初めての武器
自分の武器って、好みって。
朝。宿のベッドで目が覚めると。
うはぁ~寒い。
うぅ~、何だか久しぶりに肌に感じるなあ。
ゾクゾクする、この冷え込み。
それでも孤児院の寝床に比べたら、この部屋は天国だけど。
木窓の隙間から差す細い光で、もう朝だと分かってるけど。
寝床から、、ベッドから出たくないなァ。
でも。
何時までも此処で寝てはいられないんだよな。
昨日ラビリンスで実感したじゃん。
俺に合う短剣を探すって。
今日は先ず。
ジョーラスさんの所に顔を出して、武器の事を聞いてみて。
それで、今の俺に合いそうな物を見立ててもらうんだ。
せっかくの知り合いだもの、プロに聞くのが一番だよね。
へへ、どんなのが良いって御勧めされるかな。
短剣、長剣、槍、後は何だっけ?。
はは!、武器なんて良く分かんないや。
手にすれば、カッコ良いかも知れないけどさ。
今まで生きてて。
普通に武器なんて使う事は無かったもん。
今の俺には頼りになる、fn1910が有るけどさぁ。
コレだけじゃあ、この先多分駄目だよね。
はぁ~15歳で、孤児院の子供から生活が激変だよね。
俺は、コレからは冒険者としてさ生きていくのに。
何で?冒険者の生活の事を安直に考えてたのかな?。
ふと、知り合いの冒険者のロイスさんの顔が浮かぶよ。
何だかさ、楽しそうだったんだよなぁ。
そうだよ!ロイスさん達がさ、楽しそうだったからだよ!。
でも。
初心者のラビリンスで。
今の自分の駄目さが、良く分かったよ。
昨日の大蝙蝠との戦いで、その不慣れさがモロに出たもの。
下から数えて何番目かの強さのモンスター相手にでだよ。
目の前で自分に向かって飛んで来るくるモンスター。
その恐怖を感じたし。
大蝙蝠が小盾へまとわり付いた時の、重さの手応えも。
相手は小物のはずなのに、重くて必死で戦ったんだよ。
冒険者で生きていくとなると。
これからは色んな種類のモンスターとの戦いが続くでしょ。
でもさ。
恐怖を乗り越えていかないとイケないんだよなぁ。
怖かったよなぁ。
頭の中で、考えが色々とグルグルと巡ってしまう。
もう!とにかく。
起きて、ジョーラスさんの所に行こう。
ベッドの上で、掛け布団を勢い良く跳ね除けて体を起こすと。
何でだろう。
マジに、メチャクチャ今朝は寒いんですけど。
寒い寒い!ひぃ~~椅子に置いてた着替えが冷たい!。
うひぃ~、肌がピリピリする~。
あぁ~寒い寒い!。
部屋の中で肌に感じる空気が寒い。
急いで着替えを済ませ朝の支度をしていくよ。
廊下の奥の洗面所では。
かぁ~!なんて水がこんなに冷たいんだよ!。
手が凍るぅ~。
外出の準備を済ませて、部屋から出る。
3階から1階への階段をトントンと降り切ると。
今日はこのまま出掛けますから。
はい、、301の部屋鍵です。
お預かりいたします、行ってらっしゃい。
モロゾフさんと軽く挨拶をして宿の出口へ向かうけど?。
宿の入口から見た、外の道は銀世界だっ。
あぁ~~!昨夜の中に雪が降ったのかぁ~。
成程ね、どうりで寒い訳だよなぁ。
うひゃぁ~、、。
結構な量が積もってるじゃん!はぁ~参ったな。
これだと、今履いてる靴じゃあ足が濡れちゃうけど。
でもしょうがないか!。
ははぁ、行くしかないな。
くぅ~「あまぐつ屋」さん!、色んな道具かぁ~。
また、ツイこの間会った人の事を思い出した。
、、「要っるでしょ、ねぇ?」。
頭を振って、雪の積もった道に踏み出すと。
シュ、キシュ、クシュ。
歩を進めるたびに足音が、そんな風に聞こえてくる。
あぁ~!。
足が冷たい!うぅ~痛い!。
もう靴の中に水気が沁みて来たんじゃ無いか?。
皮の縫い合わせと、チョットの工夫だものなァ。
あぁ~両方の靴とも浸水だぁ。
まだジョーラスさんの仕事場までは遠いのに足先が痛い。
