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異界奇行---俺にはキツスギル!  作者: kenken@


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3月の花

ダンケロ親方

3月になると花が綻ぶ。

そんな事を思うけど

ここジャーレンタの街いると

花を見る事が無い。


今日もダンケロさんの工房に

アルロと2人で仕事に行く。

俺は独り言を呟いてた。


 この街って花を見ないよね

 街路樹とかもないよね。

 園芸用の草花も見ない。

 市場にも木が植わってるけど

 花が咲いたの見てないし

 俺の移動範囲に無いだけかもだけど

 今度ケシーレさんに聞いてみよう!


アルロが俺の独り言を聞いていた。


  なに?

  なんだいシン。

  花が何だって?

  

 え~とね。

 この街って、あんまり花が咲いてるの

 見かけないな~と思って。

 木にも花が咲かないでしょ。


  あ~。

  確かに街中で花は見かけないね。

  町の外に行った時に見たじゃない。

  ワヒットさんの家の周りとか

  畑仕事の時にも離れた草原とか

  街道の畔とかには花は咲いてたけどね。


 あ!確かに。

 咲いてた!咲いてたね。

 いろんな花が咲いてたよね。

 花をまた見たいな~!

 そろそろワヒットさんの仕事

 ギルドに有るかな~。

 掲示板で探してみよう。


野に咲く花は一杯有った。

街中に無いのがホントに不思議。

 

懐かしい。

ヨーロッパだとポプラとか

ミモザとか紫陽花に

ブーゲンビリア・パンジー

無いな~、見ないな~。

琴歌家柳・コトカケ柳

当て字をすると然も有らん。

日本なら勿論「桜」だよね

あんな風に咲く樹木が此処に

有れば最高なんだけど。


柳絮飛時花滿城


花らしい花を見ていないね。

どっかの大きな御城になら

花が綺麗に咲いているのかな。



3月の中頃にアルロと俺は

街の古着屋さんで服を買った

色々と見て悩んだよ。

なかなか買えなくて

リビエさんとラツェに相談して

何とか街の人と

同じレベルの服を買った

ベストも欲しいんだけど

まだ買えないんだよ。

コレで今までより仕事が

もっと色々出来るよ。


あとね足元。靴が高いんだ。

今まで履いてた靴は底が皮で

後は布と紐で工夫して

作ってあるんだけど

チョッと見た目が悪いんだ。

皮の良い靴を買うのに

2人とも金額に眩暈がしたよ。

ヤット貯めたお金が減っていく!


考え事とお喋りしてると

ダンケロさんの工房についた。

いつもの様にドアをトンカチで叩く。

「キーン」「キーン」

ほんとにこの音は不思議だ。

澄んだ良い音が響くんだよ

中に入って挨拶をすると

今日は鍛冶窯の大掃除と整備だって。


  2とも今から鍛冶窯を1回バラスから

  俺が窯の中の灰と屑を掻き出すから

  台車にあの舟を載せて

  窯から出たゴミを裏の置き場に

  全部運び出しくれ。

  かなりの量が出るからな

  大仕事になるぞ!

  怪我すんなよ。

  ゴミ置き場は奴に聞いてな。


ダンケロさんは窯の横のレンガみたいなのを

前の方から次々と移動させていく。

レンガをどけると壁の様に積み上がった

ガスロ鉱石の灰が出て来た。


  よし!崩して行くから裏に運んでくれ。

  

ダンケロさんが崩して掻き出した 

灰のゴミを船にスコップで入れていく

燃えカスの灰は軽いので良いけど

ゴミ置き場が裏の端の方で

意外と移動が長い。

ゴミを溢さない様に気を付けながら

入れては運び、船を引っ繰り返して

空にして戻る。

ほんとに何回も運んだよ。

最後のゴミを運び終え戻ると

鍛冶窯を組み直してる最中だった


  よし!これでまた鍛冶が出来る。

  お前らもお疲れ!

  時間もそろそろ昼になるな。

  2人!昼飯食ってくか?

  今日の昼は

  濃いスープと具入りパンダだ。

  食うか?


 はい!ダンケロさん。頂きます。

 工房の食事美味しいから嬉しいです。

 今日は凄く動いたから腹ペコで。

 ねっ!アルロ。


  ダンケロさん有難うございます。

  僕も腹ペコで嬉しいです。


  よし!良いぞ!食っていけ。

  2人ともヒョロヒョロだからな食え。


今日は工房の食堂に移動して食べる様だ。

廊下を少し移動して部屋に入る

大きなテーブルと丸椅子が見えた。

横のテーブルに大きな鍋が置いてある。


 良い匂いがする~~。


俺とアルロの前に

ダンケロさんが深皿にスープをよそってくれた。

目の前にはトレーに幾つものパンが積んである。

工房でも食事の前に「女神様」に祈る。


   2人とも遠慮なく食えよ。

   このスープは上出来だぞ!


 「「 いただきます! 」」 

 

これはスープじゃなくてシチューだね。

具だくさんで肉も一杯入ってる。

濃厚なホワイトシチューだ!

あ~~美味しい。

何年振りかこの食感。

普通のパンじゃない。

パンも肉まんに近くて美味しい

中の肉は塩味だけど最高。



 ダンケロさん美味しいです。

 パンも最高です!

