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 気付くと夢の中にいた。

 何故夢の中だと理解したかというと、ありえないモノがソコにいたからだ。人の顔をした鳥がいる。カラスの体に人の顔。そんなもの、夢の中じゃないとしたら何処だというのだ。


「ほら、起きてくださいまし。審判の時ですよ」


 カラスもどきが起きろと言う。おかしなカラスだ。夢の中だがオレは起きているじゃないか。現にほら、ここに立っている?


 不意に向けた目の先には、あるはずのモノが無かった。


 太ももから下の二本の脚が見当たらない。痛みはない。ただ、太ももの中頃から下が消え失せていた。


 ここには、ただ真っ白な空間に不自然に浮いた体、そしてカラスもどきがいるだけ。上下の感覚が麻痺しそうだ。


 夢の中だよな?


「やっと起きたようですね。おはようございます。もうすぐおいでになられますから、しばしお待ち下さい」


 カラスもどきが待てと言う。

 ここは夢の中だ。この思い通りに動かない体じゃ何もできない。朝が来て本当に目が覚めるまで待つしかない。


 ぼーっと待つ。ひたすら待つ。


 果の見えないただ白い空間は音という音を吸収してしまうのだろうか。上空を飛び回るカラスもどきの羽音も、自身の呼吸も心音も何も聴こえない。無音の世界だ。退屈な時間をひたすら待っていた。


 すると突然目の前に光の玉が現れた。目の前に浮いている。


「やぁ、■■■君!会えて嬉しいよ。君がここに来るのをずーっと待ってたんだよ」


 光の玉が急に喋りだした。カラスもどきがいつの間にか光の玉の方へ移り、上をクルクルと円を描くように飛んでいる。


「はぁ。あなたは何ですか?何故オレを待ってたんですか?」


 これは夢の中だ。オレが創り出したものなのに、どうしてだろう。他人の意思があるようだ。


 とりあえず会話をしてみよう。


「あぁ、私はずっと君を見てたからね。でも君は私を知らなかったね。私は□□□だ。」


「は?あの、今何て?」


「あ、そうか!ごめんごめん。えーっと、こっちの言葉では神様っていうのが一番近しいかな」


「神様?」


「そう、神様。私はずっと見てたんだよ。君がしてきたこと」


 そう言ってズイッと顔の間近まで寄ってきた。底知れぬ圧を感じる。


「君は現世とお別れしたんだ。つまり死んだってこと」


「まさか。これはただの夢だろう?」


 口からハハッと乾いた笑いが漏れた。


「これは夢じゃないよ。君は間違いなく死んだんだ。だって私が殺したんだから」


 は?何いってんだ。オレの脳内。冗談も程々にしろよ。


「君はね、地球の現世で私の一番大切なものを汚したんだよ。だからその報いを受けなくてはいけない。そのたましいでもってね」


「は?何いってんだよ!そんなの知らねぇ。いい加減こんな場所嫌だよ。早くオレを帰してくれ!」


 神と名乗る光の玉は大きく大きく溜息をついた。


「あのねぇ。これは夢でも無いし、自業自得なんだ。君のやったことは廻り廻っていつかは自分に帰ってくるものなんだよ?世界はそうやって廻ってる。今回に限っては、私が無理矢理因果を廻して少し早めただけ」


 は?わけがわからねぇ。オレがなにしたっていうんだよ!!


「さぁ!そろそろ時間だよ。次は君が、君のしたことの報いを受ける番だ。地球とは別の次元へ送ってあげるからそこでしっかり反省して生涯を全うしてくれ」


 神と名乗るソレが大きくなって空間いっぱいに広がったように思えた。光に満ちたソコは自分の手さえ見えない。



「さぁ、今こそ因果を廻そうじゃないか!!!」


 最後に聞いたその言葉が、薄れゆく意識の中で何度も響いて聞こえていた。

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