やっぱりドワーフって。
今の所、石のラビリンスは後1日でお終い。
今度来る時は、初心者のラビリンスで経験を積むんだ。
此処の町に来て何日目だっけ?。
昨日は。
ラビリンスで金鉱石の鉱脈に出会い、お金を儲けられた。
麻袋で8分目位の量をギルドで買い取ってもらったら、、、。
見た事も無い銀貨の山が出来る金額だったよ。
だから!。
えへ!少し前から欲しかった時の魔道具を買えたよ。
慣れない高額商品の買い物で、、。
俺は薄っペラな魂を擦り減らしてヘトヘトなった。
ラビリンスでの疲れもあり、宿に帰ると着替えて夕食をとり。
直ぐに301号のベッドに潜り込んで眠っちゃった。
はぁ~もう朝なの?。
うぅ~~~朝の寒さは大分違うけど。
朝早くに、、目が覚めちゃうなぁ~。
何でかなぁ、良く寝た気がしないなぁ~。
ふぅ~起きるかぁ~。
何だかんだと言いつつベッドから起きだして着替えていく。
その服も、代り映えしない古着の長袖と長ズボンだ。
前にジャーレンタで安くて暖かそうなのを選んだ服。
贅沢かもしれないけど、、服も欲しいよなぁ。
着替えが2,3種類しか無いんだよな。
此処にも古着屋さん在るかなぁ。
あとでギルドに行くときに時に探してみようか。
さぁて!洗面所空いてるかなぁ~、、支度支度。
宿で食事を済ませて、町中をギル出へ向かいながら。
どんなお店があるかキョロキョロと視線を泳がせていると。
脇道の先に薄い煙を吐き出す煙突が見えた。
おっ!あの煙は、アレって鍛冶場のじゃ無いかな?。
あぁもしかして、、、。
イヤ!イヤ!、、アレ間違いなくジョーラスさんの仕事場でしょ
必ず寄れって言われたし!、覗いて行こうかなぁ。
へへへ!。
昨日の、、金鉱石の溶けたヤツ見をせちゃおうか!?。
う~ん良いよねドワーフだし、。
じゃあ小さいのを2つポーチから出してっと。
この2個で良いかな。
右手をポーチの狭い所に入れて、、、アレッて頭に浮かべる。
アレですよ、溶けた金、、2個。
慣れて来たのかスムーズに手の中に収まって来た。
ポーチの中を覗き込むと。
2個がギリギリ握れる大きさの金鉱石で。
一面に溶けて金が、ベト~っとへばり付いてるよ。
キラッと金属光沢の部分が光を反射してくる。
ちょっと大きいかもしれないけど、ジョーラスさんだしね~!。
これで良いよなぁ~?。
ぐふふ!。
どんな反応で何を言うか楽しみだよなぁ。
ソンな事の準備をしながら脇道を進み。
直ぐに石造りの建物の前に到着。
あれ~ぇ?。
う~ん、ここの入口は何処かなぁ~。
すると建物の右の方に庇が出ていたよ。
あそこだな!。
見付けた所に向かって歩いて行くと。
ここでも目にしたのは。
あはは!ヤッパリ鍛冶場だな、頑丈な鉄の両開きの扉だよ!。
あっちでもこっちでも、、ドワーフは同じ考えなのかな。
くふ!鉄で造るのが一番なんだよね。
これ!。ドアノッカーも同じジャン!。
トンカチだよ笑えるなぁ。
鎖で吊るされてるトンカチを右手に持ち。
鉄の扉の何回も打たれて光ってる所がある。
そこに3回、軽く撃ち当てると。
キン!キン!キーーン!。
うん!此処の扉の鉄も、、良い音が響くなぁ。
何か違うのかなぁ、ドワーフの鍛冶技だったりね。
暫くすると、扉の向こうから男の声が聞こえたよ。
おお!この声は聞き覚えがある、ジョーラスさんだよ。
朝から誰だよ!。
今から忙しいんだから、後にしてくれ、また出直して来い!。
良いか!分かったな!じゃあな。
うぁ~~~!。
ぶっきら棒で相手の事を考えて無いなぁ。
コリャ酷い対応だよ、商売をする気は無さそうだなぁ。
はて?弟子の人はいないのかな。
お早うございますジョーラスさん!。
ジョーラスさん。
シンです!俺ですよ!。
ギルドの買取所で、朝と晩に何回もお世話になった。
新顔のシンですよ!。
昨日ラビリンスから戻ったんで顔を出しに来ましたよ~。
でも鍛冶仕事が忙しそうならいいんです。
また出直します、今度来ますね。
じゃあ。
言葉を掛けて、ギルドへ行こうかと振り返っていると。