 スープで幸せです!


工房の仕事をすると偶に

昼の食事をご馳走になる

どれもが美味しい食事で幸せだ。

焼き肉が最高なんだけどんね!


世間話をしながら食事を食べていると

ダンケロさんが俺に問いかけた。

 

  飯が終わってかっらで良いが

  シン!アルロもだ!

  今ナイフを持ってるか?

  あれをチョッと弄りたいんだが。

  あるなら後で出してくれ。


ダンケロさんがくれたナイフは

腰の後ろに斜めになる様に

専用のベルトを作って

いつも身に付けている。

勿論アルロとお揃いね。

食事の手を止めてすぐ答えて。


 ありますよ。

 いつも身に付けてますから。

 あと少しだけ食事を貰ってからで

 良いですか?

 俺達ここの食事が大好きで!

 ここのスープが美味しくて。

 なあ!アルロ。


  シン。僕に言わせないでよね!

  あ~~ダンケロさん、僕もあと少しだけ。

  食事して良いですか。すいません。


俺とアルロの前のデーブルの上には

2杯目のスープの入った皿があるんだ。

勿論、3個目のパンも有るの!


  ああ!

  すまん!すまん!

  急がせて悪かったな

  それを食ってからで良いよ。

  味わって食えば良いさ。

  

良かった。

俺とアルロは安心して又食べはじまた。

ほんとに美味しいから。


食事の後。

テーブルの上に2本のナイフを置いた。

殆ど使ってないよ。

俺達にそんな機会は無いもん。


  なんだ!、ナイフ全然使ってね~な。

  道具なんだから使わないと手に馴染まネ~ぞ!

  滅多に壊れたりしないから。

  ちゃんと使ってやれよ。

 

そお言いながら2本のナイフを確かめた。

ダンケロさんが立ち上がり

鍛冶窯の方へ行く。

戻ってくるとテーブルの上に

手に持っていた小さな木の器を置く。

木の器を覗き込むと。

パチンコ玉より小さめの黒い

金属に見えるモノが2個入っている。


  さっき鍛冶窯を解体しただろ。

  うちの工房はなガスロ鉱石で

  すべて鍛冶をするんだ!

  するとな。

  灰と屑のゴミの中から

  これが偶に出るんだ。

  鍛冶窯のな、オマケみたいなもんだ!

  今回は3か月で解体したんだが

  良く2つも出て来たもんだ!

  ちょうどお前らが2人で

  2本ナイフ本持って来てるから。

  それに使ってやる!


そお言ってダンケロさんが

俺の黒いナイフを鞘から引き抜いた。


  良いか見てろよ!

  

ダンケロさんは黒い粒を

親指と人差し指で器用に摘まみ

ナイフの上を擦る様に動かした

ス~ッ!ス~ッ!

音も無く動かすと

金属が小さく!見えなくなった。


消えた!

金属が消えた!


  今の観たか!

  黒い金属消えたろ!

  これ面白いだろ!なあ!

  鍛冶と石と金属はよ。

  面白れ~んだぜ。


俺達の唖然とした顔を見て

ダンケロさんは笑って俺達に話す。

木の器に1つ残ってる黒いのを

木の器の中でコロコロと転がしながら


  この黒いのはよ!

  俺達。ドワーフの鍛冶職人のおもちゃさ!

  ガスロ鉱石の窯で見つかるんだ

  これは「ガスロの雫」って名前だ。

  すぐ金属に吸い付いちまうから

  木の器に入れるんだ。

  

直ぐにアルロのナイフにも

「ガスロの雫」が吸い込まれていった!

アルロの表情が真剣だ。


 ダンケロさん!

 何なんですか。それ!

 俺達のナイフに使っちゃって良いんですか!

 「ガスロの雫」?

 無くなっちゃいましたよ!

 あ~~。


  構わね~よ。

  大した事はね~んだから

  言っただろ!おまけだよ!

  俺の窯から出たモンだからな。

  俺の自由さ。

  

  ナイフがチョッと良くなっただけだ。

  気にすんな。

  観てみろ、これ。

  これ!これ!綺麗にったろ!

  良いじゃね~か!


ダンケロさん!

俺達にどうしろってこと?

手元の自分のナイフを

鞘から引き抜く!


 はぁ~~?

 色が変わってますけど?

 鋼鉄の色が薄黒くなったの?

 は~。


俺とアルロはテクテクとギルドに向かって

2人で道を歩いている。


 はっ~。アルロ。

 今日も俺、何だか凄く疲れたよ

 美味しい昼御飯食べたのに

 ダンケロさん!

 凄く良い人なのに。

 なんでかな?


横のアルロは薄笑いです。

ご機嫌な様子だ。


  何言ってるのさ!シン!

  ダンケロさん!最高だよ。

  俺達はさ今、凄く恵まれてる!

  孤児院育ちで、ヒョロヒョロだけど。

  いつもお腹が減ってるけど

  普通こんな事は起きないよ。

  シン。

  あの夜から変わったのかも

  そう思わない?


アルロ。君もかい!


「女神様」   


おれは


綺麗な花が見たいです。

青空の下。

桜の花びらが舞う中を

また

散歩がしたいんです。


この世界にも

あの体験が出来ますか。


「女神様」

  


今の

願望は

花吹雪の中。

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