第十一話 作戦成功
調査記録 『苦手な人』
「この人が苦手」と感じるのは過去の経験から来ていることが多いらしい。過去に会った苦手な人とその人の特徴が似ていると、その人も苦手に感じるのだとか。他にも、本能的に「この人は危ない」と感じ取り、そこから苦手意識が来ることもあるらしい。そういう時は、直感に従った方がいい。私の経験上、そう感じた人は大抵ロクな人間じゃない。
アデミール・チェルニャスカ
性別は男、魔法属性は風。現在の役職は外交長官。出身も所属もサルバート連邦。年齢は39歳。
サルバート連邦西部にあるワセナザレ区出身。首都からかなり離れているため、訛りの強い口調で話す。もちろん標準語はマスターしているため、単なるキャラ作り用だろう。
よく女性隊員を口説いてはその子を本気にさせて捨てているクズ野郎。本人曰く「マジになると萎える」とのこと。彼に「本気で恋したことはないのか」と尋ねてみたら、意外にもあるとのこと。相手はなんとアイシスだった。アデミール曰く、最初はいつもみたいに遊び半分で口説いていたらしい。だがアイシスがあまりにも振り向かなかったため、いつしか本気になっていたとのこと。
私は彼が苦手だ。純粋な乙女心を弄んで一体なにが楽しいのかさっぱり分からない。
レイヴィアが目を覚ますと独房にいた。おそらく監視員がここまで運んだのだろう。外はすでに暗くなっており、正確な時間は分からないが夜であることが伺える。起きたばかりで目が冴えていたため、彼女はこれまでの情報を整理することにした
(とりあえず、今までの情報を整理しよう。まずは、レウイシア。多分彼が黒幕で間違いない。ここから出たら、すぐにでも殺してやる。次にアスカ、彼女もお母さんを憎んでたわね、関係ありと見て間違いないはず。......ここまで来ると、他の幹部も怪しくなってきたわね......もういっそのこと皆まとめて殺しちゃおうかしら。ここまで危険を冒したかいあって一気に情報が出てきたわ。この調子なら、なんとか復讐を完遂させられそうね!)
明日はレイヴンと面会する予定のため、あらかた情報をまとめたところでレイヴィアは眠りに就くことにした。
翌日、計画通りレイヴンが訪ねてきた
「久しぶり、レイ。元気にしてた?」
「僕は相変わらずだよ。姉さんは、元気にしてた?」
その後も面会時間いっぱい他愛のない会話が続いた
「それじゃあ僕はこれくらいで失礼するね」
「あ、待って。言い忘れてたけど、私1週間後に処刑されるから」
さっきの話の続きでもするかのようなトーンでレイヴィアが言う
「え?......は!?もっと早く言ってよ、それ!ていうか、そんな買い物行くみたいなノリで言わないで!?」
レイヴンから当たり前すぎるツッコみを入れられる
「ごめんごめん。そんじゃまた、処刑場で会おうね~」
そう言ってレイヴィアは面会室を出て行った
1週間後、処刑当日の夕方4時頃。レイヴィアは数名の監視員に囲まれながら、処刑場へと向かっていた。サルバート連邦では銃殺が一般的なため、レイヴィアを囲む監視員達は皆、銃を持っていた。処刑場へ着くとすでにかなりの数の隊員達が観衆として集まっていた。そして、観衆の最前列には幹部達がいた
(特等席で処刑を見ようだなんて趣味が悪いこって)
そんなことを思いながらも、レイヴィアは処刑台へと連れられ柱に縛り付けられる。そして、彼女を囲むようにして監視員達が整列する
「構え!」
バルバロッサの声が辺りに響く。先ほどまでのざわめきが一瞬にして静まり返った
「狙え!」
全ての銃口がレイヴィアへと向けられる中、彼女は目を閉じ、穏やかな笑みを浮かべている
「......撃て!」
その掛け声とほぼ同時に、処刑台に誰かが乱入してきた
「凍界静止」
レイヴィア目掛けて飛んでいた弾丸が一斉に止まり、その場に落ちる音が響いた。レイヴィアがゆっくり目を開けた
「ナイスタイミングね。来てくれるって信じてたわ、レイ」
「当たり前だよ。姉さんが殺されそうだっていうのに、指くわえて見てるわけにはいかないでしょ?」
そう言っている間にもたくさんの弾丸が2人目掛けて降り注ぐが、全て2人に当たる数十センチ前で静止し、重力に従って落ちる。それをものともせず、レイヴンはレイヴィアを縛り付けているロープをほどいていく
「ほどき終わったよ。あとこれ、いつも使ってる銃とナイフ。没収されてたでしょ?盗んできた」
「ありがと。ずいぶんと大胆なことするわね......」
レイヴィアは苦笑いを浮かべながら、残弾数をチェックしている
「てか、あんまし弾ないじゃん......」
「悪かったね!いかんせん時間が無かったんだよ」
「別にいいわ、外さなければ問題ないしね!天雷照準!」
レイヴィアはそう言い、監視員目掛けて発砲した。発射された弾丸は一直線に飛んでいき、まるで吸い込まれるように命中し、監視員はその場に倒れ込んだ。同じように続々と他の監視員達にも発砲していく。
見事に全て命中し、監視員達はその場に倒れ込んだ。その場にいた皆がその光景に圧倒され動けずにいると、インカム越しにアスカの声が聞こえた
「総員!ぼさっとしてないで、2人を捕らえなさい!」
その声にハッとし、皆一斉に処刑台へと向かってくる