周りには今日も冒険者の人達がラビリンスに向かうのかな?。
変わらいない朝の風景が見て取れている。
でもね。
冒険者の足元の靴が、、長靴ポイのになってるよ。
茶色のゴム長みたいだ。
あれが雨とか雪の日に履く装備なのかな。
皮の長靴なのかな、何で出来てるのかな良いなァ~あれ。
俺も「あまぐつ屋」さんで長靴の金額を聞いて。
買える様ら手に入れよう!絶対に。
ドンドン冷たくなっていく足を気にしながら。
町の中を歩いて行く、途中で雪の少ない脇道に入り。
早足で暖かいはずの鍛冶場を目指すよ。
そして、見慣れた金属の扉の前へたどり着いた。
やっと着いた。
はぁ~ここまで遠かったような気がするなア。
手にトンカチをもって、3回扉を叩く。
キン!キン!ギン!。
今日も良い音だ。
暫くすると、扉の向こうから声が聞こえて来た。
誰だよ!まだ朝だぞ。
いつも言ってるだろう、朝早く来るなってよ。
コチとら、色々と準備が忙しいんだ。
あとで来い。
あはは!同じような事をまた行ってるよ。
お早うございますジョーラスさん、シンです。
初心者のラビリンスに行ってきましたよ。
それとお願いが、、相談したい事が有るんですよ。
だからお願いしますよ、入れてください。
音もせず、重そうな鉄の扉が片方だけ動いた。
またお前!朝から来たのかよ。
まぁ良い、入れてやる。
がははぁ~!何だ、、その足元、、ぷっ!。
今日は雪だぞ!雪!、その靴じゃ駄目だろうが。
おま、、ぷっ!良い様だな。
ジョーラスさん、俺の姿を見てニヤリと笑ってくれたよ!。
噴き出してる、音が聞こえたけど、許すよ。
やった!良かった、もう足が凍りそうなんですよ。
まぁ、お前にゃ長靴なんて買えなかったか。
でもなぁ。
これからは、出来るだけ自分の装備を揃える事だな。
いいか!、冒険者って奴はなぁ。
何時でも何処でも、難儀な商売だぞ。
今のお前の様になぁ、不備は自分に跳ね返ってくるんだ。
武器や防具の不備何て命に係わるからな。
ふっ、今日は雪位で良かったと思う事だな。
いつの間にか真顔で俺に言うんだよ。
そして振り返って通路の奥に歩き出してしまった
奥に来いよ、燃料の鉱石が良く燃えてて暖かいぞ!。
直ぐにお前の靴なんて乾く暖かさだ。
いや!鍛冶窯の置かれてる部屋は暖かいんじゃないから!。
断じて暖かいんじゃないから!。
あの!ジョーラスさん。
この前話した、あの部屋が良いんですけど。
テーブルと椅子の有る部屋で、、。
俺の方へ振り返った顔が、またニヤリと笑い嫌な予感が。
何だよ!遠慮すんなよ。
鍛冶窯の前なら暖かいぞ、靴もすぐ乾く!。
さあ行くぞ。
ジョーラスさん、俺にはあそこ無理ですから。
それに靴の水分も「清浄」で何とかなる気がするんです。
だから。
お前、、「清浄」持ちかよ、、。
チッ!、しょうがねえなぁ。
ついて来い、あの部屋に行くから。
良かった、熱地獄は避けられた。
直ぐにこの前と同じ小部屋に案内されて。
お互い椅子に座った。
で?何の用だ。
約束の魔法袋なら、これだ。
ほら、持って行け。
ポイっと、腰に付けていた皮の小袋をテーブルの上へ置いてくれた。
巾着袋みたいなんだけど、なんか少し違うんだなァ。
はい!有難う御座います、これ大事に使いますね。
それにしても凄いなぁ。
この中に物が一杯入るなんて。
あぁ~、そいつだが。
中に入る量はこの前言ったが。
中の物の時間経過は、止まりはしないからな。
遅くはなるけど。
確か、熱い湯が5日はそのままで7日目で温くなってくる?。
そんな説明だったと思うが、良く覚えとらん!。
使いながら慣れてくれ。
はい。
ホントに良い物を有難うございます。
この魔法袋の事は分かりましたよ。
それで、、。
聞きたい事と教えて欲しい事が有るんですけど。
時間を貰って大丈夫ですか?。
