問に答えが有るなんて
礼拝堂に皆で向かう。
鐘の音の響く速度が段々度遅くなって来たよ。
礼拝堂の横の入り口のドアからラツェを先頭に入っていく。
礼拝堂の中は街の人が一杯いたよ。椅子に座ってる人達。
座り切れずに壁寄りにも、立っている人が一杯居る。
おおっ、、顔見知りの人もいるね。
シディリーさん発見
宿屋のリークさんも、、、発見。
俺達は静かに揃って移動。
前の方の、壁寄りに全員が立って並んだよ。
ラツェ、チビ達、、、アルロ、俺、、、、てね。
壇上の壁寄りの左右に立った。
ケシーレさんとリビエさんが
両手に持つハンドベルをゆっくりと奏でてる。
ハンドベルの鐘の音。
一音。一音。澄んだ音が礼拝堂に響く。
カラン、、カラン。
キーン!、、キーン。
♪~~~~
♪~~
♪~
コーン、コーン。
リーン。、、リーン。
息を合わせて奏でる鐘の音が
一音一音の間隔が広く遅くなり、、
響く音量も小さくなっていく。
チリー~~ン!
~~ン!♪~~。
やがて。、、、
音がやむと、、
数拍おいて、
ケシーレさんの声が響く。
ジャーレンタの街の皆さん、ようこそロジーヌ修道院の歳送りのミサへ。
今年最後の日の灯りも沈みました、女神様へのミサを始めたいと思います。
今夜は街守様がこの修道院のミサに参列されていただけました。
「ガスリー・イント騎子爵」様です。
ケシーレさんが壇上の反対の方で椅子に座る男性を見た。
街守様で騎子爵?。
声を掛けられた男性が椅子から立ち上がると、
皆の視線が彼を追う。
細身で、、オッ、、背がだいぶ高いかな。
ふわっとした黒髪で。
白い丸襟のワイシャツ?、、ポイ服を着て
皮っぽい黒茶のロングコートかな。
羽織るコートの襟と裾に白い刺繡が見えた、、
腰回りのベルトは良く見えないが金具が数個装飾されてるのかな。
流石に帯剣はしていないようだ。
細身のズボンは綺麗な紺色に見える、、足が長いよ、、、
衣装と合っててさカッコイイじゃん!
そんな男性が歩きだすとさ足音が、、
コッ、コッ、コッ、コッ。と礼拝堂に音は響くんだ。
どんな履物か想像出来ないけど、壇上は厚手の板張りだからかないい音だ。
礼拝堂の中のさ、街の人達は注目してて辺りはさ誰も声を出さない。
人が一杯居るのに静まりかえって、シーンとしてて。
コッと。靴音だけが響くんだよ。
壇上の細長い演壇に辿り着いた男性は
礼拝堂の中に居る街の人達を見て言った。
この街の人々が今夜も女神と供に有る事を望む。
皆が懸命に生きていると思うが、、、
人の一生は千差万別が定めとなっている。
、、ああっ神のみぞ知るだったか。
今年は我が国も含め
世界が疫病の悪夢に蹂躙されたな
皆も、、家族や友。
隣人や思い人が
女神の元へ逝ってしまったはずだ。
街主は天を仰ぎ、数拍語らずにいたが、、、
思わずに、、、思わずに、、、
思いを発したのだろう。
だから、、、今!。
右手を天に上げて、、、人差し指を伸ばし
真正直に向かい、、、問うた。
この修道院で女神に聞いてみたいと思うのだ。
いつかの日か。聞きたかった。
叶わぬと分かっているがな!。
我々世の人は。女神の何なのかと。
人とは、、、
上げた手を下し
騎子爵は振り返り見上げる。
自分の背後、、、
見下ろす女神の木像に問うように。
だが、何も起こらない。
それが必定なのだから。
瞳を閉じる女神ロジーヌは
何も語らず答えない。
女神は其処にいるのみ、、、
静寂が辺りを包む、、、
祈りを捧げてた街の人達も
みな静まりかえっている。
胸の前に両手を重ねて祈る人達。
女神像を見つめる多くの瞳。
だが分かってる、、、
皆が分かってる、、
人々は知っている。
答えは無いんだと。
静寂が数秒か暫く続く。
だが、、、
聞こえて来た。
天高くから涼やかに響く小さな
「鈴の音?」
が鳴る音だ。
えっ!