視界の端に動く物があった。
鍛冶場の、鉄の扉の片側が音も無く奥に向かって動いたよ。
そしてまた男の声が聞こえたよ。
おう!。
ラビリンスで何か掘って来たか!新顔。
此処に来たって事は、がはは!持ってるのか?、。
俺に、、何かしら見せる物が出たのか!。
或いは坊主か。
シン、俺を楽しませてくれるのかよ。
がはは!。
ま中にあ入れや。
言われるままにジョーラスさんに付いて行くと。
建物の奥に向かうほど、、モワッと熱気が体に纏わり付く。
散々仕事先で感じた、あの地獄の熱さを感じるよ。
そして廊下を進み。
ジョーラスさんがドアを1枚明けて部屋へ、、。
グゥ!うがぁ~~~。
あつっちちぃ~~~無理!。
ドアが開いた瞬間に、部屋の熱気が廊下側へ漏れてくる。
俺の目に映るのは。
大きな炉と赤熱した多量の燃料のガスロ鉱石。
鉄を容易く解かす熱の揺らめきだ。
ぐぅ~。
新たに開いた熱の逃げ口だ。
そこから俺の居る入口のドアへ向かって。
考えられない熱風がムワッと襲い掛かってくるんだ。
熱い!。熱過ぎるよ、こんな所に居るのは無理だから!。
直ぐに通路の中へ引き返すよ。
無理無理!ジョーラスさん、此処は熱すぎるよ。
鍛冶仕事の部屋に行くのは無理!。
俺には生きていけない、、終わっちゃうからね!。
だから、、他の所でお願いしますよ。
ドアから離れて廊下から声を掛けて行く。
アンナ灼熱地獄は人間には無理だ。
ふうドワーフはオカシインダ!。
少しすると部屋からジョーラスさんが出てきてくれた。
汗一つかかずに平気な顔で。
たくよ!情けねぇ野郎だぜ。
心地いい熱さじゃね~かよ、分かってねえなぁ。
だから人間の鍛冶師は半端なんだよ!。
熱が大事なんだって。
まったく!。
ショウガね~な!あっちの部屋だ。
ついて来い。
すたすたと廊下を入口の方に戻って直ぐの別の部屋へ。
小さなテーブルが1つと丸椅子が4つ置かれてる。
休憩場所の部屋かな、最初からここが良かったのに。
あぁ~ここは大丈夫だ、無駄に熱くないや。
今が幾ら冬でも、あそこの熱さは駄目だ。
適当に座ってろ。
水くらいは、今出してやるから。
有難うございます助かりますよ。
ふぅ~!さっきの部屋は危険ですよ。
ここなら俺でも大丈夫です。
程よく暖かくて凄く楽ですよ。
それでですね。
俺昨日ラビリンスの地下5階まで行ってきましたよ。
ジョーラスさんが言った様に真っ直ぐでしたね。
そこで、また空洞に突き当たってですね。
そこを調べたら、なんとですよ。
金納石の鉱脈が空洞の中を下から上え斜めに伸びてて。
足元から天井へ、見上げる程でしたよ。
こんなのって此処でも凄いでしょ?。
あと、空洞に入ったらまた落ちていたんですよ。
「灯り」でキラキラと光ってて凄かったですよ、これ。
これなんですけど。
テーブルの中央の辺りの上にコトリと。
溶けた金が付いている金鉱石を2個。
手の中から落として見せた。
部屋の灯りに照らされて金がキラッと光ったよ。
ほ~~う!どれ。
ほうほう!。
また溶けた鉱石が落ちてたって事かよ。
それも、、今度は溶けた金鉱石だって言うのか。
俺も長く此処に居るが、そんな物は初めての事だなぁ~。
これかぁ~!成程なぁ~良く金が溶けてるじゃないかよ!。
中々の高い温度に晒された代物だ。
良く言われるが火魔法じゃあ、こうは成らねぇんだが。
はてさて?。
ふ~ん、世の中にゃぁ面白れぇ事が有ったもんだ!。
新前がなぁ?。
う~ん素の金だと、こいつらは2つで、、。
そうだなァ金貨4枚と銀貨を35~37枚あたりか?。
くくくっ!。この金の肌艶が良いじゃねぇ~か。
ジョーラスさんは。
野球のボールより幾らか大きい。
溶けた金鉱石を手の平で転がしながら。
訝しげに俺を睨んでくるよ。
やっぱり見せない方が良かったかなぁ。
でもなぁ~!ちょっと自慢したかったんだよ。
えへへ!。
ほらね!。
俺ってツイてて凄いでしょ。
これって新人のビギナーズラックってヤツですかね。
良く言いますよね、まぐれ当りって。
はぁ~~~!
