真冬の街道
12月の底冷えのする、ある日の午後。
いつもの様に、男3人。
午後から、街の宿屋の2階で仕事をしている!
ケリオサは3階ね。
順調に客室の掃除を済ませ、ベットのシーツも変える。
あと少しで全部終わる、そんな時に。
ロジーヤさんが階段を上がって来た。
シン!どこに居るの?
これは珍しいい事だよ。
客室の清掃とか、最近は俺達の任されてるから。
毎回。最後のチェックは3人の誰かにしてもらってるけど。
ロジーヤさんは久しぶりだ。
あなた達にお客さんが来てるのよ。
シン!アルロ!下にお客さんが来てるのよ!
多分。農家の人だと思うけど、私は知らない人ね。
1階に行ってきなさい。ここは良いから。
シン!アルロ!。
はい!ここです。ロジーヤさん。
すぐに、この部屋を終わらせてから行きますよ。
シン!早く下に降りて行ってあげてね。
仕事の残りが有れば、やっておくから。
人を待たせるのは良くないわよ!
少し階段から離れた客室の扉から顔を出して
後一部屋残ってます、奥の所です。
ロジーヤさんに返事をした。
農家の人?。
ワヒットさんかな。
ちょっと待っててね。ワヒットさん。
すぐに行きますよ。
何の話かな?、、また、、、畑仕事かな。
冬だと畑、ヤバい位寒そうなんですけど
どんな話だろう。
すぐに客室の準備を済ませて1階に降りた。
フロアーを見渡せば。
壁寄りの椅子にワヒットさんが座ってる。
おお!シン!久しぶりだね。
4か月位?ぶりかな。元気そうで何よりだ。
この前手伝ってもらって、大助かりだった!ありがとな!
あれ?
んん~~!、、あれか?
なんだかシン!、、、背が伸びたかい?、、君!
前より「ヒョロヒョロ」に見えるんだけど?
君!大丈夫かい?
あはは!ワヒットさん大丈夫ですよ。
最近よく言われるんですよね!
おまえ!「ヒョロヒョロ」になったなって。
会う人!合う人!お前「シン?」だよなって。
俺は!、、、あの。孤児院の「シン」ですからね!
ワヒットさん!!
それで、俺に何の用ですか?
また畑の仕事ですか?
ううっ!、、冬の畑氏仕事、、寒そうなんだけど。
笑顔で答えてるけど、、、なんか嫌な予感がするよ。
ああ!シン。頼みたいのは畑仕事じゃないんだ。
今の時期だと、畑仕事は少ないよ。
ほら、、、あれだよ!
納屋に貯蔵してある野菜を、市場に多く出したくてね。
今から、多目に野菜を街に出しておけばと思って。
それで野菜を運ぶ手伝いを頼めればってさ、
此処へ来たんだよ。
また。君とアルロに頼みたかったからね。
ホラ言ってただろ!君たち。草取りの合間とか。
休憩中に。此処での君たちの仕事の事をさ。
その時の事を思い出してさ。
普段は君たち2人揃って、此処の宿屋に居ると思ってね
訪ねて来た訳なんだよ。
俺は野菜の出荷ついでにさ
頼みに、此処へ来た訳!
あ~~!シン!運よく会えてよかったよ。
おっ!畑仕事じゃ無いんだ!良かった。
野菜の出荷ですか、、、
そんなに大変でしたっけ?
え~~と!
ほら、あれさ!
芋とかタマネギとかってさ、、重いでしょ?
忘れちゃったかな?収穫してもらったじゃない。
あれさ。俺達、夫婦2人だと重くてさ大変なんだ、、、
悪いけど、、、手伝ってよ、、、シン!
12月の、年末の数日間の予定だからさ、、
12月24日以降かな、、28日まで5日間のお願いなの!
お願い!
俺の目の前でワヒットさんが頭を下げた。
ロジーヤさんとジャスリーさんも
離れたカウンターの椅子に座り見聞きしてる。
2人は。困り顔と苦笑いだ!
ジャスリーさんが俺に言う!
シン!お前はガキだが。
ここは漢を見せて答えないと駄目だな!
お前達の仕事が。その人の信用を得たんだ!
お前だけじゃない。アルロの面子もあるぞ。分かってるか!
その間、うちはケリオサが頑張れば大丈夫だろう。
なあ!ケリ!、、お前も漢を見せるだろう?
俺達に?
階段の踊り場で様子を窺ってる男が一人、、、
ビクッと身を震わせる。ケリ!頑張れ!
カウンターの傍にいるアルロにも声をかける。
アルロ!良いかな?12月の終わりの方で
市場へ野菜運びの仕事。
ワヒットさんの手伝いだけど。 どう!
ああ良いよ。ジャスリーさんもああ言ってるし。
やろう!ワヒットさんの手伝い。
ワヒットさんの仕事の手伝い。
2人で出来そうなので宜しくお願いします。
ああ!シン!アルロ!助かるよ。
良かった~~。
本音を言うとね、、、
ウチの奥さんが、、、言うんだよ。
偶には。
ゆっくりと。
年明けに。
お休みしましょうって、、
ごめん。
俺は逆らえなかったよ、、。
ワヒットさんの囁きが、、
俺達2人の心を抉る。
人の機微も、お構いなしに。
そんなで、12月の数日が過ぎて行く。
約束の日は、あっという間。
12月の街道を俺とアルロがトボトボと歩く。
空は曇り鉛色の雲が流れて行く。
午前から北風は強く、猶更冷える。
寒い!寒すぎる。
あ~~!何なんだよ。ワヒットさん。
キツイよ!
この仕事!今の俺達にはキツスギル!
文句を言いつつ、野菜一杯の荷車を街に運ぶ。
俺とアルロは、つい言葉に出る
腹が減ったねアルロ!
ああ!この仕事は力仕事だから、腹が減るよ。
約束は後1日か!やっと終わる!
12月27日の午後の話。
街道で荷車を押す2人。
アルロも俺もヘロヘロです。
修道院の年越しのミサは目の前に迫ってる。
「追記」
ラッエはそのまま薬屋さんに、お勤めになりそう。
彼女はしっかり者だよ。