何だかジョーラスさん、忙しそうですけど。
俺を斜め見でまたニヤケル。
あぁ~。
お前の寄こした、あの赤い「宝石」でなぁ。
何にしようかってなぁ。
がはは、楽しみでしょうがねえんだわ!。
まぁ他の仕事も数有るがよぉ、石が手元に有っちゃ~なぁ。
時間なんて幾らでも作るさ。
火だろぅ、熱だろぅ、ぐふふ。
あぁ~武器のするか、、。
アクセサリーが良いかを、、なぁ。
そう語る時の、目がイッツてやがる。
ドワーフって、ヤッパリ駄目だな。
鉱石と石に取り付かれてるよ。
コッチニ帰ってこい。
あの~。
成程、それなら良いんですけど。
俺に合いそうな武器のアドバイスが欲しくて。
昨日なんですけど。
ラビリンスの中で大蝙蝠と戦ったんですよ。
ギルドの借り物の小盾と、、。
このナイフで。
でも。
流石にこのナイフじゃあ、チョット危なかったんで。
短剣か何か、見繕ってもらいたくて来たんです。
ジョーラスさんの御勧めが良いかなって。
呆れた様に、首を傾げて右手で目を覆ってるよ。
ぷっ~!。
シン、お前って勇者だな。
初心者のラビリンスとは言え、モンスター相手に。
そのナイフ1本だけで挑むとか。
ヤルじゃ無いか。
ぐふ、、ぷっ!。
あぁ、普通はもっと武器の事を考えるだろ?。
なぁ、ぷっ!。
また完全にバカにされてるよ。
もっと下の、ゴブリン相手だと。
お前、大怪我するぞ。
いやぁ!間違いなくあの世行きだな。
盾はギルドの借り物でもいいかも知れんが。
最低限は、武器は自分の物を用意すべきだな。
そのナイフじゃ、先には進めまいよ。
ふ~ん、で短剣か。
お前!まだ金はアル程度持ってたよな?。
、、、。
何だろう目が真剣だ。
やっぱりドワーフの武器って高いのかな。
確かにお金は少し持ってるけど、銀貨だし。
あと、溶けた金鉱石でも良いのかな。
ちょっと此処で待ってろよ。
俺が打った短剣を数本持って来てやるから。
お前が自分の手に持ってみろ。
ふっ。
どうするかはそれからだろうな。
じゃあ持ってくるからな。
椅子から立ち上がりドアを出ていくジョーラスさん。
はぁ~どんな短剣なんだろう。
直ぐに部屋に戻って来たジョーラスさん。
その手には3本の短剣が握られていた。
まぁ。
この辺りで始めて行けば良いんじゃねぇか。
お前の体格ならば長剣でも良さそうだが。
初心者だからな、言われた通りに短剣にしておいた。
3本持ってきたから、持って抜いてみてみろ。
それぞれに微妙に違いが有るからよ。
お前の好みで選べばいいだろうよ。
まだ別なのも、あと2本向こうに有るから。
さあ選んでみな。
テーブルの上に置かれた3本の短剣。
握り?グリップは15cm程で皆同じように見えるけど。
短剣の長さがみんな違う。
鞘に入ってるからかな?意外と長く見えるよ。
短剣って意外と大きいんですね?。
ナイフよりちょっと大きいかな位に思ってましたよ。
これだと、刃の長さは40cm以上有りますか?。
剣の幅とか厚みも違うんですよね?。
重いのかな?。
うぅ~、、怖いなぁ。
3本の中で。
一番短い短剣を右手一本で持ち上げてみると。
スッと持ち上げれるけど、鞘の分で少し重く感じるよ。
左手に鞘を持ち、右手で軽く刃を引き抜くと。
シュン!と擦れる音と共に、銀色の短剣が目の前に出て来た。
目の前に刃の部分を持って来て良く見てみると。
これは、どうやら両刃の剣だった。
それに。
うあぁ~!何だこれ、刃身の部分が凄く奇麗だなぁ!。
ピカピカじゃ無いですか。
それに、刃の部分も物凄く切れそうなんですけど。
はぁ~、コレは芸術品ですか?。
グダグダ言ってネェで、手にしてどうなんだ。
1本目の、そいつが一番チイセェのだが、如何だ。
手にして、剣が重すぎるとかは?。
おい!立って軽く剣を振ってみろ。
椅子から立ってみて。
