波と峠越 ➀
「さあ行くぞ!」
٩(๑òωó๑)۶
今の此奴なら走り切れる、マフラーも直したし今じゃ彼方此方走り廻っても快調そのものだ。
(⌒▽⌒)
「さぁて外海側はどんなもんだろな?」
自然に言葉が零れる、多分今の此奴なら走り切れる、何時もの様に無事に走り切る為の儀式、タンクに手を置きGRに声を掛ける。
「頼んだぞ、無事に走り切ろう!」
自宅を出て湾を抜けた先は外海、何も遮る物の無い外洋に面する海岸線の道、此の台風で大時化に為ってる道に向かう…、キックしエンジンを掛け、ゆっくり自宅をスタートする。
「随分風が出てきたよな…。」
避難所を出る時にTVが告げていた、<最大風速35メートルで更に発達中…>と言ってたっけ、まだ沖合を自転車並の20キロ程で移動中、真っ直ぐ此方へ近づいて来るらしい、この先どれだけ荒れるのやら…。
(´-﹏-`;)…
愈々この先は湾内を外れ外洋に面した海沿いの道になる、湾内の最後のコーナーの手前で突風にハンドルを取られ車体をが流されそうになる、この後に強風の中に飛び込むのだ、気合を入れ、脚でタンクをしっかり挟み逆に腕から力を抜いた…。
( ´ー`)フゥー...
「さあ行くぞ!」
٩(๑òωó๑)۶
引き返したくなる気持ちを抑え込み海岸線の道に突入する、其処で目に飛び込む景色は俺の想像を遥かに超える物、今抜けたコーナーと最初のトンネルの間は僅かな距離、そのトンネル内で一旦停止して状況を確認、勢いだけで突っ込む訳には行かないよな…。
次に隠れられる岩蔭までの距離と打ち付ける波のタイミングを計ってスタート、大、中、小パターンは何度か体験した時化の時と同じ、此処から2キロ程は隠れられる岩蔭毎の距離が短くてまだマシだが…、打ち付ける波は既に俺の背丈の3倍は在ろうかと言う位に迄に達している…。
此れが外海の怖さ、普段は多くは無いが観光客が県外からも見に来るほどの穏やかな綺麗で静かな海、だが一度荒れて仕舞うと地元の者でも近づかない凶暴な表情の海に変わる。
スロットル回すタイミングを波と併せ、大波が上がったタイミングでスタートし次の岩蔭に滑り込む、後は其れを繰り返し慎重に進んで行く、あんな波を真艫に喰らったら…。
あの一件の後マフラーを直し加速が格段に良くなったGR、御蔭で以前の様な失態には合わずに済んでいる、今それが通用する最後の位置まで進んで来た、眼の前は直線区間で身を隠せる場所すら無い、次の岩陰以降は潜れる場所の間隔が200m位ずつ開く、さて何処する…。
(。ŏ﹏ŏ)…
此処さえクリア出来ればその先はコーナー毎の頂点に岩陰が存在し波を回避出来る、只その前に如何やって此処をクリアする…?。
(¯―¯٥)?
岩陰で思案して居たその時に最大級の大波が上がる、波高は8m程の高さ迄上がり強風の風の音よりも大きな音を発て俺が進む道の上に叩き付ける。
( ゜д゜)ハッ!
<数か所波が切れている!!>
岩陰は無いが海に飛び出した岩礁で打ち上げる波が断ち切られ、それを示すように落ちた道の上に波を被らぬ跡が残る、その箇所までの距離は50メートル位か!。
避ける物が無く波飛沫は被る事に為るが直撃は回避出来る、落ちた波が断ち切られ回避出来る隙間は約3m、其処でなら…<交わせる!>、今大波が打ち上ががり走路上に落ちた、考えるより先に身体が反応し右手はスロットルを開け加速、その位置までに中波で潮は被ったが大波は避けた。
それを繰り返し最後の場所まで来たが、気紛れに襲ってきた来た大波を被り車体毎反対側の山肌に運ばれる、ギリギリ道路幅一杯で踏み留まり波と石礫に襲われ痛みは伴うが通過し転倒は免れた。
(; ・`д・´)
後は楽勝なんて思っていたのが間違い、最初のコーナーの岩陰目掛けて加速したが頂点で止まれない?、区間が短かく速度が乗って無かったのが幸いしオーバーランで済んだ、勿論岩蔭を通り越しモロに波を被って仕舞ったが…。
(´;ω;`)ウゥゥ
原因はGRの前後は供にドラムブレーキ、大波を被った際にドラム内に水が入ってしまい其れで制動力が落ちた、その場でフロントの対処は無理だが、リアはサイドスタンドで浮かせてギアをローに入れブレーキを引き摺り摩擦熱でドラムを乾かす、この区間は岩蔭間の距離が短くリアだけでも何とか止まれ、フロントもブレーキを引き摺り走る、海岸沿いを通過した頃には前後供にブレーキは復活し、次のセクションへ突入して行く。
( ´ー`)フゥー...
ラリーで言う処のリエゾン区間とでも申しましょうか次の集落の中を抜ける、此処は風も弱く無事に通過し次の区間へ突入、さあ此れから山場の峠超え!、其処は乗用車でもセカンドで登る程の勾配のキツイ峠道、集落の終わりに在る直線区間で速度を載せないと50㏄の非力なエンジンでは途中で失速してしまう。
(๑•̀ㅂ•́)و✧
最初は緩いコーナーから始まり、昇るに連れて段々ヘアピンに近くなりコーナーがキツく成る、もう何度此処を越えたか判らない程越えた峠、此処を抜け無い限り祖父母の集落へ行く術が無い、仮に迂回して行くなら最短でも80kmは走る事になる、だから此処を越える、そう言う事さ…。
右、左と極力速度を落とさない様に勾配を駆け昇り続ける、登って行く途中で何か所も川の様に道の上を濁った水が流れ、その度にタイヤが流される。
「普段はちょろちょろと湧き水が湧いている位の所なのに!」
如何に大量の雨が降り続いてるのか解る、其れを証明してるんだ、そう思いつつ駆け上がって行く。
峠の頂上迄残りコーナー7つ、左コーナーを立ち上がり右ブラインドコーナーにバンクし侵入、眼前に飛込む光景に前後フルブレーキング!。
( ゜д゜)ハッ!
〈間に合わない!止まれない!〉
前後供にロックさせ大転倒してしまう…。
エンジン音が止むと風と叩き付ける雨の音だけが響いてた…。
台風の中誰一人として通らぬ山中で大転倒、今みたいに携帯で誰かに知らせる術も無い、そもそも携帯が有れば事前の連絡でこの峠道も、荒れた海岸線も走らずに済むんでいた筈、今は大変有難い時代に為っています、さて先程通過した海岸線の出来事ですが…。
<ホントにそんな事出来るのか?、だってこの話はフィクションだろ!>
まぁそこに至った経緯も、話自体も物語だし脚色も有りますよ…、でもその台風の中を小さなGRで駆け抜けた事は…。
(^^ゞポリポリ
転んじゃいました…
(ノД`)シクシク