足りない者
あまりに安易に考えていると。
躓くよ。
はぁ~!。
初心者のラビリンスを舐めてた訳じゃないけどなあ。
スライムに続いての大蝙蝠なんだけど、出ないんですよ。
小さな魔石だけで、後は何にも出ません。
今にも俺の中で滾る、、ヤル気の火は消えそうだよ。
午後からの地下二階の探検もすでに時間が経っていて。
直ぐに夕刻になりそうな感じだよ。
う~ん!大蝙蝠も強敵だな。
宝箱は出ないし魔石も偶にしか出ないなんてさ。
初心者には渋すぎて涙が出ちゃうよ。
あぁ~ぁ!今日はもう帰ろうかな~。
決めた!次の部屋で最後にして撤収だな。
通路を進みながら考えてるのはマイナスな事ばかりだ。
ホントなんだよ此処まで進んで来ても収穫は。
大蝙蝠の魔石が、、4個だけだしね!。
スライムは倒してもね!、、何も出ないし。
暫く進むと部屋の入口が見えて来たヨ。
よ~し、今日は此処で最後だからな!。
大蝙蝠め!今度は銃じゃ無くてナイフで勝負だぞ!。
気合が入ってるけど、準備には意外と時間が掛かるよね。
ポーチにしまっておいた小型の丸盾を取り出して。
一旦足元へ置いてから、後は。
木の棒の先から「灯り」を移動させて。
残った木の棒はポーチの中へ入れて片付けてと。
ふぅ~、こんなもんかな?。
えぇ~と、、「灯り」を頭の上に持って来てっと、、。
丸盾の取っ手を左手でしっかりと持って、、。
あ~~!。
此処まで準備して大蝙蝠が中に居なかったら、、。
おバカさんじゃん!。
取り合えづ!部屋の中を確認だな!。
通路から部屋の方を覗くと、、見える範囲には居ない。
ここからだと、部屋の隅の方が見えないから、、。
あ~もう!直接中を覗き込まないと駄目かい!
今までだと部屋の外から銃で攻撃出来てたけど。
部屋の中に顔を入れると、、、。
俺を認識して、、モンスターが動き出すかなぁ~?。
大蝙蝠だから、天井から俺に向かって飛んで来るのかな?。
う~~~!それって、、ヤバいかなぁ?。
ヤッパリ、、、武器はfn1910にしようかなぁ。
いや!ナイフで、ダンケロさんのナイフで戦おう!。
右手で腰のナイフを鞘から引き抜き。
部屋の方に、前に向けて構えながら1歩踏み出すよ。
でも、足はまだ通路だよ!。
体を前に、首を伸ばして部屋の中を急いで確認!。
左側隅、居ない!。
右側隅、居ななぁ、、居る!
確認してから何故か?、大蝙蝠の姿を見ながら。
自分の体を通路に引き戻してしまったよ。
あっ!マズ。
直ぐ気が付いたけど。
すでに大蝙蝠が天井から此方に向かって飛んでいたよ。
なんとか左手の小盾を大蝙蝠の進路上に差し向けた。
一瞬だけど、口を開けている大蝙蝠の顔が目に入った気がした。
トントンと音がしたと思ったら。
左手の小盾が急に重くなって、大蝙蝠が盾の上に顔を出した。
キイ、キイキイキイ、バサバサ。
バサバサ。
盾に爪を立てて集り、口を開けて噛みつきに来るのが怖い。
騒がしい声も五月蠅くて耳に響く。
それに割と大きな両腕の膜が、ワサワサと風を起こして。
その度に俺の体がふら付いてしまう。
うあぁ~!。
ちょ!ちょっ!、くぅ~、この!、この!、重ィ~!。
テメェ~!動くなよ!
