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エピソード4

 2ラウンド3ターン目。黒山と白川が札を選ぶ。

『両者選択完了。それでは、手札オープン』

白川が選んだカードは1。それに対して、黒山が選んだカードは5。今度は白川が敗北。しかし、負け方としては最悪中の最悪。何にでも負け()()()1で、何にでも勝てて()()()5に負けた。白川が1を出すことを読んだ黒山による、お膳立てされた敗北

そして、4ターン目。黒山はカードを選ぶまでもない。白川は最弱の札である1を消費したのに対し、黒山は1の札を残している。

つまりこのターンで黒山が1を出せば、白川は何をどうしようと勝ってしまう。

4ターン目で黒山は1を、白川は3を出し、白川が10枚中6枚を集めたため、2ラウンド目は白川の勝利で終わった。


最終ラウンド。それぞれ1ラウンドずつ勝利しているため、このラウンドで負けた方が死ぬ。この2人に合わせて表現するなら、このラウンドに負けられた方は、恋人を生かすことができる。

「俺が死んでも、気に病む必要はない」

黒山はデスゲーム中とは思えないほど穏やかな笑みを浮かべ、札を出す。

「月のために死ねるなら、本望だ。それに俺は死んだ後も、ずっと月を見守っているよ。幽霊となって、永遠に君のそばにいる」

俺は幽霊なんて信じないが、こいつならマジでやりそうだ。こいつらなら、恨みつらみではなく、純度100%の愛で怨霊になれる。まぁ、愛ほど歪んだ呪いは無いらしいからな。

「不思議な気持ちね。太陽には絶対生きてほしいけど、同時に太陽が自分の命を犠牲してでも私を生かそうとしてくれることが、たまらなく嬉しい」

白川もまた、不気味なほど満面の笑みを浮かべて札を出す。

『両者選択完了。1ターン目、カードオープン』

黒山のカードは2。対して、白川のカードは3。白川の勝ち。つまりは、黒山の狙い通り。………なんか、頭がこんがらがってくる。

「凄いわ。また私の手が読まれた。そんなに深く私のことを考えてくれるなんて…愛を感じちゃう。もっと感じたいところだけど、これ以上負けるわけにもいかないのよね」

「遠慮しなくていい。僕の愛を、好きなだけ感じてくれ」

白川と黒山は同時に札を選ぶ。

『両者選択完了。それでは、カードオープン』

黒山のカードは、3。対して白川が2。今度は出した札がさっきと真逆。白川が黒山を読み切った。

「なっ!!??これは一体、どうやったんだ!!」

黒山は目を丸くすると、白川はしたり顔で言う。

「読みで必要なことは、結局のところ相手への理解。そして相手への理解度は、愛の強さに比例する。そして愛とは、逆境でこそ燃え上がるものよ。太陽の死にが迫るという逆境で、私の愛を際限なく深くなる。今、私の愛は無敵よ」

「…なるほど。ロミオとジュリエット効果か」

どの辺がなるほどなのか教えてほしい。言っている内容が、俺には1mmも理解できない。

「だがそれは俺も同じだ。証明してやる。俺の愛は、誰より強い」

「いいえ、私の愛は誰より深いわ」

なんなんだ、これは。

俺は、恋人が無様にも保身のために貶め合おう(さま)を見たかった。

だがしかしこれは、どっからどう見ても、バカップルの痴話喧嘩だ。

『両者、カード選択完了。それでは、3ターン目。カードオープン』

黒山が出したカードは4。白川が出したカードも、4。ここにきて、引き分け。こうなれば、後は読みも何も無い。


引き分けの場合、次のターンの勝者が引き分けた2枚も含めた、4枚のカードを手にする。

3ターンを終え、2人は1ターンずつ勝っているので、獲得した札は2枚ずつ。故に4ターン目で勝利すれば、4枚のカードを獲得し、既に持っている2枚と加えて、6枚のカードを手にする。カード枚数は全10枚なため、このターンの勝者が最終ラウンドの、ひいてはこのゲームの勝者となる。

今、2人が出せるカードは、共に1と5。

とどのつまり、取れる選択肢は2つ。恋人を生かすためには最弱手の1を出すか、自分が生き残るために最強手の5を出すか。

『念のため、ルールを再確認する。最初に説明した通り、引き分けた場合は両方殺す。更にもう1つ。古来より人は、奪うことでのし上がってきた。例え恋人が相手であろうと、己のために貪欲に蹴落とす。それでこそ、人間。それでこそ、霊長の王。己のために誰を切り捨てようと、なんら恥じることはない。さぁ、カードを選べ』

次の一手で自分の命が決まる。流石にここまでくれば、矜持も捨てて、恋人を殺してでも助かろうとするはず。

それを後押しするために、わざわざ長ったらしい演説をした。

恋人が醜く互いを陥れようとする様を見たいがために、俺はバカみたいな金を払ってデスゲームを実行した。そうなってもらわなければ、このゲームが無駄になる。

さぁ、己のために5の札を選べ!!



しかし黒山も白川も、その顔に一切迷いの色はない。

「説得は…どうせ無駄か。月」

「当然。貴方も頑固ね。太陽。そういう所が好きなんだけど」

2人同時に、札を選ぶ

『両者、選択完了。カードオープン!!』

2人の札は、共に1。つまり正真正銘、生死を賭けた瀬戸際ですら、恋人のために負けようとした。

皮肉にも、その気持ちが共通していたがために、結果は引き分け。

『第5ターン目を行うまでもない。両者、3ラウンド目にて獲得したカードは、それぞれ2枚。故に、ゲームは引き分け。少しすれば、両者に致死レベルの電流が流れる。最後に、精々短い人生の感想でも語り合え』

「俺たちの人生もこれで終わりか。あっという間だったな」

まるで他人事のように、黒山は自らの人生を振り返る。

「そうね。太陽と出会いも、まるで昨日のことのようだわ。やり残したこともたくさんある。貴方と結婚たり、貴方と子供を育てたり、貴方と××××セックスをしたり、貴方と△△プレイをしたかったわ」

後半、性欲が駄々洩れすぎる。白川って、そんなアブノーマルの性癖だったの!?

「でも、ただ1つ言えることがあるわ」

「多分、僕も同じこと考えているよ」

「太陽との時間は、疑いなく」

「月との時間は、間違いなく」

「「幸せだった」」

首枷から電流が流れ、2人は糸が切れた人形のように倒れる。前に述べた通り、俺に2人を殺すつもりはない。電流の強さは、スタンガンくらいだ。2人は死んだのではなく、気絶しただけ。さて、2人の意識がないうちに、2人を家に帰すとしよう。


デスゲームは、想定と180°違う結果となってしまった。けれども、収穫はあった。

もしこれが恋人というのなら。相手のためなら食い気味で命を差し出すのが、恋人という関係性ならば。


俺に───恋人を作るのは無理だ。


4話:”nothing>you”

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

怪文書を作ろうとして出来たのですが、書いてて自分でも良くわからなくなってきました。

楽しんでいただけたなら、幸いです。

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