言われた通りにして、短剣を軽く振り抜いてみる。
腕に感じるのは、重くは無いから大丈夫だよ。
これだと、短剣の重さは大丈夫そうですよ。
3本あるんだからな、早くしろよ。
2本目の短剣。
さっきのより重いなぁ、そう思い剣を鞘から引き抜く。
おぉ~、コレは刀身が分厚くて頑丈そうですね。
長さはあまり変わらないのかな。
でもその分、いくらか重いかな。
でも、振った感じでは、そんなじゃ無いかな。
あれ?何でだろう?重いけど振れるよなぁ。
コレも奇麗に出来てますね、ピカピカだ。
はぁ、武器なのに?。
ホントに奇麗な刀身なんだよなぁ。
最後の1本。
一番長くて、幾らか鞘が細身に見えてる短剣だ。
刃の長さは40cmを少し超える位かな。
手に持ちスッと鞘から引き抜くと、シュ!と音がした。
はぁ~この短剣も奇麗な刀身だなぁ。
それに。
これは刀身が細身で、少し長くてカッコ良いなァ。
両刃で細身だけど、厚みはマアマア有るなぁ。
華奢って感じじゃないですね。
あっ、握りの部分もしっくりしてる。
スッ!スツ!と左右に軽く振ってみると。
振ってみてもあんまり重く感じないし。
このガードの格好も良いかな。
俺はこの短剣が良いかもです!。
うん!これが一番良いや。
最後の1本の短剣が、凄く感触が良かった。
まぁ、唯の素人の意見だけどね。
元の様に。
切っ先から鞘にスッと納めてみた。
はは、この姿も奇麗だな。
短剣かぁ。
ジョーラスさん、俺は最後の奴にしたいと思います。
ですけど。
コレって唯の鉄で出来てる剣ですか?。
刀身部分が凄く奇麗なんで。
何時までも見ていられそうですよ。
はは、武器って凄いです!。
目の前に並んでる3本の短剣。
たった今選んだ。
最後に見た1本の短剣は何だか気に入ってしまったよ。
他の2本も良いんだけど。
あれが俺の好みなんだろうか?。
ふふ、そう思えて不思議だ。
あぁ~それを選んだんだな。
まあ、お前でも十分に使えるだろう。
武器も偶には手入れをしないと駄目だからな。
それでだ。
その短剣の値段だが、金貨3枚は貰わんとなァ。
素材は、まぁ唯の鉄じゃ無くて、鋼鉄だからな!。
鋼鉄製の短剣だからな、肌艶が違うんだ。
その短剣だけど。
最近の俺の中でも、出来の良い奴なんだわ!。
ーお前に武器の良し悪しなんぞ分るまいにー
ー目が良いのか、運が良いのかー
だから、その短剣は金貨3枚だ。
あぁ~!お前。
この前のやつだが。
まだ、溶けた金鉱石を持ってるだろう。
今、ここに出せよ!。
また俺が価値を見てやるから。
あぁ~~~~。
やっぱりなのか、匂いデモするのか不思議だ。
ジョーラスさんが。
何でそう思うのか不思議ですけど。
はい。
これですね。
腰のポーチへ右手を突っ込み。
その中で金鉱石を1個選んでから置いたよ。
テーブルの上でコトリと音がする。
拳より小さい金鉱石だよ。
その金鉱石を手に持ったドワーフは。
両手の中で石を転がしながら、ニヤケ顔になったよ。
おほほ!。
良いじゃねぇか!、良いぞお前。
今回も、これで十分だな。
がはは!今釣りを出してやるからな!。
そう言ってさっきのとは別の腰の小袋から。
銀貨を出して来たよ。
ジャラリとテーブルの上に12枚。
コレが金鉱石の余計な分の釣りだな。
銀貨12枚だ受け取れ。
まぁ自分の為に。
早くその短剣を上手く使える様になれや。
がはは!。
初心者のラビリンスで出会うモンスター相手なら。
その短剣で十分過ぎるからな。
あとは。
お前の腕だから。
ジョーラスさんが、自分の左手で右手を叩いて見せた。
わかってますよ!。
俺の腕前!それが問題なんですってば!。
がはははは!、、ぷっ!。
ドワーフの大笑いの声が部屋に響く。
バカにされてるよ。
ドワーフの造る武器は美しく、そして奇麗だ。
それは芸術品と違わない。




