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波と峠越 ②

何故転倒に及んだのか?

(。´・ω・)?

 雨は相変わらず強い侭、風は酷くなり路肩の木々は道路中央迄撓るように風に弄ばれてる、避難所を出たのが15時過ぎ、自宅に立ち寄り海岸線で時間取られ現在は18時15分。


 此の季節の快晴なら19時過ぎでも明るく、今の時間なら海に沈み征く太陽の残光で空が青から茜色を過ぎて、ピンクがかった紫へ、最後には濃い群青色に為る、暗く成り肉眼で川の流れの様に天の川が見える迄佇み空を眺めて居たく為る時間なのだが…。


 今、見上げる空には濃い暗雲が立ち込め、薄暗く為り遠慮なく降(しき)る土砂降りの中に俺は立っている、直ぐに体に異常が無いか確認すると幸いな事に打ち身位で走り出しても身体に支障は無い。


 然らば次にやる事は《此奴は走れるのか?、走行に支障が出るような破損等は無いのか?》自身の身体に続けて相棒の確認を行う、遅く為れば為る程暗く成り近付く台風の影響で状況は悪化する、車体を起こし確認したが幸いな事に走行に影響は無く、ステップとエキパイに転倒時の傷とフロント右ウインカーレンズが割れただけで走行する事に支障は無い。


 何故転倒に及んだのか?、此のブラインドコーナーの頂点は土木工事用に必要な土砂を削り運び出す場所、此の凄まじい降雨で山肌の削られた箇所が崩落し積み出し用に留置された土砂と併せて路面に流出しコーナー出口付近を塞いで…。


 気付かず其の侭突っ込んいたら土砂に乗り上げガードレールすら無い崖下へ真っ逆さまだろう、其れこそ台風過ぎて捜索隊に発見されるまで其の侭だった可能性が高い。

 以前此の峠道でコーナを曲がり切れず落ちた車の事故では捜索から車体の引き上げまで2日掛かった、未だ車なら発見もし易いがバイクと人間なんて、然も台風の影響で道路上に落ちた痕跡が残るかも怪しく見つけて貰えるか如何かも判らない、今回転倒してしまったが其れに()り崖下に落ちずに済んだ、転倒した事で俺は九死に一生を得たと言う事だ。


 此処で無駄な時間を消費しても状況は更に悪化する、直ぐにエンジンを掛けギアをローに入れる、幅5m位で50㎝程の高さに堆積した土砂、履いた長靴がズブズブ沈み勿論その上をオンロードタイヤのバイクで走れる訳も無い、俺の足も沈むし此奴のタイヤもチェーンに触れない位にギリギリ沈む、空転するタイヤが泥を高く撒き散らす、動力の手助けを借り押して堆積した土砂を渡り乗り越た、さあ此処から再スタート。


 此処が上り最後のコーナーだやっと頂上に到達、今迄の昇り道は南側以外の三方を山に囲まれて風も抑えられていた、今居る頂上は巨大な鉈で山を左右に割った様な場所、山に当たる風が逃げ場を探し東西に抜ける此処に猛烈に吹き抜ける、先程書いた夕日の景色は此処からの眺望。


 眼下には西側に遮る物の無い水平線が広がる海、南西から此処へ向かってくる台風は俺の視界の先に居る、此処から先の下り道は遮る物が無く此方に向かう台風に対峙する様に真面に風を喰らう、急な下りと急コーナーが連続する中を風を喰らって進んで行く。


「今度は風とか…」

 ギアを入れ下り始める、早速コーナリング中に急に向きの変わる風に煽られる、山肌や崖側に車体を掴まれ振り廻されてる見たいだ、風を切り裂く様に速度を上げ道幅ギリギリ踏み止まる、此の天候の中で此の速度ハッキリ言って正気の沙汰じゃないそれは自分でも解ってる、速度を下げると風に捕まり車体がもっと振り廻され崖下や山肌に沿って作られた深い溝に運ばれる、だから速度を落とせない気合と根性で下って行く、途中川のように為った湧き水に何度もタイヤを取られ乍らも下り切る、其処には此方に背を向けた警官が峠道へ車両の侵入を阻止する為立って居た。


 バイクの音に気付き振り返る駐在さんは峠を越えて来た俺を信じられない様な物を観た様な顔をする。

「お前無事なのか?、お前何処から来たんだ?」

と、声を掛けられ出て来た集落を告げ、峠を越えて来た事を伝えると更に信じられぬ顔をする、此の峠を含む海沿いの国道は随分前に通行規制掛かっていた、時間からすると俺が自宅を出た頃だろう、実際走って来た俺もそうだろうなと納得する。


「それで何処へ行くんだ?」

と聞かれ祖父母の名前伝えると。

「用事が済んだら其処なら安全だから、此の後はもう外に出るなよ!」

そう言ってくれたが、どっちにしても此の台風の中を此の道で帰る事は出来そうに無い、礼を言い祖父母の家に向かい走り出す後は平地の内陸の道で風さえ気を付けさえすれば問題無い。


 到着して直ぐ作業に取り掛かり割れたガラスの掃除をして古い畳とコンパネで窓を塞ぎ応急処置作業終了、一息入れてTVのニュースを観る…、幸いに此処は崖も無く海からも離れた内陸の地で雨の影響も受けにくい場所だ、<心配ないな>と思い其処を後にする。


「じゃあ帰るよ!」

 そう言い残し再び走りだす、当然の様に台風の通過迄此処に留まる様に言われるが、大丈夫と言い残して祖父母の家を後にした。

「しかし如何やって帰るかな?」

(・・?


 此処迄来た道はもう使えないTV放送は既に風速40メートルを超えてる。

 <戻ってももう寝てるんだろうな…>

此の悪天候の中止める方向に気持ちが向き始める。

 <起きた時に無いと泣くんだろうな?、持って来ると言っちゃたし…>

と気を取り直す。


「燃料は充分有るし、あのルートなら十分行ける!」

 只そのルートは十分整備されているが此処迄の倍以上の距離を走る事に為り、然も明かりすら無い夜道で台風の雨と風の中…。


「ハッピーな条件だな此れって完遂したら武勇伝、其れとも気が振れたと思われるかな?、如何考えても正気の沙汰じゃ無いよな?」

 と思いつつ来た方角とは逆にフロントを向けた。

「俺が届けるのを待って居る者が居るんだ、行くぞGR無事に走り切ろう!」

タンクに手を乗せ呟いた。



 無謀とも思える決断、一つ向こうの町へ駆け抜け其処から山の尾根を伝う、俺が通って居る高校へ大きく迂回し帰るルート。

 西の端から北へ30㎞走り此処へ来た、帰るルートは更に5キロ程北へ向かい其処から約30キロ程東へ走って南下して高校の傍へ抜ける、後は高校からの帰り道だけど台風は近付いてるし…、さて何が起きるのか?、無事帰り着けるのか?、はぁ…、ゴールはまだ遠い…。

(´;ω;`)ウッ…

ゴールはまだ遠い…。

( ノД`)シクシク…

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