思わず女神像を見てしまったが。
名にも変化は無い。
違った、、、、。
他は、、。
何もない。
天上には、、、
何も。
「リーン」
「リーン」
「リーン」
礼拝堂の中に居る人達は聞こえて無いのか、、
女神像を見つめる人達。
変わらずに祈りを捧げてる街の人達。
多くの人は 瞳を閉じて祈るばかり。
何故か、男の声が頭に響く。
「何故」
「聞くのか」
「お前たちは。知っているだろうに」
「始まりから幾度も、、、」
「遣わされたはずだ」
「昔の語り辺達が延々と、、」
「囁いてみせたように、、」
「吟遊詩人がこぞって、、、」
「歌って聞かせる時のように、、、」
「何時でも人の世の何処かに」
「女神の力が現れる」
「******」
「答えよう」
「我が、、此処に、、」
「遣わされた」
「女神の許しの御技を現世に」
「許すと、、」
「何時か」
「女神の「***祝福」のありようを示す」
「女神の御心のままに」
鈴の音が響く。
♪「***」
♪「***」
♪「***」
頭に響く男の「?」声を聴いていると
礼拝堂の中が薄暗くなっていく
俺の灯した灯りの魔法がユラユラと弱まって
それは現れた。
礼拝堂の天井付近で3つの青い光の玉が回ってる。
ゆっくりと回ってる。
綺麗だ。
金色の粒子みたいのがユラユラと降ってくる。
それでも街の人達は、、祈ったままだ。
今も聞こえて無いのかな。
壇上の2人は、、。
ケシーレさんとリビエさん、、
聞こえて無いのかな。
あっ。
女神像を見てる!
「神の御業に触れるものは、、人に非ず」
「*****」
「まずは今。一つの時」
「女神はいつも人の傍にいる」
「「・・*****♪♪♪♪♪・・」」
「ヒトよ」
「聴け」
「5つの許しがアローヌの地上に降りた」
「ジャーレンタに、、♪♪♪~~~3つ」
「運の良い事だ」
「アハハハハッ」
「・・・」
「・・」
街守は立ったまま、女神像を見つめているが。
、、、アッ、、。
彼が
片膝を床について頭を下げる。
右手を胸の前にたたんで礼の姿勢かな
声が聞こえてるんだね。
「あの時の」
「黒色がここに居るとは」
「女神の」
「遊びか」
礼拝堂が明るくなった。
アッ、、、雰囲気が変わった。
静寂の後、、、
幾人かの人が今聞いた声の事を大声で叫ぶ!
女神の祝福が、、、、あったと。
礼拝堂の中は、人々の歓声で大騒ぎだ!
声を聴き、、
女神の祝福が起きたって、、、
あの声には、なんだか聞き覚えがある様な。
あの声は俺の運命を変えた声だろうか。
女神じゃ、、、無い。
男の声だから。
それでも、、、
ケシーレさんとリビエさんが
女神の像の前で跪いて祈ってる。
騎子爵さんは暫くの間跪いてたけど
今は仁王立ちで女神像を睨んでるよ。
きっと男の声が頭に響いたんだろう、、、
おれは傍にいる親友に声をかけた。
アルロ聞こえてた?
ああ聞こえてたよ!シン。
アルロ、、、感じた?
ああ。
俺もなんだけど、、、。
祝福なんて
噓でしょ。
会った事もない女神の気まぐれ。




