真向勝負
負けられない男の勝負。
女性の笑顔が商品。
14歳の。
12月の下旬。
晴天続きのジャーレンタの町。
見習い冒険者の俺達の仕事は、、。
野芋堀り。
ふぅ。
単純に、連続4日間。
お勧めだよって、アドバイスを貰って。
始めてから、続けてる野芋堀だけど。
これが意外と、お金になるのよ。
3日目の夕方。
芋堀を終わらせて。
街道に出て町に向かい帰る。
門を潜り、人の多い通りを進む。
1日の仕事の終わりの報告で。
ギルドに行くけど。
野芋の買取手続きで。
窓口のカウンターで引き取ってもらえるから。
つい、ヒビカさんの所に並んじゃうもの。
だから俺達の掘った芋を見るんだよね。
順番が来て、お願いする。
その時にさ。
ヒビカさんに褒められたんだよ
ヒビカさん。
今日も買取をお願いしますね。
麻袋の中身。
今日の俺のは、、。
3個ですね。
アルロ君、シン君、お帰り。
あら!あら!。
2人共、今日も凄いじゃない!。
毎日、何個も野芋を見つけるなんて。
あなた達、芋堀が向いてるのかしら?。
勧めた甲斐が有ったわね。
ソンな事を言われてもねぇ。
お喋りしながら。
ヒビカさんはトレーに芋を載せて。
ササっと、重さをはかってくれる。
アルロ君も。
はい、これに乗せて。
アルロも慣れてきたから。
麻袋から芋を出すよ。
はい、良いわよ!。
2人共、ギルド章を出して。
今日の野芋も、みな良品だから。
高く買い取れるわよ!。
ふふ。
記録を付けるだけで良いの?。
お金は?要る?。
うふふっ。
俺は記録で良いです。
まだ小遣いは大丈夫なんで。
アルロは?どうするの。
僕も記録で良いですから。
ヒビカさんに伝えて。
結果の手続きをしてもらう。
分かったわ。
そうなのね、記録ね。
はいこれ、2人共。
出来たわよギルド章。
それで、明日は?。
芋堀?、同じ仕事かしら?。
そんなに好きなのかな、、。
野芋。
一応、その予定ですが。
アルロ?。
、、、。
返事は、、無い。
うんうん!。
頑張ってね!2人共。
私、応援しちゃうわ!。
はぁ~。
じゃあ、ヒビカさん。
俺達帰ります。
さてと。
ヒビカさんにお別れの挨拶もした!。
アルロと2人、孤児院に帰りますか。
連日の肉体労働で、、。
身体中がだるくて、筋肉痛だよ。
アルロォ~。
早く帰って休もうよ。
俺、、今日もボロボロだよ。
うん。
僕も疲れてるよ。
野芋は良いお金になるけど、、。
まだ不慣れだから気疲れも有るよね。
はぁ。
ギルドを出て、またまた歩き。
孤児院まであと少し。
さっきより夕焼け空になっちゃった。
此処連日は。
孤児院に帰っても。
食堂の準備でも、ヘトヘトだよ。
でも夕御飯を食べる前に。
日課の仕事をしないとね。
皆が食前に、揃って座る食堂で。
孤児院の仲間のみんなに。
「清浄」の魔法を掛けていくよ。
1人1人順番にね。
勿論、ケシーレさんも。
リビエさんにもだよ。
肩に右手を置いて「清浄」!ってね。
奇麗になれ!奇麗になれ!。
そう心を込めて。
ふぅ、この魔法は楽なんだけどなぁ。
孤児院育ちの子供じゃあ、、、。
あいつは、どうせ孤児院のだから。
なんて、言われないように。
女の子も男の子もね。
少しでも、奇麗じゃないとね!。
最近はアルロも手伝ってくれるし。
さして時間はかからない。
うん、指輪のお陰だよ。
よ~し。
仲間も奇麗になったよ。
おっ、レーリエが喜んでるね。
うん、良かった。
さあ、お待ちかねの夕食だ。
今晩の食事も美味しいよ。
ああ幸せだよ。
その食事も終わり、、。
片付けを済ませて。
あとは。
寝床の部屋へ。
廊下を歩いてても。
眠いよ。
でも。
何だっけ。
あぁ、もう眠い。
無理。
自分の寝床の準備だ。
ササっと。
チクチク布のベッドを敷き。
服を着替えて。
藁のベッドに潜り込むよ。
あっ。
思い出したよ。
チビ達2人の相手何て、、。
無理無理!今日は無理。
ん?声が。
機嫌が悪い?。
小悪魔か?。
シン兄ィ~。
約束ぅ~。
御話ぃ~!聞かせてよぉ~。
シン兄ィ
お~ぃ。
シン兄ィってば。
ルシーナとミモリー、?、。
駄目だ、御免よ。
俺は、、今、限界なんだよ。
眠くて。
女の子の声を子守歌に。
チクチクする布団の寝床で。
あっと言う間にウトウト。
寝落ちだよ。
シン兄。
まだ寝たらダメだってばぁ。
いじわる!
