指輪
ダンケロさんの遊び心。
俺達、2人。
ダンケロさんに、小石の報告をしたよ。
石を渡して、終わりかなと思ってたけど。
まだ終わらなかった。
だって。
こんな事、言うんだもん!
良し!指輪を作るぞ!
はぁ?。
だから。
ダンケロさんの鍛冶場の横の。
小部屋に、2人でまだ居るよ。
この部屋も暖かいから、幸せでい良いけど。
なぜか急だよね。
ダンケロさん!。
あの~、今から指輪を作るんですか。
え~~と。え~~と。
銀で、ですか?。
おう!。
指輪なんてよぉ~、簡単だぜ。
それに、こいつは素直な8面体だからな。
掘り出した時からこの形。
良いじゃないか。
良く見てみろ、奇麗な8面体だぞ。
小さいくせに品も良いと来た!。
くぅ~ぅ!。
たまらねぇぜ!。
おぅ!。
8面体?
小さいから。
そこまで気にしてないです。
いま、あっちから。
指輪用の道具を持って来るからな。
ここで、ちょっと座って待ってろよ。
そう言い残して。
ダンケロさんはドアから。
作業場へ戻っていった。
指輪って簡単に出来るの?
はぁ?。
でも!。
アルル~~~。
やったよ!
やっぱり「宝石」だったね。
これ「アクアマリン」って言うんだってさ。
うぁ~。
親方が、邪魔だった石の部分を
こうして取り除いたら。
余計に、キラキラと奇麗になってるよね~。
俺「宝石」を初めて見たよ。
これ!すげ~~奇麗!。
ホントに奇麗になったよね。
これが「宝石」かぁ~。
シンは、凄いの、良く見付けたよ。
僕は全然、分からなかったもん。
シンが、これ見付けなかったら。
今ここに「宝石」は無かったんだから。
あのままゴミになって、
この石は、捨てられてたかもだよ。
「アクアマリン」かぁ~。
この青色さぁ。
見つめると、吸い込まれそうになるよ。
いやぁ~。
俺が見付けたのなんて、偶然でしょ。
それより。
さっきの親方の指、見てた。
邪魔だった石が、砂になってたよね。
あんな事、普通出来ないでしょ。
あんな力も鍛冶に要るのかなあ。
そうだね。
僕も。良く分かんないけど。
ダンケロさんってドワーフだし。
まず「鉱石」と「宝石」の専門家でしょ。
それに、鍛冶師の親方だもん。
きっと色々、凄い事が出来るんだよ。
僕達には、想像も出来ない技でね。
確かに、さっきの説明も凄かったよね。
それに研究も、してるって言ってたね!。
はぁ~。
「アクアマリン」の「宝石」を見て。
今すぐに指輪を作るって、何で?。
それに、凄く楽しそうだった。
ダンケロさん笑ってたよね。
しばらくの間。
2人で「アクアマリン」眺めてると。
ドアが開いた。
おう!待たせたな!。
かぁ~~!こっから見ても良いな。
石自体は小さいが。
透明度が高いのかな?。
滅多に拝めない良い「宝石」だ。
ははっ~。こいつは。
いやぁ~~!
楽しみだぜ!。
ドアから入った親方は、立ったままで。
右腕に木箱を抱えた姿で。
テーブルの上の、小皿を見つめてるよ。
え~と。
そこからでも見えるんだね。
さてと。
2人とも、悪いが。
そっちに、、。
テーブルの向かい側に、移動してくれ
言われるままに。
椅子を移動させて座るよ。
親方は、空いてる椅子に木箱を置いて。
テーブルの上に見た事もない。
小さな金属の治具を置いた。
でも重そうな感じだよ。
俺達の横に来た親方が。
2人とも、左手をこっちに伸ばせ。
そんで、手を広げて指も伸ばせ!。
おう、良いぞ、そうだ。
なんだこりゃ、腕も手首も細すぎだ!。
それに折れそうな指しやがっって。
肉と飯を食え!
こんなんじゃ駄目だ。
あはっ。
ダンケロさんが俺達2人の。
腕と指を見て呆れてるよ。
しょうがないじゃ無いですか。
これでも良くなったんですよ!
孤児院の食事も良い方にね。
変わって来たんだから。
そんな事を言いながら。
空いてる椅子に腰かけたよ。
あれ、人差し指を見たのかな。
良いぞ、戻して。
まあ、こんなもんか。
先を考えて、大きめにしとくか。
んん~~。
これか、これで良いかな。
俺達の指を観察した後に。
木箱の中を覗き込んで。
ダンケロさんが独り言を呟いてる。
何かを取り出して治具にハメ込んだ。
おっ、また木箱から。
小さめの金槌と細い鏨も取り出した。
さて!。
先ずは、指輪の型と石を嵌める台座な。
石が小せぇからな。
よッと。
こんな感じで。
親方に対して、凄く小さな道具たち。
コツコツと叩く音が響く。
コンコン、コンコン。
音が部屋に小気味良く響く。
ダンケロさんが。
小さな金槌をリズム良く振るう。
鏨は殆ど動いていない。
音が響く。
良し!
