を逸らそうと試みる
「はぁ、気持ちの持ち様って大事ね。もう慣れたことだと思っていたのに、今日は無性に腹が立つわ」
レイヴンの試みは失敗に終わったようだ。だがそう感じていたのはレイヴィアだけではなかったようで
「それに関しては僕も同感だな。いままでは母さんのこともあったしそう見られても仕方がないのかなって思ってたけど、今日はなんか、あいつらのことぶん殴りたいって思っちゃった」
双子なだけあって思考が良く似ているのだろう。2人の小さな笑い声が部屋にこだました。ひとしきり笑った後2人は夕飯を食べ、机に置かれているパソコンにUSBを差し込み中身を確認する。中にはテキストファイルが1つ保存されていた
・アイシスを貶めたのは、深紅の薔薇でまず間違いない。
・深紅の薔薇はアイシスに恨みを持った人を集めた組織と思われる。
・アイシスと幹部達の関係は良好だったため、幹部達は深紅の薔薇とは関係ないと思われるが、良い関係を築いておきながら彼女を見殺しにしたのは少し引っかかる。警戒した方が良いかも。
確実なのはこれだけ、確証のないものはそれなりにあるのだけれど、それを渡してもあまり役に立たないだろうし、むしろ混乱させてしまう可能性もあるから今回はやめておいたわ。来月の会議でまたそちらに伺うからそれまでに用意しておくわね。欲しいならその時に言って頂戴。
と書かれていた。目を見張る情報がなくがっかりしていると、『コン、コン』と扉をノックする音が聞こえた。慌ててファイルを閉じ「どうぞ」とレイヴィアが返す
「失礼します。こんばんは、レイヴィアさん」
と言い入って来たのは、参謀総長の『レウイシア・リヒテンベルク』だった。彼を見たレイヴィアの顔が一瞬だけ引きつったが、すぐにそれを隠すように作り笑いを浮かべる
「お疲れ様です、参謀総長殿」
と言い敬礼をする
「おや、レイヴンさんもこちらにいらっしゃったのですね。こんばんは」
レイヴンがいることに気づいたレウイシアは彼にも挨拶をする。
「お疲れ様です、参謀総長殿」
レイヴィアにならい、レイヴンも敬礼する
「ところで参謀総長殿。どのような御用でこちらに?」
「軍務長官が今月分の報告書をレイヴィアさんから受け取っていないとおっしゃっていたので、忙しい彼女の代わりに私が受け取りに来たのですが」
「ああ!そうでしたか。わざわざありがとうございます。ええっと、こちらで合ってますか?」
そう言い午前中に書いていたであろう書類をレウイシアに手渡す
「ええ、間違いありません。こんな夜分遅くに失礼しました」
「いえいえ、こちらこそ、出すのが遅くなってしまい申し訳ないと軍務長官殿に伝えて下さい」
レウイシアが居なくなったことを確認し、レイヴィアは肩の力を抜く
「やっぱり私あの人苦手」
その発言にレイヴンはきょとんとした表情を浮かべる
「特に変な噂とか聞かないけど...どうして?」
「......確かになんでだろ。なんていうか、何考えてるのかよく分かんないのが怖いっていうか、得体の知れなさがあるっていうか......うーん、分かんないや!」
それっぽい説明ができなかったのか、「ほら、私って考えるの苦手だし」と言いながら笑っている
「なにそれ。まあでも、あの人は信頼できるんじゃない?確か父さんと仲良いはずだし。父さんも信用できない人と僕らと合わせるような事はしないだろうし」
「あはは、そうね。私の考えすぎかも。ってかやば!もうこんな時間!」
時計を見ると既に11時を回っていた。「明日早いのに!」とレイヴィアが慌てて寝る支度を始める
「僕も明日は早いから、もう寝るね。お休み姉さん、良い夢を」
「うん!お休み~レイヴンも良い夢見てね!あ、ちょっと待って」
部屋から出ようとするレイヴンを引き留める
「レイ!誕生日おめでとう。そういえば今日まだ言ってなかったや」
レイヴンはふっと微笑み
「姉さんこそ、誕生日おめでとう。今年が良い一年になりますように」
と言い部屋を出た