シン兄の、いじわる!。
ねぇ。ねぇ。
あぁ~ん。
ミモ~~。
シン兄が寝ちゃうよぉ。
あぁ~。
寝たらダメェ~。
シン二ィ~。
レ~!起こしてェ~。
布団を揺すられるけど。
ユラユラ感が。
それも、、揺り籠かって思えるよ。
気持ちいい。
2人共、、。
お休み。
朝。
食事中の孤児院。
小さい女の子2人が。
凄く不機嫌な顔をしてる。
1人がパンを片手に俺を睨む。
1人はソッポを向いている。
まあ。
怖くは無いけど、、ね。
しょうがないか。
2人共ゴメ~ン。
今度さぁ、時間が有ったら。
御話をするよ。
ミモリー、レーリエ。
駄目かい?。
2人の機嫌は、、。
治らないね。
リビエさんも俺を見てる?。
シン兄。
モォ~~~~。
約束だからね!、ね!。
ミモもレーもね。
御話が聞きたいの!。
忘れたらダメなんだから。
アルロ兄もだから。
アルロ~。
僕は、、、。
こんな、やり取りをしながら。
仕事を熟していた。
4日の内で。
2日連続で町の周りの野原を探し。
運良く、芋を見つけることが出来たんだ。
2人してね、大きめの野芋を。
3個ずつも掘り出したんだよ。
やったよ!。
その後の2日間は。
ジャーレンタの森の中をね。
野芋の残証を探して、2人で徘徊したよ。
黄色い葉っぱと蔓を見つけては。
土を掘る!掘る!。
スコップで芋堀だよ。
でも案外と木の根が邪魔でね。
ジャスリーさんのナイフの出番も多かったよ。
よく切れるナイフで助かったよ。
それでも太い木の根とかが有ると。
掘るのに時間が掛かるし。
だから余計に、重労働なんだけど。
アルロォ~。
ヒビカさんが、あんまり無いわよっって。
言ってたけど、、。
なんだか、意外とさぁ~。
野芋ってさぁ。
残ってるよねぇ。
ホントだよね。
毎日さぁ。
欠かさず見つかるもんねぇ。
シンの、、芋堀のさぁ。
運が、良いんじゃないの?。
あはぁ。
えぇ~。
それってさ微妙な、運なんだけど。
まあ、お金になるからいいけどね。
う~ん。
この、芋運の良さは、、。
アルロの方なんじゃないの?。
こんな楽しい、お喋りをしながら。
芋探しをしていました4日間でした。
そして今日は5日目。
ジャーレンタの通りを2人で。
広場の屋台を目指して歩いてるよ。
昼食の準備!ダイジ。
アルロ今日はどこに行く?。
えっと。
あと行ける場所で残ってるのは。
ミーレ側にの方だけでしょ。
魚釣りから、あそこには行って無いね。
うっ。
魚釣りか!。
俺には嫌な思い出だよね。
ロクに釣れなかったし。
あぁ~。
ワヒットさんちの方だったかな?。
良いね、よ~し!。
あそこに行こうよ。
途中にも、案外芋が見つかるかもよ。
あはは!そうだと良いけど。
今日の昼は2人共、屋台のパン1個。
町の門を出て少し街道を進む。
街道には冒険者の人達や。
町に向かう農家の人が見える。
懐かしの荷車が野菜を載せて。
ギシギシと音を立てて進む。
俺達2人は。
草原が野菜畑になり始めたら。
細い獣道の様な脇道に入る。
なぜか俺が先頭で進む?。
俺は方向に、自信が無いんだけど。
段々と草丈が伸びて邪魔だよ。
草の中の道が分かり難くなってきて。
時々、立ち止まって確認だよ。
足元の草も。
脛位なら良いけども。
膝を超えると歩きにくさが増すよね。
それで、、。
あれ。
ん!。
アルロ、、。
どっちだと思う
微妙な草の踏み跡が残ってるけど。
ここで。
真っすぐかな、右かな?。
ねえ。
俺は、草原で立ち止まった。
ええっ!。
道が分からないのかい。
う~ん。
アルロも辺りを見回してる。
シン!。
ここは右じゃないかな。
ほら、あっちの丘に畑が見えるから。
あの丘の手前の辺りかな。
見えない、低い所が川じゃないかな。
それに、右側が少し傾斜してない?。
真っすぐは、何も分からないね。
このまま進んでも草原みたいだよ。
だから、ここは右に行こうよ。
うん、アルロに従うよ。
よし、右ね。
じゃあ行くよ。
確かに下ってるよね。
少し進むと下り段差が有って。
そこの斜面を滑り降りると。
ザーザザッ。
ジャシ。
下は砂利が敷き詰められてる。
おおっ。
砂利の河原に降り立ったよ。
アルロが正解だったね。
無事ミーレ川に到着できた。
うん。
道に迷わなくて良かったよ。
あぁ、釣りの時も思ったけど。
ミーレ川と丘の畑。
天気も良くて、何だろう。
ここの川岸は見通しが良くて。
奇麗で素敵な景色だね。
アルロの言う通りだよ。
冬の田舎の風景。
俺の言葉じゃ無理な感じ。
そんな目の前の風景。
ミーレ川は随分と水量が減って。
川岸の砂利が、なだらかな広い川辺。
シン。
ここで少し休憩しようよ。
良い景色だからモッタイナイよ。
どう?。
勿論賛成。
休憩は大歓迎だよ。
目の前に広がる、この風景に。
2人共、砂利の上に座って休憩だよ。
ふう。
和む。
目を瞑ると。
意外と騒がしい川を流れる水音。
サ~とかジャァ~とか?。
表現の難しい音だよね。
さてと、そろそろ仕事を始め、、、。
おっ。
アルロ!