「アクアマリン」を嵌め込むぞ。
ダンケロさんが「アクアマリン」を。
2本の指で摘まんで、光に翳す。
その姿が。
ヤバい。カッコ良いじゃん。
そんな事を思ってると。
す~~っと。
治具に嵌ってる指輪に向いた。
横で、アルロもそれをジッと見てるよ。
ダンケロさんは。
指輪の台座に向かって。
「アクアマリン」の小石を載せた様だ。
台座に無事乗った石を。
更に細い針の様な物で、調整してる。
小せぇが乗ったな。
さて、後は締めこむぞ。
あんまり目立たないように。
見える石の部分は、少しにしておくか。
細い2本の鏨で作業してる。
金槌は使ってないよ。
あれ、叩かないの?。
まあ、こんなもんだな。
ん~。
ほれ、見てみろ。
親方が治具から外した。
指輪をこちらに向けてさしだした。
鈍い灰色の小さな輪っか。
おおお~~~。
出来たんですか。
「アクアマリン」の指輪。
えぇ~~~と。
アッ、アルロ!受け取ってよ。
俺は、、ちょっと、、。
はぁ?。
何で僕が!。
シン、君が受け取ってよ。
君が見付けた「宝石」でしょ。
ほら!さぁ。
シン!。
えっ
おい、シン。
先ずは持ってみろ。
ほらよ。
もう、しょうがないね。
あぁ~、持つのも怖いよ。
だって、値段が高そうなんだもん。
でも、諦めるか~。
受け取ってみると、軽いね。
はい。
おぅ~、軽い!です。
でも、指輪何て持ったこと無いんですよ。
怖いですよ。
はぁ?、何で怖いんだよ。
おまえ、それはな。ただの道具だぞ。
シン、よく見ろ、ただの指輪だ!。
おい、こっちを見ろよ。
えっ。
お前がゴミの中から見付けた。
「アクアマリン」だ。
ほら。
指輪に付いてるか?。
よく観てみろ。
あっ。
おおっ。
奇麗な石が、指輪に小さく嵌ってる。
うん、奇麗だ。
シン、見えたか。
どうだよ、なっ奇麗だろう!
それが宝石の魅力だ。
人差し指に、嵌めてみろよ。
そうすれば、何かを感じれるかも知れない。
「アクアマリン」の。
宝石の力をなぁ。
ああっ、そうなんだ。
俺は、左手の人差し指に嵌めてみた。
んんん。
あれ?
良く分からない。
何にも感じないよ。
親方。
何にも感じないです。
そんな~!だめかぁ~、はぁ。
俺は、駄目かもしれないです。
あぁ、良く分かりません。
アルロォ~~!
ほら。
君も、この指輪を指に付けてみてよ。
俺は駄目だったから!。
ん?。
あっ。
「アクアマリン」は「水」と「清浄」だ。
生活魔法だと。
俺って、、もう出来てるじゃん。
だからだよね。
なら。
アルロ!。
この指輪、早く嵌めて。
アルロは、「水」と「清浄」とも。
どっちも、今は出来ないよね。
えっ。
シンが駄目なのかい。
じゃあ多分、僕も無理だよ。
そんな事無いよ。
分からないじゃん。
良いから~、良いからさ。
早く、この指輪をはめてよ。
俺に言われて。
アルロが左手の人差し指に。
銀の指輪を嵌めたよ。
よし。
アルロ。
「アクアマリン」は
「清水」と「清浄」だって。
親方が言ってたから!
最初は水を出せるかな。
うまく出来たら良いけど。
多分だけど奇麗な水よ。
水よ出て来いって。
出す場所を考えて~。
考えれば良いんじゃないかな。
あれ~?これだと、なんか変かな。
あっ!。
駄目だよアルロ!。
ここには、入れ物が無いや。
あぁ~。
しょうが無いね。
ん~、じゃあ。
「清浄」だね。
そうだなぁ~、何時も俺がやってるの。
孤児院のみんなに掛けてるの。
あれ、覚えてるでしょ。
服とか髪とかが、奇麗になるのさぁ。
あんな感じで、頭で考えてよ。
それを人とか、物に行使するんだよ。
あっ。自分の魔力を込めてね。
冒険者登録の時に見たやつね。
アルロ。魔力、分かるでしょ!。
少しで良いと思うけど。
気を付けてね!。
ほら。
良い事思い付いたよ、うん!
ダンケロさんは仕事中だったから。
ちょっと、作業着が汚れてるじゃない。
奇麗にしてあげようよ。
ね!
アルロ、分かるでしょ。
ああっ。
分かるけど、「清浄」か。
シンが普段、掛けてくれる魔法だね。
服を奇麗にしたり。
髪の毛とかも軽くなるんがよね。
出来るかなぁ~?。
僕か。あ~~!。
アルロが目を閉じて思案してるよ。
思い出してるんだね。
そして目を開いて。
アルロがダンケロさんを見てる。
指輪を嵌めた左手を向けてる
ダンケロさん!奇麗になれ!
「清浄」。
おっ!。
おおっ~!
これ、魔法が発現したんじゃない。
アルロ!
やったね、出来てるよ。
「清浄」の魔法が出来たじゃない。
やった~~。
「アクアマリン」の指輪が。
魔法を使えるように補助してるよ。
なんだ!。
おいおい!おい!。
アルロ!俺に「清浄」を掛けたのか。
服の汚れが落ちたぞ。
おっ!見ろよ、手も奇麗になったぞ。
後は「清水」だけど。
ダンケロさん、何か器が無いですかね。
アルロが「清水」も出来るかも知れませんよ。
あぁ~~。
この指輪が凄いですよ。
えっ。
シン。
僕が「清浄」の魔法を使ったの?。
ダンケロさんに~。
ははっ。
アルロが固まってるよ。
今まで「清浄」は出来なかったもんね。
うん、奇麗になったよ。
ダンケロさんも様子が可笑しいよ。
「アクアマリン」の指輪。
これは凄いね。
ああっ。
アルロが念じた。
「清水」の魔法も発動した。
出てくる水の量は多くないけど。
元々無かったんだから、十分だよ。
ダンケロさん凄いですよ。
アクアマリンの指輪、凄い能力。
魔道具って高いよね?。
その価値は。