チョ、チョ、チョちょちょ!?。
きん、、金貨4枚と銀?。
駄目っぽいけど、もう何とか誤魔化そう。
溶けた金鉱石だけで頭が可笑しくなりそうだよ。
もう!それしか無さそうだ!。
ドワーフ相手で、出来れば良いけど。
そうだ金貨4枚以上だぞ!。
ビギナーズラック?。
まあ忘れた頃にそんな事も聞くがな。
、、、で?
お前は、まだ何か有りそうじゃねーか?。
ラッキーって奴を俺にも見せてくれよ。
勿論!他の奴には言わねえ!。
俺達ドワーフは弄れりゃ~何でもいいんだぜ?。
がはは。なぁ?シンよぉ~。
あとは何が出たんだ。
俺にも、それをちょっとばかり見せてくれよ。
くくくっ、、悪いなぁ~!シン。
俺達ドワーフはよぉ感じちまうんだよなぁ。
鳥肌は立ちそうだ、肌が湧き立つぞ。
がはは!何年ぶりだ。
俺の心臓が、体に血を滾らせてやがる!。
ヤバいよ。
さっきまでのジョーラスさんはコンナじゃ無かったのに。
何でだろう。
俺が金鉱石以外に「宝石」らしいのを持ってるのを、、。
体が感じてるのか?。
嘘だよなぁ。
ドワーフでもそんな事は無いだろう!。
なあぁ~。
早くここに出してくれよ。
「赤」いのが俺の好みなんだよなぁ。
悪いなぁホントに!。
えっ!。
今「赤」い宝石が良いとか言ったのか?。
俺を見つめる眼付が真剣だよ。
良いのかなぁ、出して。
もう如何なっても知らないよ。
右腰のポーチに手を入れて「赤い宝石」を手の中に。
すると小さな感触が伝わって来た。
はぁ。
分かりましたよジョーラスさん。
ホントはジャーレンタのダンケロさんに見せる心算だったけど。
お皿か?小皿とか何か入れ物は無いですか。
するとジョーラスさんは、自分の右手を俺の前へ伸ばして。
すまんが頼む、俺の掌に置いてくれ。
ここだ。
あは!もう良いかな。
はい。
置きますよ、コレを昨日5階の奥で掘りました。
「赤い」石ですよ。
ジョーラスさんの右手の上にポトリと。
「赤い」小石を落とした。
「赤い」石を見つめるジョーラスさんは右手を握り。
左手で急にテーブルの上をドンと叩いた。
よしよし!。
よ~ぉ~~し!。
おい!新人!お前は良くやった!。
ラビリンスで。
此処でも「赤」は1年と少し振りか?。
ははは!「赤」かぁ~!。
新人!この石はなぁ~「ルビー」だぞ。
がははははぁぁ~~!。
「ルビー」だ!。
これだからラビリンスはタマラン!
「ルビー」はなぁ~。
、、火魔法の触媒。
ん?。
んん?。
おいお前!。
今、、ダンケロとか言ったか?。
ええ!ジャーレンタの鍛冶の、ドワーフの親方さんですね。
少し前まで仕事をさせて貰ってましたから。
すると、、、。
その腰のナイフは?。
はい!。
数年前ですけど。
ダンケロさんが僕と仲間の3人分を造ってくれた物ですよ。
え~と、ガスロの雫でしたっけ?。
それも使ってくれたりして、凄くお世話になりました。
ジョーラスさんが真顔で俺を見ている。
お前。もしかして、、、あの孤児院の子供かよ。
「女神様」の、、、。
あとの3つはダンケロさんの分だよ。
取っておかなくちゃね。
孤児院の子供って、、まあそうですけど?。
ヤッパリ「宝石」だったね。
ドワーフは何かを感じてるんだなぁ。
変人だ。