アルロ!
アルロォ~!
あれあれ~!。あれ見て!。
黄色いよ。
何か所も黄色いよ!。
あれ野芋じゃないかな。
うぉ~。
凄くない?。
ねえアルロ。
俺が、立ち上がって、左手で指さす先。
ミーレ川の上流の対岸の土手に。
黄色が見えるんだよ。
座ったままの隣の親友も驚いてる。
その後に。
2人で浅瀬を探して。
靴と靴下を脱いで。
ズボンを捲ってね。
冬の冷たいミーレ川を渡ったよ。
足が痛い!
冷たいけど、、痛いぃ~。
あぁ~痛い。
う~~痛い。
つま先がぁ~痺れる。
あぁ~。
2人の、冬の渡河作戦は惨敗でした。
冬将軍は容赦無しでイタブラレタ。
川を渡った後も、砂利の上に座り。
男2人、冷え切った足と。
体も温めないとヤバいよね。
必死にマッサージして温めた。
それでも暫らく足が痺れて。
上手く動かなかったもん。
真冬の冷え!危険。
そんな事も乗り越えて。
黄色い色の元へ移動しました。
目の前には、黄色い芋の葉っぱと。
枯れ落ちた蔓が一杯だ。
川の土手にね。
アルロ。
ねえ。
俺達ってば、もしかして。
御宝に、巡り合えたの?。
野芋だけど。
横に居る。
親友に聞けば。
答えは同じだった。
その横顔は。
珍しく、、悪い奴の笑顔に見えたよ。
ああ。
んふふ!。
野芋だけど。
この状況は、御宝発見で。
良いと思うよ。
シン、これ凄いよね。
それに。
ヒビカさんの笑顔が思い浮かぶよ。
あは。
確かにね、ヒビカさんの笑顔。
うん。
目の前の黄色い葉っぱを見てたけど。
まだ、なにもしていない。
芋を掘ってみないとね。
さてと。
アルロ。
仕事を始めますか。
ああそうだね。
まだ掘って無いもんね。
さて、どこに有るかな。
ここ、落ち葉が多すぎてさ。
探すのが大変なんて事は、、。
無いよね?。
蔓、蔓。
何処だ。
アルロも探し始めたよ。
確かに落ち葉が多いもんね。
それも有るかな。
でも、ここは斜面だから。
斜面の土を崩して行けば楽なんじゃない。
穴を掘るよりは良いよね。
そのはず。
ここの野芋たち。
せっかくだから、大きいと良いな。
えぇ~と。
蔓の根元を探さないとね。
有ったよ。
蔓に根本、太いよこれ。
これなら埋まってる芋も。
芋も大きいかも。
何ですと。
大きそうだって。
俺も負けれないよ。
慎重に草を搔き分けて。
地際の蔓を探して行くんだよ。
あ~また、顔に草が擦れるよ。
それがチクチク痛いんだよ。
おっ。
蔓の根元見付けた。
アルロの言う通りで、太!。
やった!。
俺も見つけたよ。
アルロ~、負けないよ!
ねえ、芋の大きさで勝負しようよ。
競争だよ。
よ~し!掘るぞ~。
なに、なに?。
競争だって言ったの?。
あはは。
良いよ、今日はシンと勝負ね。
僕も頑張って掘るから。
そして。
時刻は、だいたい昼頃。
昼ご飯休憩です。
2人してパンを食べつつお喋り。
前半戦は、俺の負けだね。
掘った芋は2個で同じだけど。
アルロの1つが大きすぎる。
俺は、午後から巻き返すからね。
アルロを超えるよ!。
僕は運が良かっただけだよ。
1個目がアレだったから。
くぅ~。
アルロ、運強すぎ。
休憩中も辺りの風景に癒される。
午前の清々しさと違い。
何だかポカポカとした緩い雰囲気が。
辺りに漂っている感じだよ。
お日様が俺達を暖かくしてくれる。
体も心も。
勝負に負けてる俺の心も。
癒されていくよ。
そして始まる。
負けられない戦い。
午後の真向勝負。
それは。
野芋堀。
まあ勝てない。
不利すぎる戦い。
相手は運が良い漢。




