第十話 黒幕への手掛かり
調査記録 『アルビノ』
アルビノとは、正式名称『先天性色素欠乏症』の事で、生まれつきメラニン色素がほとんど作られない、または少ない体質のこと。アルビニズムと呼ばれることもある。そもそもアルビノの原因はメラニン色素(髪、肌、瞳の色を作る色素のこと、紫外線から体を守る役目もある)が、うまく作れない遺伝子の変化によって起こるもので、医学的には遺伝性疾患に分類される。遺伝性疾患のため治ることはないが、他の人に移るものでもない。
見た目の特徴としては、髪や体毛が薄い色だったり、皮膚がとても白かったり、目の色が薄かったり赤っぽく見えたり、視力が弱いことが多かったり、などがあげられる。
日常生活への影響も個人差はあるが、視力の低下や羞明、立体視が苦手だったり、日焼けすると赤く炎症が出たりすることが多い。だがそれらは、遮光サングラスや帽子、UVカットの衣類などで調節可能。問題は知識不足からくる差別や偏見だ。でもこれをなくすことは軍医総監である私の仕事。これからも正しい知識を広めていこうと思う。
レウイシア・リヒテンベルク
性別は男で、魔法属性は持っていない。現在の役職は参謀総長。出身国はテルノジア連合国で、年齢は38歳。
彼の最大の特徴は先天性色素欠乏症、通称アルビノであることだろう。プラチナブロンドの髪に色白の肌、そしてグレーの瞳。羞明で立体視が苦手、しかし運動神経は人並みで、頭がとても良い。彼は過去の話をあまりしたがらない。教えてくれた事と言えば、テルノジア連合国の一般家庭で生まれ育ったという事だけだ。だが、テルノジア連合国ではアルビノへの理解が進んでいない。そのため、周りからアルビノに対する差別や偏見に苦しんでいたのだろう。ここでは彼にそのような思いはさせたくない。
アイシスとは、比較的仲良くできていたように感じる。
レイヴィアが目を覚ますと見覚えのない場所にいた
(ここはどこ?確か私は総帥室で倒れたはず)
ゆっくり起き上がり、辺りを見渡すと、3方をコンクリートの無機質な壁で覆われ、残りの1方は鉄格子で覆われている。明かり取り用の窓から外を見ると鉄格子が邪魔でよく見えないが、おそらく外は暗い
(ああそうか、私捕まったんだ。なら、ここは多分『罪人棟』かな。結局捕まっちゃったか~まあ、それも想定内なんだけど。まあそれでも捕まりたくはなかったな~尋問だの拷問だの怖いし)
なんて呑気に考えていると、誰かが近づいてくる足音が聞こえる
「ようやく起きたか、レイヴィア・フランセン」
鉄格子越しに誰かがこちらを見ている。声からして男だということは分かったが、蛍光灯の明かりが逆光となり顔はよく見えない
「......あなたは?」
レイヴィアがそう問いかけたが、答える気はないらしく何も言わずに独房の出入り口のカギを開ける
「知る必要はない。それより起きたのならついて来い」
なんの説明もなしに、ついて来るよう言われ、レイヴィアはそれに従い監視員の後ろをついて歩く。歩きながらレイヴィアは監視員に質問を投げかけた
「私はどれくらい眠っていましたか?」
「半日程だ。そこまで長くは眠っていない」
しばらく歩き、第三尋問室と書かれたプレートが掛けられた部屋に通される。レイヴィアはそれを見て、これから尋問を受けることを察した。中に入ると、中央に椅子2つが机を挟んで向かい合う形で置かれており、そのうちの1つの椅子に座るよう指示された
「そこの椅子に座って待ってろ。今、軍務長官殿を呼んで来る」
そう言い、監視員は出て行った。怪しまれないよう、レイヴィアは素直に指示に従い指定された椅子に座って待つ
(もう新しい軍務長官が決まったのね。諜報長官と副長官は未だに決まっていないというのに。それより、私が意識を失う前に見たシノノメ軍務長官にそっくりなあの人は本当に幻覚だったのかしら?それにマドカって、誰のこと?これ以上はやめておこう。私はレイみたいに頭が良くないから考えたって分かんないし)
レイヴィアが考えることをやめた辺りで扉が開いた。中に入って来たのは、なんとアスカだった
「!?どうしたあなたがここに?あの時確かに殺したはずなのに......」
「あなたと交戦したのは私の妹の『マドカ』です。そして、本物のアスカは私です」
「あなたに妹がいるなんて情報はなかったはず!本当はあの時戦ったのはあなたで――
「落ち着いてくださいレイヴィアさん。そんなことはどうでもいいでしょう?それに私はあなたの質問に答えましたので、次は私の番です。どうして総帥閣下を狙ったのですか?」
アスカはレイヴィアに冷ややかな視線を向ける。マドカを殺されたことに相当怒っているらしい
「お母さんの復讐のためです。それ以外になにか?私は他の人達と違って権力に興味なんてありません」
レイヴィアが気だるげに答える
「さて、次は私が質問する番ですね。あなたとマドカさんは2人で1人の軍務長官を装っていたということで間違いないですね?なぜ、そんなことをしてたんです?」