見てろよ!オラァ~!喰らえ!。
壁ドンだぁ~。
盾に纏わり付いてる大蝙蝠を。
左手の盾ごと通路の岩壁に体重を乗せて叩きつけたよ。
1歩2歩と踏み込んでからの~ドン!だ。
キュー、キッ、グーゥ。
パタ、、パタ。
ざまぁ~みろ!。
壁ドンが効いたみたいで、大蝙蝠は大人しくなったよ。
右手のナイフの出番だ。
コイツも喰らいやがれ!ダンケロさんスペシャルだぞ!。
壁に叩き付けて大人しくなったから。
右手のナイフで反撃だ。
盾の上に出ている大蝙蝠の首を左から右向きに。
スパっと横に薙いでヤッタよ!。
すると、首はロクな手応えも無く切れてしまった。
目の前で切り取られた大蝙蝠の頭が、右上に向かって飛ぶ。
クルクルと回転しながら宙を舞ったよ。
かぁ~、は~ぁ~!はぁはぁ、は~ぁ。
ふ~ぅふぅふぅ、はぁ~っ。
げ~ぇ!、、コレがモンスターの血かな?うぁ~。
うぁぅ~耐えられない、、「清浄」。
小盾と左手に嫌な感じの紫の液体が垂れている。
あぁ~!めっちゃハンパ無かった!。
グゥ~~!モンスター、ヤバイ!。
たった20秒か30秒の、大蝙蝠との戦いはヤバかった。
あの時間は、あっと言う間の出来事だったけど、、。
あぁ~もう立っていられないよ。
フラフラと数歩後ろに下がり、通路に腰を下ろす。
はぁ~怖かったなァ~、マジかよ。
大蝙蝠の顔が目の前に来た時は、マジで怖かった。
盾が急に重くなったのもなァ、持ってかれるかと思ったわ!。
舐めてるのか、、俺。
へたり込んで腰を下ろした自分の手足は。
さっきの恐怖からか、小刻みにブルブルと震えているよ。
左手の子盾を見れば、まだ首の無い大蝙蝠の体が付いている。
その子盾を左手から外して、頭の方へ足で押し退けてやった!。
クソ大蝙蝠!。
次の時は、、楽勝で片付けてヤルからな!。
お前なんて、、。
しばらく大蝙蝠の残渣を見ていたら、また消えていった。
そこには何も残っていなかった。
なんだよ!また空振りじゃ無いか。
はぁ~~!今日はツイてない日だな。
もう帰ろうかな。
ムクっと立ち上がるけど、、足がまだ変な感じだ。
蹴った小盾を拾うと痛みを確認、、コレも問題無し。
腰のポーチへ入れてっと。
木の棒!木の棒!頭の上の「灯り」をまた先っぽに移してっと。
ナイフは?、奇麗になってるな今回も問題無し!。
はぁ~、やっぱりモンスターを相手にするのなら。
色々良く考えないとなァ。
通路を出口方向に向かい歩き出す。
先ずは地下1階へ上がっていかないとね。
ここも真っすぐだから良いけどさぁ。
迷路みたいだったら、如何したら良いんだろうなァ?。
はぁ~問題だらけだ。
今度来る時には、明日かな、短剣も借りてみようか。
ナイフは良く切れるけど、武器としては心許無いかな。
はぁ、ジョーラスさんの所に行くかなぁ?。
短剣を見せてもらうかなぁ。
普通はナイフで戦わないよね。
無事に地下1階へ上がって、いよいよ出口へ。
色々考えていると、あっと言う間に出口に到着したよ。
頼りない足取りで道を進み、何とか町へ入る。
はぁ、ギルドの裏で小盾の返却をしてから。
ジョーラスさんの所に向かうか?。
いいや!明日だ明日!。
今日はもう、、無理だよ。
何もかも急いで済ませて、宿に帰って来た。
まだ夕方だけど、もう眠いや。
今は、お腹もあんまり減って無いし、、。
はぁ~。
「清浄」
身綺麗にして。
着替えてからベッドに潜り込むと。
直ぐに寝てしまった。
またジョーラスさんに会いに行くよ。
魔法袋と短剣を見せてもらいにね。
良いのが有るかな。