「......この数を相手にするのはさすがに厳しいかも。ここは逃げることを提案するわ」
「僕もそれに賛成だよ......でもどうやって逃げれば......」
そう言い合っている間にも隊員達が迫って来る
「ここは1つ。私に身を委ねてみない?」
「......あんま無茶なことしないよね?」
レイヴンの問いにレイヴィアはニコニコするだけで何も答えない。その表情にレイヴンは不安を隠せないが、こういう時のレイヴィアは一歩も引かないため渋々彼女に任せることにした
「......はぁ、どうせ強行するんでしょ?分かったよ、姉さんに任せる」
「ありがとう、レイ!私に任せなさい!雷鎖縛」
そう言うとレイヴィアの手元に鎖が現れた。レイヴィアはその鎖を自由自在に操り、統制拘禁区入口付近の柵に絡めた
「よし、うまくいった。私にしっかり捕まってて、レイ!あと、鎖に触らないように気を付けて。感電しちゃうから」
そう言うとレイヴィアは片手に鎖を巻き付け、もう片方の手はレイヴンの背中に回す。レイヴンは両腕でレイヴィアに抱き着く
「準備はいい?行くよ!!」
レイヴィアは鎖の長さを瞬時に短くし、一気に入口まで引き寄せられる。そのまま柵を飛び越え、レイヴンを抱えたまま走る
「まずいよ、姉さん。あいつらもう追いついてきた!」
「わ、本当だ。急がないとっ!雷閃!」
雷閃を発動し、隊員達との距離を引き離しながら、最寄りの出入り口である裏門へと急ぐ。無事に裏門へとたどり着き門を飛び越え、そのままさらに走る。しばらく走り続け、追手が来ていないことを確認し、裏路地へと入った
「はぁ~疲れた。少し休憩させて」
そう言ってレイヴィアはその場に座り込んだ
「お疲れ様。よくもまあ僕を抱えてここまで走れたね」
「こう見えても体力はあるからね。それよりこれからどうすんの?」
レイヴィアがそう聞くとレイヴンが懐から地図を取り出し、地面に置く
「少し戻ってこの道を真っ直ぐ行くと、情報屋がある。そこで匿って貰おうと思う」
地図には一か所丸印がついており、どうやらそこに情報屋があるようだ
「でも本当にそこで匿ってくれるの?明日には国を挙げて捜索されるでしょうし、そこで軍部に突き出されたりしない?」
「その心配はしなくていいよ。4日前にリディさんが来て教えてくれたんだけど、そこのトップの人が母さんと仲良かったらしいんだよ。だから、リディさん経由で連絡を取ってみたら快くOKしてくれた」
それを聞き、レイヴィアは立ち上がる
「なら、早くその情報屋に行こ。そんで、そこで休ませて貰おう」
レイヴンの話を聞き、レイヴィアは納得したようだ。一般兵がまだ探しているかもしれないことを危惧して、少し遠回りになるが裏道を通っていくことにした。30分ほど歩くと、目的地の情報屋に辿り着いた。中に入るとそこはバーのようになっており、店員以外誰もいなかった
「すみません。『ナタリー・カレラス』さんはいらっしゃいますか?」
店員は動きを止める
「......お名前を伺っても?」
「レイヴン・フランセンです」
レイヴンがそう言うと、店員はカウンターから出てきてついて来いと言わんばかりに手招きをする。店員について行くと、一度外へ出て建物の裏口へ回った。裏口の扉を開けると、そこは地下へ続く階段になっていた
「この階段を下りた先にある扉の先にいらっしゃいます。足元にお気を付けて行ってらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
レイヴンはそう言うとレイヴィアを連れて階段を下りていった。階段を下りた先に扉があり、その扉を開けると中で1人の女性が待っていた
「やあ。直接会うのは初めましてだね?レイヴン」
「初めまして。ナタリーさん」
そう言いレイヴンがペコリと会釈する
「それと、そっちのレディがレイヴィアちゃんかな?本当にアイシスそっくりな美人さんだねぇ」
「......」
レイヴィアはナタリーを警戒しているのか、一言も発さず会釈だけする
「まあ、今日は疲れているだろうし、そっちに部屋があるからそこで休みな」
そう言いナタリーは奥の扉を指差す。2人は言われた通り奥の部屋で休むことにした
「とりあえず、作戦は成功かな。何かいい情報は得られた?」
「ええ、十分すぎるほど集まったわ。正直ここまでとは思わなかった」
「本当!?なら早速教え――
「その前に!疲れたから一旦寝よう?起きたら話すからさ」
レイヴィアの顔には隈が浮かんでおり、目も半分閉じかけている
「分かった。それじゃあ、おやすみ姉さん」
「うん......」
そう言ってレイヴィアはベッドに寝転がる。1分も経たずにレイヴィアの寝息が聞こえてきた
「まったく。布団も掛けずに寝て......これじゃ、風邪ひいちゃうよ?」
そう言ってレイヴンがレイヴィアに布団を掛ける。その隣でレイヴンもまた眠りについた
『凍界静止』
発動すると直径約3メートルの防壁を展開する。また、防壁からは冷気が発せられており、周囲の動きを鈍らせることもできる。防壁の強度、継続時間は使い手の魔力量によって決まる
『雷鎖縛』
電気を帯びた鎖を出すことができる。長さを自由自在に操れることから拘束用に使われることが多いが、他にも様々な用途がある