「......それに答える義務はありません。レイヴィアさんは尋問ってご存じですか?」
「もちろん知ってますよ。私のことバカにしすぎでは?」
その答えにアスカは苛立ちを隠せない
「あなたを見ているとアイシスさんを思い出します。敵国から来たくせにたくさんの人から色んなモノを奪っておいて、さもそれが当たり前であるかのようにする。そんなことばっかりしているから嫌われて、憎まれて、処刑されたんですよ。きっとバチが当たったんだわ。そんなんだから殺されるのよ」
「......あ?あんた、今なんつった?」
アスカに鋭い視線を向ける。レイヴィアは自分への悪口には一切動じないが、レイヴンやアイシスの悪口を聞くと手が付けられない程に怒るのだ
「あんたの大事なモノが何なのかは知らないけど、自分が手に入れられなかったモノをたまたまお母さんが手に入れたからって、逆恨みすんなよ。それに、今”殺された”って言ったな?なんでそれを知ってんの?知ってたんならなんで止めなかった!?」
「ハッ!ここまで言っても分からないなんて、あなたバカでしょう?それとも信じたくないのかしら?いいわ、教えてあげる。私も、あいつを処刑まで追い込んだうちの1人だからよ」
それを聞き、レイヴィアは自分達が大きなミスをしていることに気づいた。リディの調査記録には『幹部達との仲は良好だった』と書かれていた。だからいままで、バルバロッサ以外は復讐の対象外だったのだ。そのため、レイヴィアは内心すごく焦っていた
「嘘でしょう?そんな、どうして......だって幹部達の仲は良かったって。もしかして他の人も?だとしたら、作戦を立て直さないと......」
「......これ以上は続けられなさそうね。今日はもう独房に戻りなさい。後日また来るわ」
レイヴィアがブツブツと色々な事を呟いている間に、アスカは尋問室を出て行き、変わりに先ほど尋問室まで案内してくれた監視員が入って来た。彼に連れられレイヴィアは尋問室を後にし、自分の独房へと戻った。それから数日かけて何度か尋問が行われ、罪人棟に来てから約1週間後、今度は面会室へと連れて来られた。中に入ると、レウイシアが椅子に座って待っていた
「お久しぶりです、レイヴィア・フランセンさん。こんな形で会うことになるとは、非常に残念です」
そう言うとレイヴィアを面会室まで連れてきた監視員を退室させ、レイヴィアに近くの椅子に座るよう促す
「あなたの処分が決まりました。レイヴィア・フランセン大尉、あなたは総帥閣下に怪我を負わせ、マドカ・シノノメ軍務長官、テスタニア・トルンブロム諜報長官、ローズマリー・ウエストモア諜報副長官を殺害しました。よって、死刑に処する。処刑は1週間後に行われる予定です。以上」
レウイシアがそう言い終わると、レイヴィアが口を開いた
「1つだけ質問してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
レイヴィアは少し間を開けてから問いかけた
「レイは、レイヴン・フランセンはどうなるんですか?」
「彼にはいままで通りここで働いてもらうつもりです。変化があるとすれば、上官が変わるくらいでしょう。ところで、なぜそんなことを聞くんです?」
レウイシアはレイヴィアに疑いの目を向ける
「私の復讐に弟が巻き込まれてないか確認したかっただけです」
レイヴィアはいらぬことを口にしてしまったかと焦りながら、なんとかそれっぽいことを言ってかいくぐった
「......そうですか、復讐......なら冥土の土産に1つだけ良いことを教えてあげましょう」
そう言ってレウイシアはレイヴィアに近づき、小さな声でこう言った
「実はアイシスさんを殺したの、僕なんですよ」
「......は?」
レイヴィアは目を見開きレウイシアを見る。レウイシアは悪びれる様子もなくただ静かに笑みを浮かべていた
「それ、本気で言っているの?」
「ええ、もちろん。冗談でこんなことをあなたに言うのはリスクが高すぎるでしょう?」
レイヴィアの目に殺意がこもる
「貴様!!殺す!絶対に殺す!お前も道連れにしてやる!!!」
そう言ってレイヴィアはレウイシアに飛び掛かり、馬乗りになる
「何事ですか!?」
部屋の前で待機していたであろう監視員が、騒ぎを聞きつけ勢いよく扉を開ける
「レイヴィア・フランセン何をしている!」
監視員が2人ほど来て、レイヴィアを取り押さえる。レイヴィアの必死の抵抗もむなしく鎮静剤を打たれ、そのまま気を失った
罪人棟
軍部内にある統制拘禁区にある拘禁棟の通称で、軍法違反者が収容されている。第一拘禁棟と第二拘禁棟の2つがある。統制拘禁区には拘禁棟2つの他に、『監視棟』『尋問棟』『拷問棟』『処刑場』がある。第一拘禁棟と第二拘禁棟は、拷問棟と尋問棟を介して繋がっている




