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僕の決定《改訂済》



 無駄を省くとかなりページが減ることに気付きました。


 …それだけ無駄しかなかったということです。







 ―知ってるかい?


 君達には


 …勿論僕もだけど


 僕等には、ベースが有るんだ。



 不思議気に、少女が首を傾げた


「……ベース、って?」


 ベース。


 僕等の原形。そして、

「君等の先祖だ。」


 疑問符が溢れた様な顔をされる。


 喉が渇いたので泉の水を手のひらで掬った。


 が、乾燥した血が溶けて水が赤く染まり、飲む気が失せる。緩んだ指の間からそれは逃げていった。


 何となく、腕にこびり付いた血を濯いでみた。

 腕の血はオアシスに溶ける。

 そのまま僕は続けた。


「―僕も君もルーツは同じ。ベースが存在する」


「…何で今そんな事??」


 皮膚に張り付いた血が無くなると不快感が軽減した。

 この際だからそれが出来る部分は洗っておこう。


 …そう言えば傷が痛まなくなって来ている。


 単なる気のせいだろうか。

 そうでないなら既に治癒が始まっているのかも知れない。



「『僕』の説明の為にはそこから説明しないと説明できない」


 残念ながらそこまでの頭脳は持ち合わせていない。


 それが出来れば最高なのだろうけど。



 彼女は首を捻る。


「そうなんだ?」


 頷いて答えにした。


「それで、何だっけ?えっと、ルーツとかベースとか?」


「そう」



 手が綺麗になったのでやっと水を飲むことが出来る。

 口に含んだ水には微かな塩分を感じた。


 そう言えば彼女の家で飲んだ水も塩辛かった。


 彼女が一生懸命、此処に独りで―…と、思うと何だかそんな場所に連れてきてくれた事が嬉しくなってくる。



「君は元々此処にいた訳じゃないんだ」


 彼女は益々不可思議そうな顔をした。


「……あたしはココで生まれたよ?」


 腕や顔以外の血が気持ち悪い。

 熱いシャワーを浴びたいと思った。


「うん。君自体は此処に生まれたんだろうね」



 僕が言う『此処』はこの無限の砂漠じゃない。


「此処っていうのはこの星のことだよ」


「星?星って…」



 彼女は夜空を指差した。


 その空を見上げてみる。

 辺りには灯り一つ無いので、空の星はプラネタリウムのように鮮やかだった。


 ばら撒いた星を掻き分けるように、同じ月齢の異なる天体が浮かんでいる。この星の衛星だ。


 全部で3つの、それらは月。


 確か各個に無機質な名前が在ったと思うのだが、面白味の欠片もなかったので忘れてしまった。


 01の何たら―とか、そんなつまらない感じだったと思う。



 それに僕等には必要のない知識なのか、執拗に教え込まれることも無かった。


 …そんな事、気にした事も無かったのに。



「星って、この惑星の事」



 空気の透明度が高いが為に、余りに鮮やかな空を見て思う。


 ―この惑星も、広い宇宙のどこかの星から見上げたら、この星々のように輝っているのだろうか。


 ……いや、馬鹿か僕は。


 この星は恒星じゃ無いから見えないんだ。



「よく分かんない」


 彼女に宇宙の話が通じるだろうか。

 最悪宇宙を知らない可能性すら有る。


「…うーん。…僕達が住んでるのがボール型の星だって事は知ってる、…よね?」


 地球球体説は?


 ……此処は地球ではないが。

 今更そんな言葉は死語だろうか。



「……ぼーる?」


 …そこにきたか。


「こんな―完全な玉の形」


 手でパントマイム。技術についてはノーコメントで。


「あぁ、そういう事か! だったら知ってるよ」


 良かった。

 なら説明のし様もあるというものだ。


「僕等のルーツは違う星から来たんだ」


「…それって…」


 ―暫く考えて、



「私達の祖先が宇宙人ってことぉぉ!!?」


 彼女の耳がピンッと立った。

 僕は思わず笑ってしまう。


「―面白いね、宇宙人か」


 そうか。

 そういう視点か。


 ―じゃあ、僕はずっと、宇宙人の方から世界を観ていたのか。


 侵略者の自覚など欠片もない、奴等の手足として。


 偽善が何かなんて分からないけれど―


 それでも僕は、あちらの行動を『悪だ』と思った。


 それこそ偽善的な正義に不信感を抱いてしまった。


 …だから『裏切った』。


 しかし完全に、後悔もしないほど思いが定まっている訳ではない。


 あちらの言い分も共感できる。


 客観視して『悪』だとは思ったが、間違いだとは思わない。

 仕方のない悪だって在ると思う。


 …だから、分からないのだ。



 自分の下した選択が本当に正しいのか。




 ―あちら、…僕の部下や製作者達から見た僕はのコレは、精神異常なんだそうだ。


 僕等は戦う事に疑問を抱かないように出来て―いや、教育されている。


 純粋に、安っぽい正義の理論を信じるように。


 ―だから部下達は皆、本部に僕を『治療』に連れて行こうとしていた。

 目的は、情や欲と様々だったようだが。



 それらの派閥で支部内は二つに割れ、あそこは事実上崩壊状態だったのかも知れない。


 僕はある日意を決して部下を捨て―支部を出た。



 出世や報酬に目的を置く者は僕を追い、捕獲のために攻撃した。



 反撃をしなかった僕のリミッターは解除され、

 後は、自分に向かってくる者を無差別に切り裂いた。―DNAのプログラムに支配されて。



 頭が覚め、気付けば周りには誰も立っていなかった。


 絶望して、叱咤して、懺悔して、悲観して、虚構だと信じたくて、


 ―でも、それは紛れも無く真実の現実。



「…そう、ある意味、僕達は宇宙人なんだよ」



 僕はそれを受け入れなくちゃいけない。


 現実はいつだって、後悔塗れで受け入れ難い。


 でも受け入れなくちゃいけない。認めない限り、納得しない限り、何一つ変わる事は無い。


 ―だから、とりあえずは納得した事にして…納得した振りをしてみようと思う。



 …いつか本当に実感に変わればいいなぁ―なんて。



「僕等のルーツは違う惑星からやってきた。…―そして、この星に移住した」


 ―人間。

 僕達のルーツであり、ベースであり、創造者。


 彼女も元は皆造られた存在。


 造られて、利用されて、見捨てられて、人間を裏切って、戦って、勝った。



「それで?」


 面白そう、と、彼女は身を乗り出す。


 ―僕は話そう。

 このモヤモヤの片棒を担いでくれるかも知れない。


 巻き込んでしまうけれど―


 それも含めて、話そう。



 僕の所為で、彼女に帰る場所は無いのだ。


 僕と一緒に来て貰おう。

 危険からは僕が護ろう。


 それが責任、それが懺悔、それが、罪滅ぼし。


 それで彼女に『謝る』事が出来るのなら、僕は何だってしよう。


 後悔する位なら行動した方がいい。



 ―どうしてか、そう思った。

 行動、しよう。



 『正解』は判らないけど、

 僕は僕の正解を信じよう。


 少しでも天秤の傾いた方に味方をしよう。



 ―それがどんなに僅かでも


 何も目的が無いのは辛い。



「昔―」




 彼女の大きな瞳が僕を真っ直ぐに僕を見詰めていた。







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